闘う下流老人たちー全日本年金者組合の地道で熱心な取り組みー

<「下流老人」の発表とその影響>

2015年6月12日に朝日新聞出版から『下流老人』(760円)を発表した。

現在、重版がすすみ、7刷(累計70,000部弱)までくるほどの好評をいただいている。

高齢者の貧困やその対応策が多くの人々に迫る問題だという認識も広がってきているように思う。

現役世代の雇用の不安定さや低賃金は、老後の低年金の原因となり、「老後破産」を引き起こす。

わたしが提起する『下流老人』問題は、高齢者に限らない全世代をめぐる社会保障の脆弱さの問題である。

<全日本年金者組合とは>

しかし、わたしよりも先に高齢者の貧困や無年金・低年金高齢者の問題を取り上げてきた当事者団体がある。

それは全日本年金者組合だ。

今回は『下流老人』対策の一環として、この全日本年金者組合の活動を紹介したい。

全日本年金者組合の主な構成員は、年金を受給している高齢者であり、高齢者の権利や生活を守るために様々な活動を展開してきている。

47都道府県本部、911支部、112,890人の組合員

現在、全国47都道府県に地方本部を置き、911の支部をもっています。47都道府県、380の支部に女性の会があります。組合員は、2014年4月現在で、112,890人で、年々その数を増やしています。

出典:全日本年金者組合ホームページ

構成員は高齢社会の進展とともに増え続けており、自分自身の年金や生活を守ろうとする高齢者が活発に取り組みを行っている。

例えば、高齢者が孤立しないようにそれぞれの地域でサークル活動をおこない、交流や社会参加の場や機会を提供している。

社会的孤立の予防や孤独死の予防にも取り組んでいる。

全日本年金者組合の芝宮氏(写真左)
全日本年金者組合の芝宮氏(写真左)

あるいは年金アドバイザーをおき、上の写真の芝宮忠美氏のような専門家が相談支援をおこなう窓口(全日本年金者組合東京都本部)も開設している。

芝宮氏は自身も低年金で都内の公営住宅に住みながら、同じ高齢者の相談を受け続けている。

年金が低い場合は生活保護申請に同行したり、「消えた年金」を取り戻したり、障害年金を支給する申請や不服申し立てをしたり、若者から将来の年金に関する相談を受けたりと、その相談支援業務は幅広く、経験豊かである。

このような年金問題のプロが組合には大勢いる。

気軽に相談してほしいし、組合に加入することも「下流老人」対策にとっては大事かもしれない。

さらに、全日本年金者組合は、マクロ経済スライドによる実質的な年金の減額に対して、不服申し立てや提訴もしている。

47都道府県すべてで、年金の減額に対して、違憲であるという主張を展開しながら、弁護団を結成して闘っている。

国民年金のみの受給者は、月額平均約5万円であり、厚生年金受給者も月額平均14万円である。

この年金額を減らす政策がはじまっている。

高額年金受給者の減額ではなく、国民年金受給者も含めたすべての年金受給者への減額である。

影響は計り知れない。そもそも月額5万円で高齢者はどのように暮らしているのか、丁寧な生活実態の検証も不十分なままの減額である。

だから全日本年金者組合は、仲間とともに立ち上がり、闘っている。

前述の芝宮氏は「『下流老人』は黙っていてはダメで、自分たちや将来の現役世代のためにも声を上げるべきだ」と語る。

老後くらい安心した生活をすべての人に保障してほしいと訴えているのだ。

高齢者が安心して暮らせない社会は、いずれ高齢者になる若者や現役世代をも不安に陥れる。

<「若者 VS 高齢者」の終焉を目指したい>

しかし、このような高齢者の取り組みに対して、若者や現役世代は冷ややかな反応だ。

「今の高齢者は恵まれている」、「自分たちの老後はもっと大変なんだから我慢するべきだ」など、高齢者への支援が十分とは言えない。

いわゆる「若者 VS 高齢者」である。

わたしはすべての人がいずれ高齢者になり、年金や生活保護を活用することになる時期が来ることから、現在の高齢者に年金制度を悪化させないように守ってほしいと思っている。

声をあげて減額をストップさせてほしい。そうしなければ若者世代の将来の年金も守ることはできないからだ。

非正規雇用拡大、雇用の不安定化のなかにいる若者の年金受給額は壊滅的に低額であろう。

すでに年金をかけていても、それだけでは生活ができない世代がこれから先は延々と控える状況だ。

だからこそ、全日本年金者組合の取り組みから、「下流老人」対策や社会保障の在り方について、一緒に考えていただきたい。

高齢者の問題は自分たちの明日の問題であり、生活の根幹にかかわる問題といえるだろう。