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マドレーヌに一本勝ちのしなしさとこ、あのライバルも驚く“凄み”とは

藤村幸代フリーライター
前日計量では見事な腹筋を披露したママファイターしなし(左)(C)DEEP事務局

 6月29日、東京・後楽園ホールで総合格闘技イベント『DEEP 90 IMPACT』が開催され、女子フライ級王者・しなしさとこ(42=フリー)が女子プロレスラーの顔も持つ格闘家マドレーヌ(年齢非公開=メルヘン王国#FIGHTTEAMミチバ)から1ラウンド3分5秒、貫禄の一本勝ちを収めた。

 柔道をバックボーンに持つしなしは2001年のプロデビュー以来、藤井惠、辻結花、渡辺久江と4強時代を築くなど黎明期の“ジョシカク”をけん引してきた大ベテラン。出産、育児で一時戦列を離れたが、2014年には約6年ぶりに復帰し、ここまで41戦36勝と長年にわたり女子最軽量級で無類の強さを誇っている。

 デビュー以来、しなしの必勝パターンとされているのが、柔道仕込みの投げで寝技に持ち込み腕十字で一本を取るというもの。休養期間を経て1年2ヵ月ぶりの復帰戦となった今回も、早々に相手の打撃に合わせて投げを決めると、粘るマドレーヌにも冷静に対処し、最後は腕十字をがっちりと極めてみせた。

 

 身長148cm、通常の体重は41、2kg。見合う階級がなく、過去には10kg以上重い相手との対戦もざらだった。今回は新設されたミクロ級(44kg)での戦いとあって肉体のキレも動きのキレも抜群。本人も試合後、SNSで「格闘技人生18年目にして、やっとベストな44キロ級の新設。嬉しい限りです」と語り、フライ級に続く2冠達成に意欲を見せた。

 長いブランクがありながら、復帰後も「しなしさとこ」の価値を落としていないのはなぜか。強さの一端を探るべく、渡辺久江(39=フリー)に尋ねてみることにした。両者は過去に2度対戦。2002年にはしなしがヒールホールドで、2006年は渡辺がパンチによるKOで勝利しているが、火花散るライバル対決は未だに女子歴代ベストバウト候補にあげられる。

 2017年に長女を出産、現在子育て真っ最中の渡辺は「最近の試合はほとんど見ていなくて申し訳ないんですが」と前置きしつつ、しなしの“凄み”を2点あげた。まず1つは「投げからの極め」という自分の強みを突き詰めていることだという。

「いくら自分の得意なものが分かっていても、それを試合で出すことって難しい。相手も警戒してますからね。しなしさんは必勝パターンの形に持って行ける、しかも何度もそのチャンスを作れる所に凄さがある。形に持って行くまでの練習が一番大変だと思うけど、きっともの凄く反復しているんでしょうね」

 もう1つの凄みとしてあげたのが「ブランクからの回復力」。渡辺自身、2016年に5年半ぶりの現役復帰を果たした経験があり、現在は育休中ということもあって、カムバックの大変さがよく分かるという。

「自分の経験からも言えるけど、試合を高いレベルでできるまで体力を戻せるのって、本当に凄い。彼女が出産、育児を経てもリングに戻れるんだ、これだけのパフォーマンスを見せられるんだと証明すれば、格闘技をやる女性も増えますよね。その意味ではいい道しるべになると思うし、私にとってもいい刺激になりますよ」

 キャリア42戦目にして「進化」を予感させた42歳。快進撃を阻む新たなライバルの登場を含め、今後の戦いが楽しみだ。

 

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

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