加害者の叔父と叔母に私は直に問うた・なぜ人の命を奪い、山中に遺体を埋め、罪を黙秘したのかを。

『黙秘の壁 名古屋・漫画喫茶女性従業院はなぜ死んだのか』表紙

叔父と叔母はなぜ人の命を奪い、山中に遺体を埋め、そして黙秘をしたのか・加害者夫妻の肉声

━拙著ノンフィクション『黙秘の壁 名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか』(潮出版社)アフター 第3回

今年5月に刊行された同拙著はさまざまな反響を呼んだが、「事件」の展開はその後も続き、民事裁判の結論(原告の主張が認められ、刑事では不起訴となった「傷害致死」についても、被告の暴力と被害者の死亡について因果関係があると認定された)が出ても、被害者遺族と加害者夫妻にとって「事件」は終わってはいない。加害者夫妻は控訴せずに民事の判決(賠償金9千万近く)は確定したが、払わないと通告してきた。逃げ得の加害者を被害者遺族は、ぜったいに「赦す」ことはない。一方でしかし、その民事の勝訴判決を受けても、検察は加害者の杉本夫妻を起訴することは今のところなさそうだ。

人の命が他者によって理不尽に奪われた事件は、おうおうにして多くの周囲の人々を「巻き込む」ことになる。拙著では、加害者夫妻(杉本恭教・智香子)の親族として仮名で取材に応じてくれた青年が登場する。彼は幼少期に、父親によってむりやり杉本宅に預けられた時期があり、さまざまな精神的な虐待を受け、その心的な外傷から立ち直れずにいた。自分の父親と杉本夫妻をゆるすことはない。そして、加藤麻子さんという女性を死に至らしめながら、黙秘権を行使して、遺族に対していっさいの証言を拒んだことについて、彼はゆるせないでいた。大きく言えば、その二つが私の取材に応じてもらった理由である。

その親族青年が手記を寄せてくれた。「手記(前編・後編)」を読んでほしい。彼は、杉本恭教の甥にあたる。彼は祖父(恭教の父親。父親は恭教の兄。祖父は父方の親)の三回忌の場(2018年6月16日)で、杉本夫妻に事件について厳しく迫った。

今回はその録音記録をベースにしながら、親族に話を聞いた。

■子どもの頃、ぼくにしたことを夫妻は謝っていた■

藤井 「手記」でも半生を振り返りながら、家族に対して激しい言葉を向けられています。あなたの決意に敬意を表します。まず今回、お話をしていただけることになった理由を教えていただけますか。

親族 私は杉本の親族です。つまり、加害者側の人間です。同じ杉本の人間たちが犯した罪は、本人たちはもとより、親兄弟も少なからず責任があり償わなければならない。それが、私が考える筋です。しかし、本人たちを始め、兄である父や親である祖母をはじめ、誰もそのような考えがありません。刑務所に入ったんだからもういいだろ、そのような考えです。父に至っては、俺が殺したんじゃない、と言い放ちました。私は一大学生です。当然ながら、私が責任を取る、なんてことは出来ません。しかしながら、私ができる遺族の方々への責務として、私が知る限りの真実を私の口からお伝えすること、そう考えております。

藤井 なるほど、わかりました。あなたの勇気と正義感、そして誠実さ、被害者になった加藤麻子さんへの思いに頭が下がる思いです。そして、すでに公開したあなたの手記も、幼少期の思い、事件を犯した叔父と叔母に対する憎しみがひりひりと伝わってきます。あなたの祖父にあたる、つまり杉本恭教の父親にあたる方の三回忌で、あなたは恭教・智香子夫妻と会われ、事件について自分の疑問を問い詰めたそうですね。

親族 そうです。今年の6月16日でした。まずは、私が小学生のときに二年間、彼らの家に預けられていたとき精神的な虐待等をしたことについて、ただひたすら謝っていました。

