RENAが超えられなかった“ジョシカクのジンクス”とは?

1R終盤、浅倉カンナ(右)のチョークでRENAを襲った(C)RIZIN FF

■生放送のラストは衝撃的な結末に■

 2017年大晦日、さいたまスーパーアリーナで開催された格闘技イベント『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017』。「これぞ格闘技」という熱戦の連続だった男子バンタム級トーナメント(優勝は堀口恭司)を筆頭に、“神童”那須川天心の圧勝で終わったRIZIN KICKワンナイトトーナメント、五味隆典vs矢地祐介のMMA新旧対決など、見せ場は多かった。

 だが、一番衝撃的だったのは、やはりRENA(シーザージム・26)vs浅倉カンナ(パラエストラ松戸・20)の女子スーパーアトム級決勝だろう。

 地上波で生放送された4試合のうち、ラストにラインナップされたことからも、注目度の高さがうかがえた一戦は、1ラウンド4分34秒、優勝候補のRENAが朝倉にチョークスリーパーで絞め落とされるという“まさかの”結末となった。

「闘いながら“行ける”と思ってしまった。油断があった」とRENA(C)RIZIN FF
「闘いながら“行ける”と思ってしまった。油断があった」とRENA(C)RIZIN FF

■RENAの敗戦は“まさか”ではない?■

“まさかの”と、あえてカッコをつけたのには理由がある。

 日本女子格闘技の歴史を振り返ってみると、新設されたベルトにまつわる“アップセット”は今回だけではない。しかも、「私のためにつくられたベルト」「私のためのトーナメント」と宣言した選手ほど、ベルトを獲り逃すことが多いように思う。その例になぞらえれば、RENAの敗戦は決して“まさかの”と言い切ることはできない。

 たとえば2005年9月、キックボクシングイベント『IKUSA(いくさ)』で「IKUSA-U50」という女子王座が新設されたとき。当時女子格闘技界のヒロイン的存在だった渡辺久江が順当にベルトを巻くと思われたが、ベテランのジェット・イズミがいぶし銀の闘いで渡辺の光を消し、初代IKUSA女王となった。

 その翌年、2006年8月には総合格闘技イベント『DEEP』が旗揚げ6年目にして女子王座を制定した。デビュー以来24戦無敗を誇り、DEEP女子を牽引していた、しなしさとこは戦前、「あれは私のベルト。巻くことを楽しみにしている」と語ったが、ライバル渡辺久江の右フックに沈み、初代DEEPライト級(-48Kg)王座のベルト戴冠はならなかった(しなしは2008年に同フライ級〈-45Kg〉で初代王座を獲得)。

■RENAが経験した二度の番狂わせ■

 じつはRENA自身も過去に二度、同じような経験をしている。

 一度目はシュートボクシング(SB)日本レディース王座を懸けた一戦だ。このベルトは長らく封印されていたが、SB女子エース・RENAの「女子のベルトを復活させてほしい」という要望がきっかけで13年ぶりに復活、2011年6月、RENAvs高橋藍のタイトルマッチが行われた。

「私が言って、私が実績を残してきたからこそ出てきたベルト。私がベルトを獲らないと盛り上がらない」と並々ならぬ意欲を見せていたRENAだが、高橋の戦略的ファイトと不動心に焦りを誘われ、判定負けに終わっている。

 そのRENAが逆に番狂わせを演じて見せたのが、同年11月の「初代RISE QUEEN決定戦」だ。 女子版“神童”さながらの快進撃を続けていた、当時18歳の神村エリカと、ケガもあり本調子とはいえなかった19歳のRENA。

 注目の10代対決は、RENAのコンディションに加え、神村のホームリングであるRISE(らいず)でRISEルールによる闘いであること、また約半年前のエキシビションマッチでRENAがダウンを奪われていることなどから、神村の圧倒的有利との声が多数だった。

 ところが、試合では徹底した神村対策を講じたRENAが優位に立ち、判定勝利。初代RISE女王の証をその腰に巻いたのだった(神村はRENAの返上した同王座を2013年に戴冠)。

RENAを下しRIZIN初代女王となった浅倉カンナ。その進化の過程にも注目だ(C)RIZIN FF
RENAを下しRIZIN初代女王となった浅倉カンナ。その進化の過程にも注目だ(C)RIZIN FF

■RENAが強気に描いてみせた“未来”■

 男子中心の団体やイベントで女子王座がつくられるまでには、それなりの時間がかかる。選手層が薄く、タイトルマッチにふさわしい試合を組むのが難しいというのが一番の理由だろう。1人のエースが実績を積み、知名度を上げるなどして、その団体やイベントの女子部門を牽引し続ける。その貢献が認められて、初めて王座創設となるというのが、よくある手順だ。

 だからこそ、エースは燃える。「私のためにつくられたベルト」を、他人に渡すわけにはいかない。同時に、「獲って当然」という周囲の声も重圧としてのしかかってくる。さらに、王座決定戦そのものより、「獲った先のこと」まで思いが及んでしまうこともある。

「獲って当然」の選手が負けたあと、よく「試合中、ふわふわしていた」とか「地に足がついていないような感覚だった」とか「自分の中に甘えがあった」と言うのは、こうした精神状態もあってのことかもしれない。

 今回の勝者、浅倉カンナはグラウンドの技術だけでなく、「先を見ず、この一戦に懸ける」という集中力の高さもRENAを上回っていた。逆に、RENAは「試合中に“行ける”と思って隙ができた。甘かった」と、集中力を欠いていたことを正直に告白した。

 ジンクスというと大げさかもしれないが、「私のためのベルトほど獲り逃す」という苦い経験は、絶対的エースを目指す過程で突き当たる壁でもある。また、追う者と追われる者の逆転は、その先の物語をさらに面白くもする。RIZIN女王・浅倉と、試合直後「最終的に一番になるのは私」と強気に未来予想図を描いてみせたRENA。2018年、女子のエース争いがRIZINの大きな軸になることは間違いない。