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ウソ拡散者にならぬよう、法政大社会学部でGoogle News Labのリテラシー講座を開催

藤代裕之ジャーナリスト
講座を受講する法政大学社会学部生=筆者撮影

筆者が勤務する法政大学社会学部では、春学期に学部の1年生らを対象にGoogle News Lab(グーグルニュースラボ)の井上直樹フェローによるリテラシー講座とワークショップを約1カ月にわたり行いました。何気なく学生が利用している検索サービスやソーシャルメディアの仕組みや発信がどのような影響を与えるか、リテラシーについて考える機会となりました。

講座では基礎的な知識を、ワークショップではGoogleのサービスを実際に使いながら事実をどのように確認するかを学びました。

Googleの各サービスの仕組みを学ぶ

講座では、検索、トレンド、地図など、Googleの各サービスの仕組みや使い方が紹介されました。

トレンドでは、その場で複数の大学名を入力し、法政大学の検索ボリュームがどう推移しているか、関連しているキーワードに違いがあるのか、をパソコンを使いながら提示。Googleアースを使い殺害現場を特定したBBCの「Cameroon atrocity: Finding the soldiers who killed this woman」など報道の取り組みの紹介もありました。

講座を受ける法政大学社会学部メディア社会学科の新入生ら=筆者撮影
講座を受ける法政大学社会学部メディア社会学科の新入生ら=筆者撮影

2019年度の法政大学社会学部メディア社会学科の新入生ほぼ全員が受講する入門科目の時間を使い、2・3年生も加わった200人超が受講しました。

ウソ拡散者にならないように

ワークショップは、メディア社会学科に加え、社会政策科学科、社会学科の学生も受講するコンピュータ入門の時間を使い、17回クラスに分けて行われました。

コンピュータ入門の履修は約600人。約20-40人の学生が、大学のパソコンでGoogleのサービスを実際に使いながら事実をどのように確認するかを学びました。

井上さんが「熊本地震のときにライオンが逃げたというウソの情報が拡散したのですが知ってますか」と質問すると3分の1ぐらいの学生から手があがります。「ウソの情報が拡散したことで、動物園に電話があり、地震で大変ななかで対応することになってしまった。皆さんにはリツイートする側にまわってほしくない」とウソ拡散者にならないよう呼びかけてワークショップが始まりました。

ワークショップを受ける法政大学社会学部の新入生ら=筆者撮影
ワークショップを受ける法政大学社会学部の新入生ら=筆者撮影

地震で逃げたシマウマの写真は本物か?

学生は、2016年の大阪府北部地震の際に拡散した「シマウマが逃げた」という情報で使われたシマウマの画像を検索し、オリジナルは毎日新聞に掲載された写真であることを確認しました。

ツイッターなどで流れてくる「バズっている」「面白い」情報を確認する際にも使えると井上さんは説明します。プロフィール写真を画像検索すると、全く別のモデルの写真を反転して利用しており「これはスパムアカウントの可能性が高く、情報の信頼性が低いと判断できます」。

次は、グーグルマップやストリートビューを使い、災害時などの情報について、写真がどの場所で撮影されたかを確認します。グーグルマップを使えば、写真から住居なども判断することができるため「安易に自宅やその周辺の写真を公開しないように」と注意を喚起しました。

デジタル化するメディアに対応

講座は、法政大学社会学部がGoogleニュースラボが世界で展開している「Google News Initiative University Network」に国内で初めて加わったことをきっかけに行われました。講座の内容は次年度以降のコンピュータ入門の参考にしていきます。

メディア社会学科では、デジタル化やソーシャル化が進展する新たなメディアを切り開く人材を育成すべく、コンピュータ入門・プログラミング入門の受講を推奨するなど対応を進めています。

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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