[おっちゃんのせいで辛い思いさしたなと・・・肩身の狭い思いさしたなと、それで謝ったんやけどな。おっちゃんもおばちゃんも、〇〇君(親族の名前・以下同)からしたら憎いかもしれん、そやけどな、〇〇君聞いてくれるか? な? 憎い人かもしれへんが、おっちゃん、おばちゃんからしたら、〇〇君を憎いと思ったことないんや]、[(〇〇が)ちいさいとき、ほんまに俺も、若かったいうか、ええ歳やけど、いろいろあったと思う。嫌いじゃなくて、アニキのひとり息子やったから、(〇〇が)心配でな、怒ってな、ほんまに悪かった。ほんまに心からそれは思う。](恭教)

などと、子どものころのことについてはひたすら謝るだけでしたね。私の父が隣で黙って聞いていた手前ということもあるのかもしれません。杉本夫妻、つまり父からみれば弟夫妻の弁護士の手配をしたのは父です。そのため、父親とも私はまだ和解をしていませんし、できません。最近になって、私は心を病んでしまい治療を今でも続けていますが、ドクターからは当時の記憶や体験が君をすごく苦しめていることの大きな理由になっていると言われました。そして、もう一つの理由は叔父夫妻の起こした事件と、そのあまりに無責任なふるまいです。関係ないと言われるかもしれませんが、藤井さんに『黙秘の壁』で書いてもらいましたし、「手記」でも触れましたが、命を奪われた加藤麻子さんのことが人ごとだとは思えないのです。断じて許すことは出来ません。

藤井 あなたは心的外傷ストレス障害の状態にあります。医師からもそう診断されています。子どものころに受けた被虐待経験に加えて、それに叔父・叔母が起こした事件が重なった。事件についてはストレートに質問をされたそうですね。夫妻は答えましたか。

親族 加藤麻子さんの事件についてたずねると、やはり肝心なところは話しませんでした。

[〇〇君に言ってもわかってくれへんというか、難しいと思うわな・・・。一般の世間の人からしたらぜったいにゆるされへんことと思う。でも弁護士と話して、そういう結果になったんやわな。](恭教)

と黙秘をして被害者に何も語らなかったことに言い訳して、

智香子のほうも、

[それをおばちゃんの口から聞いても、黙秘しとる以上、な、ほんとはああやったこうやったということは、そうじゃなくて、〇〇君にしたら、おっちゃんとおばちゃんが黙秘をすると決めたのが納得いかんのかもしれん。相手の人に対しても、と〇〇君は言うかもしれん。そやけど、おばちゃんとおっちゃんの中では、黙秘と決めた以上はな、ほんとのことしゃべれと言われても警察の人にはしゃべれるとこまではしゃべっとるところがあるから]

と同じことを話していました。

■いまも「黙秘」は続いている■

藤井 そうですか。弁護士からもぜったいに話すなと言われているのでしょう。検察官が起訴する可能性は消えたわけではありませんから。

親族 黙秘についてもっと詳しく、「何で黙秘しようと思ったのですか」と聞いたら、恭教が口ごもりながらも何かを話そうとするんですが、智香子が止めに入るという会話でした。

[〇〇君は聞きたいことかもしれんけど、それ自体がな、黙秘なんや。黙秘をした理由自体も、黙秘なんや。それを、〇〇君には分かってもらいたいんやわ。]と智香子は言い、

恭教は、[分かりやすく説明すると、最初は(藤井の本に)書いてあった通り、喋ってもうてた部分もあるんやわ。]と話しました。そして、私が、「あれ(最初に自供したこと)は、本当なんですか?」と聞くと、恭教は[いや、だから、そこはちょっと…]とごまかすんです。

智香子が、「〇〇君にしたら、一番納得しないとこやと思う。黙秘を何でしたんか…]と。そうしたら、恭教が智香子の発言を遮るように、[最初警察に連れていかれたやろ?その時はいろいろ…そのあとに弁護士付いたわな、それで弁護士といろいろ相談したりして。もう、自分がやってしまったことで、弁護士頼りになってしまって、それで、もう言うた通りにせなあかん、思うて。一般の人は、絶対納得できんと思う。]と言っていましたね。

素人の浅知恵ですが、ぼくが考えるに、罪を犯した者には、犯した罪に対して正当な罰を受ける権利と義務が発生し、黙秘権とは正当な罰を受ける権利に付随するものだと考えています。決して犯した罪から逃れるための権利でも、罪を軽くするための権利でもないと思う。

