女子格闘家がつくった「生理」の本

シュートボクシングと編集者、二足のわらじを履く高橋藍(撮影:石本文子)

きっかけは自身の体の変調から

生理に関する新知識やノウハウが詰まった書籍『生理が楽しみになる本~知って、やって、身体が変わる!~』(著:京谷奈緒美著・まんが:松島むう、講談社刊)。2012年12月の発売から版を重ね、現在は第4刷と堅調な売れ行きを見せている。

この本を企画・編集したのは高橋藍(31)。編集者でありながら、立ち技格闘技「シュートボクシング」で前日本チャンピオンの肩書を持つ、トップクラスの女子格闘家でもある。

彼女がこの本を企画したのも、格闘家としての実体験がきっかけだった。

「試合のためにきつい減量した頃から、体のリズムがおかしくなったり、体調が重い時が増えていったり。でも、ほかの選手に聞こうにもまわりはみんな男性で、生理に関する知識はほとんどない。これは人に頼れない、と自分で調べるようになったんです」

女性が社会に出て頑張っている時代、生理が重ければ外に出ないでゆっくりしていなさいというアドバイスは現実的ではない。では、どうすれば? 生理にまつわる文献を漁っていた時、彼女はある文章に突き当たる。「生理は楽しい! 生理が大好き!」。新潟県で整体院を営む、整体師の京谷奈緒美さんが書いたものだった。

「生理は楽しい」を伝えるために

「読んだ時の第一声は『何だそれ!?』でした。生理はつらいのが当たり前、そう思っていましたから。さっそく京谷さんが講演をされるという長野まで行って、話を伺ってみると、自分の体なのに知らないことが山ほどあった。だったら、改めて自分の体と向きあえるような本を作ろうと」

つらい、重い、憂鬱、なくなればいいのに。そんなネガティブなイメージを払しょくし、生理との新しい付き合い方を提唱するには――。著者と熱い議論を重ねる一方、社内の女性たちにもアンケートを実施し、文章や構成に反映させた。

生理前にオススメの食事や気をつけたい生活習慣はもちろん、「生理は“出し切る”と4日で終わる」「生理痛を軽減する膣のエクササイズ」「生理用品を使わない“ノーナプキン”の勧め」などなど。本書の内容は実に新鮮で、女性にも目からウロコの情報が満載だ。

生理への理解が深まったことで、高橋自身の生活にも変化が起きたという。

「症状が重い時に、ちょっと食べる物に気をつけようとか、今日は早く寝ようとか。小さなことですが、問題が起きた時に『対処できる』という心構えができたことで、気持ちがラクになりました。生理の痛みや不調は精神面もすごく関係してくるので、『大丈夫』と安心できることも大切なんですよね」

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「男だったらよかった」の発想を変えたい

自分の体と向き合えたら、生理は決して疎(うと)ましいものではない。そのことを多くの女性に、中でも競技に打ち込む女性アスリートに伝えたいと高橋は言う。

「私も男性並みの練習や減量で体調を壊したことがあって、それがすごく悔しかったし、正直、『男だったらよかったのに』と思いました。女子選手なら誰でも少なからず思うことかもしれないけど、そこはどうにもならない部分ですよね。だとしたら、自分の女性性を受け入れ、きちんと自分の体を管理・コントロールしながら競技に打ち込んでほしい。自戒を込めてそう願っているんです」 

本書が完成した際は、ジムの男性スタッフにも「ぜひ読んで下さい!」と配って回ったそうだ。女性とは切っても切れない「生理」について“タブー”を作らないことが、互いの信頼につながると考えたからだ。

「私は運よく理解のあるトレーナーに恵まれましたが、指導者の方の中には、生理がきついから練習を少なめにしたいという女子に対して『精神的にたるんでいる』という反応もあると聞きます。スポーツ界はまだまだ男性社会ですし、女性のリズムは特有で男性にはなかなか分かりづらい。それも事実なのですが、これからの時代、男女の特性や能力の“違い”を伸ばせるような指導も大切になってくるのではないでしょうか」

今後も、「同じ女性として頑張っている人たちに向けた応援歌のような本を作っていきたい」という高橋。4月18日には後楽園ホールで開催される『SHOOT BOXING 2014 act.2』で2014年初戦、プロ24戦目のリングに立つ。

立技総合格闘技シュートボクシング公式サイト

http://shootboxing.org/new/