朝日新聞が福島原発のスクープをソーシャル予告。特集ページ「吉田調書」をティザー公開

朝日新聞が公開した特集ページ「吉田調書」

朝日新聞が福島第一原発の吉田所長が事故の様子を語った調書を入手、20日の朝刊で報道するとツイッター(@asahi)で、スクープ予告しました。断片的な情報を掲載した特集ページ「吉田調書」もティザー公開。スクープ記事そのものが公開されていない0時段階で、2000いいね、2000ツイートを超えた反応を集めています。

特集ページの公開を伝える朝日新聞のツイッターアカウント
特集ページの公開を伝える朝日新聞のツイッターアカウント

ネット上でのスクープ予告は今回が初めてではありません。朝日自身が2010年に「日航、上場廃止へ」の1面特ダネをツイッター(@asahi_tokyo)を使って告知していましたし、毎日新聞も昨年の参院選時に担当した石戸諭記者や立命館大学の西田亮介さんが、紙より先にウェブに記事を公開した事例もあります。が、今回はスクープでニュース性が高く、気合いの入った特集ページが公開されているところが異なります。

特集ページの「吉田調書」は朝日新聞がソチオリンピックの際に公開した浅田真央選手の足跡を写真、動画、データ、テキストを交えて紹介した「ラストダンス」と同じタイプのもの。既に、大きな写真とテキストに加え、3号機が水素爆発したときのやりとりの音声が公開されています。

ラストダンスは、ニューヨーク・タイムズが公開し「マルチメディア報道のセンセーション」と呼ばれ、ピュリッツアー賞を取った「SnowFall」と同じで、「SnowFallを真似しただけだ」と厳しい声もありました。

ニューヨークタイムズの「SnowFall」
ニューヨークタイムズの「SnowFall」

ですが、新しい表現は取り組んでみなければわからない事があります。ラストダンスを公開したことで分かった事もあったでしょう。単に予告をするだけでなく、読者の興味を引く工夫がされていることが分かります。

プロローグでは、調書が全7編、総文字数50万字、A4判で四百数十ページに上る分量が説明され、さらに追加取材していることも明かしています。

朝日新聞デジタルでは20日から、今回入手した調書を分析・検証した特集企画「吉田調書 福島第一原発事故、吉田昌郎所長の語ったもの」を配信していきます。政府事故調が吉田氏から聴取しながら報告書ではほとんど言及しなかった「人の行動、判断」の部分に焦点をあて、「原発は誰が止めるか」「住民は避難できるか」「ヒトが止められるか」を考えます。調書の分析・検証にあたっては、東電テレビ会議録、時系列表、および別途入手した東電の内部資料を読み込み、各方面を取材しました。20日付の朝日新聞朝刊では、吉田調書でわかった新事実を報道する予定です。

出典:特集ページ「吉田調書」朝日新聞デジタル

また、全9回にわたり報じられる事も予告され、「第1章 原発は誰が止めるか」「第2章 住民は避難できるか」「第3章 ヒトが止められるか」と章タイトルも公開されています。特に注目するのが、各回のタイトル。第1章 の1は「しょうがないな(公開時に:フクシマ・フィフティーの真相に変更) 非常事態だと私は判断して、一回退避しろと」と言った具合で、しっかり準備した様子が伺えます。

「吉田調書」に公開されている今後のラインアップ(予定)
「吉田調書」に公開されている今後のラインアップ(予定)

このように特集サイトがスクープの内容に期待を持たせるものになっているのに加え、拡散には朝日新聞が力を入れている記者ツイッターが効いています。朝日新聞は、東京報道編成局や官邸クラブといった担当だけでなく、2012年からツイッター利用を記者個人に解禁し、「ソーシャル化」を推進してきました。その数112人!

朝日新聞の記者ツイッター一覧
朝日新聞の記者ツイッター一覧

普段はバラバラに動いている記者ツイッターで、人数の割りにそれほど存在感がありませんでしたが、ど級スクープで記者がそれぞれツイートすることで、多くの人に話題が広がり、「早く読みたい」「明日の新聞を買おう」といった反応も見られます。普段は、記者それぞれが得意ジャンルを持ち、読者と交流していますが、いざとなれば大きな力になる可能性が見えて来ています。

ソーシャル時代は媒体の基礎力だけでなく、執筆陣や読者の拡散力の掛け合わせで、媒体の発信力が大きくなります。

ソーシャル時代の媒体力=媒体の基礎力(ページビューやUU、認知度)×執筆陣の拡散力×ファン・読者の拡散力

記者のソーシャル化を進めて来た成果は、これから発揮されるのかもしれません。

この「吉田調書」の取材は、宮崎知己、木村英昭の実力記者がクレジットされています。(『プロメテウスの罠』『福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録』など担当。木村記者はツイッターもやっています@KIMURA_HIDEAKI)。

現場取材に力を持つ記者は、新しい表現には無関心な場合が多いのですが、スクープ×デジタルの新表現に挑めるのは凄い事です。明日の朝刊、そして特集ページの更新が楽しみです。

もちろん最終的な評価は、記事によりますが、紙への掲載を一番に考えていたスクープをソーシャルも含めてどう読んでもらうか考えた取り組み事例としても歴史に刻まれる事例になるでしょう。

追記:朝日のSnowFallタイプの取り組みは2013年の瀬戸内国際芸術祭の特集ページとの情報を頂きました。