ところが、その意味をはき違え、一生貝になっていれば、己が受けるべき罪から逃れられると思っている者たちがいる。こうなってしまえば、法廷など形骸化してしまいます。

ぼくは叔父と叔母にも言いましたが、黙秘権の存在自体を否定するつもりはありません。罪を犯した者を罰するにあたって、犯した罪、背景等、それらを踏まえて罪の量刑を決めるべきです。当然、罪を犯した者にも、背景、動機がありますから、それも考慮する必要がありますが、まったく話さないとそれすらできない。

今回の恭教と智香子の行為を見ると、当初は自白していたにもかかわらず、弁護士が付くや否や一切の黙秘に転じています。正当な罰を受けるためではなく、罰自体から逃れるために口をつぐんでいるように思えてしまうのです。

彼らに直接そのことに関して問いただしてみたところ、ここで紹介したとおり、弁護士の言いなりになった、そう(黙秘するように)命令された、と言っていました。刑事裁判における弁護士は、罪を犯した者が正当な罰を受けること、その者が更生すること、この2つを主として手助けする存在なのではないかと思いますが、今回の叔父と叔母についた弁護士たちにそういう責任めいたものはまったく感じません。

罰を受ける義務がある者たち、責任ある立場の者たちが、義務、責任を放棄し己の行為の身勝手さを恥じることなく権利だけを声高々に主張している、そうとしか思えません。

藤井 弁護士がつくまえには素直に犯行を自供していることが、警察官の調書からあきらかになっています。検察官はメモに残してもいます。そのあたりは拙著『黙秘の壁』でもかなりのページを割いていますから、そこだけは読んでいるのでしょうか。

■もう弁護士頼りになったんやな。もう、弁護士の言うた通り■

親族 智香子は、[おばちゃんらが何で黙秘をしたのか、って(理由を)聞いたとしても、納得できんことやと思うし。〇〇君な、何で黙秘をしたか自体(の理由)も黙秘なんや。こんなこと言うたら駄目やけど。〇〇君からしたら腹立つことかもしれんけど。おばちゃんらも、みんなから白い目で見られる。でも、それも覚悟や。〇〇君からも憎まれても、白い目で見られたとしても、これが黙秘なんよ。]と言っていました。

私が、「簡単に言うと、弁護士の先生が言ったから黙秘した、ってことですか?」と聞いたら、智香子は[まあ、短く言うたらな。深くは言えないけど、簡単にいうたらそうや。]と答え、恭教は、[何て言うの、あの時はもう、(警察に)引っ張られて頭が真っ白になって、何も全然分からんかったし、どうしていいのか分からんし、もう弁護士頼りになったんやな。もう、弁護士の言うた通り、言うた通り、で、なってしもうた、ってことやな。だから、もう、一般の人にも、ニュースにも、凄い叩かれて、白い目で見られてな。]と言っていました。

藤井 刑事弁護人はもちろん被疑者の意思でそうしたということなのだろうけど、やはり拙著で書いた通り、弁護士のアドバイスやリードがあったということですね。主任弁護人の金岡繁裕弁護士は「黙秘は武器になる」という論文を書いているような方ですから。

親族 私は「遺体は、何であの場所に埋めたんですか?何で遺棄したんですか?それも言えないですか?」とも聞いたのですが、[うん、それもな。悪いけど〇〇君、これが黙秘なんや。]と智香子は答えました。

ぼくが「一応、黙秘自体は国から認められた権利なので、それ自体をとやかく言う権利は、私にはないけれど、個人的には、卑怯だと思います。」と伝えました。そうしたら、智香子は、[おっちゃんやおばちゃんらも白い目で見られたり、その覚悟で黙秘になってしまったんや。それは、〇〇君にも分かって欲しいかな、と思う。〇〇君は納得いかんと思う。〇〇君以外でも納得いかんと思う。]と智香子は言って、恭教は、[弁護士と相談して、金岡(繁裕)先生はそのほうがええと言うことで、それでオッケーにしたけど、それは一円でも払う気はある。たしかに。ちょっとずつ]と賠償金についても答えました。

