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自民党サイトが「偏向教育」の調査を呼び掛け。ネットでは密告フォームとの声も

藤代裕之ジャーナリスト
自民党のサイトに公開されている「学校教育における政治的中立性についての実態調査」

自民党サイトに公開されている「学校教育における政治的中立性についての実態調査」がネットで話題となっています。調査は、学校現場における政治的中立を逸脱するような不適切な事例を記入して投稿するもので「密告フォーム」との声も上がっています。「密告フォーム」はTwitterのトレンド・ランキングで4位となっています(7月9日13時29分現在=写真参照)。

「密告フォーム」はTwitterのトレンドランキングで4位となっている
「密告フォーム」はTwitterのトレンドランキングで4位となっている

調査に対しては、共同通信がネット上で「密告社会の到来だ」と批判が相次いでいると報じています。

ソーシャルメディアでも、説明を求める声、中立性を誰が判断するのかといった疑問、どこが問題なのか分からない、いいことをやっている、といったさまざまな意見が出ており、まとめサイトにも一部意見がまとめられたり、ニュースサイトの記事にもなり、反響が広がっています。

脳科学者の茂木健一郎さんは調査に関して以下のようにツイートし、#こんな密告フォームは嫌だ というハッシュタグもつくっています。

密告フォームの件、思想の自由、情報のプライバシー、多様性の尊重、人権感覚などについて、自民党の(一部の方?)のリテラシーが余りにも低いので衝撃を受けました。政権与党のこの惨状は、わが国の声価にかかわる「特定秘密」に該当すると思われるので、みなさん国外には決して漏らしませんように。

出典:茂木健一郎Twitter

調査の呼び掛けは党本部科学部会の名前で行われており、目的について下記のように記されています。

党文部科学部会では学校教育における政治的中立性の徹底的な確保等を求める提言を取りまとめ、不偏不党の教育を求めているところですが、教育現場の中には「教育の政治的中立はありえない」、あるいは「安保関連法は廃止にすべき」と主張し中立性を逸脱した教育を行う先生方がいることも事実です。

学校現場における主権者教育が重要な意味を持つ中、偏向した教育が行われることで、生徒の多面的多角的な視点を失わせてしまう恐れがあり、高校等で行われる模擬投票等で意図的に政治色の強い偏向教育を行うことで、特定のイデオロギーに染まった結論が導き出されることをわが党は危惧しております。

そこで、この度、学校教育における政治的中立性についての実態調査を実施することといたしました。皆さまのご協力をお願いいたします。

出典:自民党

氏名(フリガナ)、性別、年齢、職業、勤務先・学校名、電話番号、ファクス番号、住所、メールを記入する必要した上で、「政治的中立を逸脱するような不適切な事例」を自由記述で投稿するようになっています。

ネット上では目的の文言に関して、「安保関連法は廃止にすべき」の部分が当初は「子供たちを戦場に送るな」だったとの指摘も行われています。

FacebookのOGP画像に残る「子供たちを戦争に送るな」の文言
FacebookのOGP画像に残る「子供たちを戦争に送るな」の文言

自民党文部科学部会長である、木原稔衆議院議員は7月7日に実態調査への協力を呼びかけています(ツイート)。

調査に関して自民党本部に事実関係を問い合わせたところ「担当者が席を外しているため折り返します」との返事でした。連絡があれば追記していきます。BuzzFeedJapanの取材に自民党の担当者は「調査をやめるなんてありません。(中止は)当然しません」と回答したとのこと。

(15時36分)BuzzFeedJapanの記事を追記しました。

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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