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“史上最強の女子会”!? がもくろむ新たな試みとは?

藤村幸代フリーライター
一般を対象にしたボクシング現役女子王者指導による練習会(C)ボクシング女子会

11月10日、元女子世界王者対決が実現!

 11月10日、東京・後楽園ホールで女子ボクシング注目のタイトル戦が行なわれる。元IBF女子世界ライトフライ級王者・柴田直子(ワールドスポーツ)vs元WBA女子世界ミニマム級&元IBF女子世界ミニフライ級王者・多田悦子(真正)によるWBOアジア・パシフィックミニフライ級王座決定戦だ。

 柴田は世界王座を5度防衛、対する多田はWBA世界王座を9度防衛と、ともにベテランの実力者。2012年9月の初対戦では判定3-0で多田が勝利し、WBA8度目の防衛に成功したが、その翌年に柴田はIBF世界王座を奪取している。

 柴田のリベンジマッチというだけでなく、両者とも世界王座返り咲きの試金石となる重要な一戦。勝負性じゅうぶんの好カードだ。

11月10日、後楽園ホールで男子の東洋太平洋戦などと共に女子注目の一戦が実現
11月10日、後楽園ホールで男子の東洋太平洋戦などと共に女子注目の一戦が実現

リングサイドで女子王者が実況解説!?

 さて、この一戦ではリングサイドでひとつのユニークな試みが行なわれる。10名限定で希望者を募り、現役の世界&東洋太平洋女子王者たちの解説つきで試合観戦ができるというもの。女子王者たちが近くの席に座るが、声援で声がかき消されないよう、イヤフォンを通して女子独自のルールの解説や試合のみどころ、選手の素顔などをチャンピオンたちが“熱血解説”してくれる。

 この試みを企画したのは「ボクシング女子会」。現役や引退した元女子王者たちが中心となり運営されているボクシング女子会は、プロライセンスをもっていれば誰でも参加できる有志の会。女子ボクシングの認知拡大、女子ボクサーの技術やプロ意識の向上、女子ボクシングを取り巻く問題の共有と解決などを活動のおもな目的として2015年9月に始動した。

「そもそもは女子ボクサーのためにスタートした会でした。女子ボクシングのファンを増やしたいという思いもあるけれど、その前に選手全体のレベルを上げていくことも、魅力を感じてもらうことにつながるのではないか、また、ジムのトレーナーは男性がほとんどなので、所属は違っても女子選手に気軽に相談できるような環境があれば、選手人口ももっと増やせるのではないかと」

 そう語るのは呼びかけ人のひとりで、男女を通じて日本人初の世界4階級制覇を達成している藤岡奈穂子(T&Hボクサフィットネス)だ。

(今年2月に開催された第3回ボクシング女子会・練習会の様子。映像提供:ボクシング女子会)

「まわりが盛りあげてくれない」で終わりたくなかった

 2015年の第1回女子会には練習会に約20名、その後の懇親会に約40名の現役・元プロ選手が参加。「練習会ではテクニックや精神面などを教え合い、懇親会では減量のしかたから、たとえばコスチュームをどこで作っているのかといったふだんの素朴な疑問を含めて、いい情報交換の場になりました」(藤岡)

 2017年現在は、練習会の参加者をアマチュアボクサーや他の格闘技選手、ボクシングをやってみたい、もっとうまくなりたいという一般の女性まで拡大。そのほか、食アスリート協会インストラクターの資格をもつ元女子格闘家を講師に、現役時代の経験に基づく食育講座も行なうなど、一般の人と女子ボクシングをつなぐチャンネルを徐々に増やしている。11月10日の「現役女子王者による実況解説」も、そのひとつだ。

練習会のチラシを広告代理店勤務の現役世界王者、江畑佳代子が手がけるなど、それぞれのキャリアを活かした手作りの活動を続けるボクシング女子会(C)ボクシング女子会
練習会のチラシを広告代理店勤務の現役世界王者、江畑佳代子が手がけるなど、それぞれのキャリアを活かした手作りの活動を続けるボクシング女子会(C)ボクシング女子会

「一般の方が練習会に参加して下さると、ますますボクシングが好きになってくれたり、『もうちょっと自分もやれるんじゃないか』と、前向きないいスパイラルで帰ってくれる。そこから口コミで派生して、『女子ボクシングって面白いよね』とか『今度は試合も見に行ってみようかな』という人が増えていってくれたら、本当に嬉しいですよね」

 今回タイトル戦に臨む柴田や、12月1日・後楽園ホールで世界5階級制覇の偉業に挑む藤岡をはじめ、女子会の中心メンバーは自身の試合のかたわら、可能な限り女子会の運営に関わっている。藤岡は言う。

「本当はボクシングだけやれる環境が一番ですが、『まわりが女子ボクシングを盛りあげてくれない』と言いながら待っているだけで終わるのはイヤだなと。最近、部活でボクシングを選ぶ女子高生もちょっとずつ増えていると聞きますし、私たちの魅力の見せ方しだいで、『プロでやってみたい』と思ってくれる子が将来、増えるかもしれない。そのためにも今、土台づくりをしっかりやっておきたいなと思うんです」

 ボクシング女子会では今後も、一般参加の練習会はもちろん、“助産師ボクサー”として活躍した元WBC女子世界ライトフライ級王者で現役助産師の富樫直美さんによるメンタル講座などユニークな試みを企画している。「運営の台所事情は正直、苦しいですが、メンバーには広告代理店勤務もいれば、富樫さんのように医療に詳しい人もいる。ボクシング以外の経験値も総動員して、アイデアと行動力で女子ボクシングの知名度アップに向けた活動を続けていきたい」(藤岡)

「大好きなボクシング界を女性が活躍できる場に」と立ち上がり、限られた時間と闘いながら、お仕着せでない活動を続ける女子ボクサーたち。男女の別なく「会の目的に賛同し、協力してくれる方は大歓迎です!」とのことだ。

「ボクシング女子会」Facebook

◆11月10日(金)後楽園ホール

「EARNEST EFFORT6×Mega Fight57」

開場:17:20、試合開始:17:45

・OPBF東洋太平洋スーパー・ウエルター級タイトルマッチ・WBO Asia Pacificスーパー・ウエルター級王座決定戦

・日本フライ級タイトルマッチ

・WBO女子アジア・パシフィックミニフライ級王座決定戦 ほか

試合に関するお問い合わせ先: ワールドスポーツジム:03-5647-8969

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

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