いまも続く執拗な生活保護受給者いじめー今度は住んでいる場所も追い出される!?ー

止まらない生活保護への攻撃ー生活保護バッシングからー

執拗に生活保護受給者への攻撃が続いている。

もはやここまでくると「いじめ」「排除」と言っても過言ではないレベルだ。

皆さんは覚えているだろうか。

2012年に扶養能力があると思われる芸能人の母が生活保護を受給していたことをきっかけに、あたかも「不正受給」だという誤った報道が相次ぎ、生活保護受給者への疑いの眼差しが強くなった一件。

実はこの事件は、生活保護法に様々な影響を与え続け、制定後初の生活保護法改正がおこなわれる事態を招いた。

生活保護受給者への調査権限を強化したり、申請時に必要な書類を整えるような努力義務(事情がある場合、申請自体は口頭でも可)を課したり、生活保護申請者を「救済」の対象から「監視」の対象へ変容させた。

もともと、生活困窮者が逼迫した状態で窓口に相談に来ることを想定している「性善説」の生活保護法が、生活困窮していても何とかなるのではないかと疑い、「性悪説」で運用がなされる可能性も相変わらず高いといえる。

要するに、救済が必要であるにも関わらず、その対象としてみることが遅れたり、阻害されるケースがあるといえる。

生活保護受給者への生活費削減

それだけではない。

さらに、全く不正もしていない、全く関係がない生活保護受給者全般に対しても執拗な「金銭搾取」が始まった。

物価上昇が続いているにも関わらず、根拠が不明瞭なまま、一昨年から生活扶助基準が引き下げられ続けている。

3年間で最大10%の生活費が削減される。

この事態が発生して以降、生活保護受給しているにも関わらず、食費や生活費が足りないという相談が相次いでいる。

もはや生活保護を受けていても「健康で文化的な最低限度の生活」が営めない状態になっている恐れがある。

ごく一部の生活保護受給者は、やむを得ず、他に方法がないため、国を相手に「生活保護基準を引き下げないでほしい」と裁判で争っている。

しかし、そんな主張ができる生活保護受給者はわずかで、実際には泣き寝入りが大半だ。

声など怖くて挙げられないといえる。

生活保護受給者への支給家賃額引き下げ

そして、まもなく2015年7月がやってくる。

今度は生活保護受給者が住んでいるアパートの家賃支給金額を引き下げるというのだ。

住宅扶助基準上限の引き下げである。

例えば、全国でも最高水準の引下げ額となっている埼玉県内の自治体では、川越市の2人世帯では1万1000円、2級地(越谷市、熊谷市など)の2人世帯では1万円、3級地(久喜市、鴻巣市など)の2人世帯では9900円の減額。

また、さいたま市でも、1人世帯が2700円、2人世帯が8000円、3~5人世帯が3000円の減額となる。

埼玉県を筆頭に、全国各地で住宅扶助費が引き下げられる。

高齢者の2人世帯や母子家庭の2人世帯は、深刻な引き下げ幅である。

ただでさえ、生活困窮者が借りられる低家賃のアパートは少ない。

先月(2015年5月)の川崎市簡易宿泊所の火災事件をみても明らかなように、現在ですら住居を借りることが困難な「住宅弱者」が大量に存在する(こちらの記事も参照いただきたい→川崎市簡易宿泊所火災事件の背景にある住宅・福祉問題ー高齢者の住まいの貧困と向き合えー)。

さらに家を確保することが困難になるような施策を進めることに妥当性はあるのだろうか。

私にはにわかに信じがたい政策の数々である。

これだけの大規模な基準引き下げであるため、経過措置(次回の更新まで同家賃を支給等)や特例措置(事情がある世帯には従来と変化なく転居指導もしない等)を講じているが、すでに現場では不安や混乱が生じ始めている。

精神障害を抱える生活保護受給者は、不安から服薬量が増えたり、不眠症状が生まれている。

母子世帯の母親からは「次回更新時に追い出されないだろうか」と不安な声が寄せられる。

先日も千葉県銚子市の県営住宅に住んでいた母子家庭の母親が、住宅の立ち退き期日当日に、一家心中を図り、娘を殺害する凄惨な事件の公判があったばかりだ。

だからこそ、私は経過措置や特例措置を各地で柔軟に解釈し、実効的に運用するように求めたい。

そして、不利益が出ることのないよう、くれぐれも慎重に生活保護行政の運営を進めるように求めたい。

さらに、埼玉県内のすべての福祉事務所に対して、生活保護受給者や弁護士、支援団体とともに以下の「住宅扶助の経過措置の運用に関する要望書」も去る6月12日に発出した。

1 各福祉事務所及び各ケースワーカーに対し、経過措置及び課長通知に定められた経過措置の運用の周知を徹底すること

2 生活保護受給各世帯に、経過措置の内容を十分に周知・説明し、積極的に経過措置の適用を勧めること

3 生活保護受給者のプライバシーに配慮しつつ、変更後の基準額以下まで家賃を引き下げることができるか否かをケースワーカーが貸主等に対して確認すること

4 生活保護受給世帯が転居をする必要がある場合には、政府が定めた最低居住面積水準を満たす物件への転居とすること

しかし、本質的には私たち市民のひとりひとりが、一連の執拗な「生活保護受給者いじめ」を止めなければならない。

市民の意識は、無意識であっても制度や政策を動かしていく。

私は拙著『下流老人』(朝日新聞出版)のなかで、年収400万円でも生活保護を利用する場合があると指摘した。

(こちらも参照いただきたい→増え続ける「下流老人」とは!?ー年収400万円サラリーマンも老後は下流化する!?ー

非正規雇用が拡大する社会ではますます生活保護が身近な世界になっていることも明らかにしてきた。

老後は生活保護を利用することが珍しいことではないかもしれない。

そろそろ生活保護受給者への攻撃を止めて、自分のこととして、社会保障や生活保護について、考えていくべきときに来ていると思っている。

少なくともこれ以上は「ナショナル・ミニマム」(国民生活の最低限)を引き下げることに同意してはならないと強く思う。

明日は我が身であるのだから。