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日大アメフト反則問題、選手会見で要望された「顔アップ」に配慮したメディアはどこか

藤代裕之ジャーナリスト
日大選手の会見を報じる5月23日朝刊(筆者が撮影し一部加工)

関西学院大学の選手を負傷させた反則問題で、22日記者会見した日本大学のアメフト選手。冒頭で同席した弁護士からずっとアップで撮るなどを避けて配慮をしてほしいという要望がありました。しかしながら、テレビ中継を行ったワイドショーなどが、要望を無視して選手の顔をアップで放送し、下記のような記事が拡散していました。夜のNHKもかなりの時間アップで放送していました。

会見における質問者の多くがテレビ・ワイドショー所属で、このニュースはワイドショーで多く流されると思いますが、それ以外の媒体において、要望された「顔アップ」(動画だけでなく、アップ写真も同じ意味と捉え)の配慮が行われているのかの確認を行いました。

紙面では毎日新聞が掲載せず

新聞各紙もこの問題を大きく取り上げています。朝日、読売、毎日、東京の各新聞5月23日朝刊は、一面だけでなく、社会面やスポーツ面に展開していました。毎日は一面は横から、社会面は会場全体の写真を使い、アップはありませんでした。読売は一面は横からですが、社会面に丸い顔写真を使っています。朝日は一面は引き気味ですが、社会面は横から、アップというほどではありませんがかなり顔が分かる大きさです。東京は横顔を掲載していました。

各紙のサイトも確認しました。朝日と読売ではこのようにかなり異なります。毎日は、記事は会場全体。東京は写真ナシでした。

朝日新聞デジタルとヨミウリ・オンライン(筆者が一部加工)
朝日新聞デジタルとヨミウリ・オンライン(筆者が一部加工)

近年は新聞各社もニュース記事だけでなく、動画に力を入れており、朝日と毎日の動画はアップの時間がかなりありました。毎日は、紙面、サイト記事までは配慮が見えますが、動画までは至らなかったのかもしれません。

ソーシャルメディア対応も別れる

ソーシャルメディアでの拡散は、大きな影響を与えます。メディア各社が記事ツイートに選手の顔写真を使っているかも確認しました。

顔アップもしくはかなりはっきり写っているのが、NHK、TBS、産経、ヤフー、BuzzFeedJapan。

会場全体や頭を下げている場面など、配慮が伺えるのが、朝日、毎日、読売、ハフィントン・ポスト日本版です。

BuzzFeedJapanとハフィントン・ポスト日本版のツイート(筆者が一部加工)
BuzzFeedJapanとハフィントン・ポスト日本版のツイート(筆者が一部加工)

ネットニュースサイトでも対応が分かれています。なおサイトでは、BuzzFeedJapanは顔アップなし、ハフィントン・ポスト日本版は顔アップあり、と逆の扱いになっています。

将来ある若者への配慮が求められる

調査範囲内では毎日新聞、読売新聞の扱いに一定の配慮が見られました。なお、アメリカンフットボール・マガジン編集部(ベースボールマガジン社)の記事では、写真は後ろ側、頭を下げている場面、会場全体の写真を使っています。未来ある20歳の大学生が、実名、顔出しで会見を行ったことに対し、マスメディアはこのぐらいの配慮があってもいいのではないでしょうか。

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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