もし仮に、私が、父・恭教・智香子・祖母、彼ら1人でも殺めたら、残った3人は私に対してどうするのでしょうかとも考えてしまいました。叔父や叔母の時のように、すぐに弁護士を付けて黙秘させ、一切をなかったことにするのだろうか、と。それとも、私に対して正当な罪を受けるように促すのだろうか、と。

前者なら、そこまで自分の弟たち、つまり身内が大事なのだから、身内が殺されたとなれば、当然なかったことになどできないでしょう。それが例え、身内の私が犯した罪であろうとも。

後者なら、なぜ彼らが罪を犯した時、正当な罰を受けるように促さなかったのか。罪を犯した者たちが身内で、被害を受けた者が身内ではないから、事実を「なかったこと」にしたのでしょうか。この疑問の答えを、私は未だ見つけられていません。ですが、ただ1つ確かなことは、彼らがどちらの選択肢を選んだとしても、己自身と身内の保身しか考えていないということです。

藤井 奪った相手の命というものをどう考えるかということだと思います。あなたのように己を問い詰めて考える人もいれば、ぼくもたくさんの加害者を取材してきましたが、利己主義的で何も考えない人が大半でした。その親族はいかに罰を軽くするのかしか考えない。被害者や遺族が何を思っているのかもとくに知ろうともしない。ただ「怒っている」という認識しかない。じつはぼくも亡くなった叔父から━ぼくがこういった事件に詳しいということで━交通事件で相手の命を奪ったケースのことを相談されたことがあります。叔父が教えていた大学のスポーツ部の学生が加害者でした。叔父はぼくに「何年だと思う?」と一言目に聞いてきた。相手の被害者のことを考えないで、まず教え子の量刑を予想しろと。そして軽くするために弁護士を紹介しろと。愕然としました。その叔父とはもともと疎遠気味だったのですが、それで完全に人間として見損ない、縁を切ったつもりです。

親族 智香子は賠償金の支払いについてさらに、[わるいけど、いまのおっちゃんとおばちゃんの立場ではな・・・すぐに全額というのはムリなんや。]、と言い、恭教は、[(賠償金を)返さんとかいとったやろ。弁護士からも、それはなくて、すこしずつでもいいから返していく。いっぺんは無理やけど。それはウソいわん。]と言っていました。9千万近い賠償金ですから、一度に全額は無理にしても、少しずつ返済をしていくなんて答えは信じられないですね。

藤井 信じられませんね。代理人弁護士からの書面は今後も払う予定はないと明記してありました。払う気持ちがあるのなら、その時点で弁護士にそう伝え、支払い予定について弁護士同士で交渉していくのが筋でしょう。すくなくともその意思を伝えることはできたはずです。

■漫画喫茶のアルバイト店員がやったことを全部、俺らのことにされて■

親族 智香子は、[〇〇君はわかってくれないかもしれないけど。なろうと思ってこうなったわけじゃないんや。]と言い、恭教は、[何言ってもわかってくれないと思うけど。なろうと思ってこうなったわけじゃないんや。]と弁解をしていました。

藤井さんの「潮」の連載が単行本になった『黙秘の壁』をすべてを読んでいたかどうかはわかりませんが、部分的には目を通しているようでした。[でたらめ。むっちゃくちゃなこと、書かれとるんやわ。漫画喫茶のアルバイト店員がやったことを全部、俺らのことにされて、そんなの俺らが悪いからいちいち弁解したって、おれらが悪いからできひんし。]と恭教は言っていました。

智香子も、[おばちゃんからしたら、弁解したいことはいろいろある。それは黙っておくのがいいですよ、と弁護士の先生が言った]と言っていました。

藤井 アルバイト店員のせいにしているけれど、加藤麻子さんへの虐待的な行為は認めていたのですね。それは自分はやっていないと。黙秘をしていながら勝手なことを言っている。

親族 遺棄現場には月に一回は行っているとも言っていました。加藤さんのご自宅の近くにも二回行ったとも言っていたのは驚きました。[相手は、黙秘しとるから憎いと思うけどな、影ではひとつひとつ、やっていくことは・・・。]と。出所したあとは毎月、自分たちが加藤さんの死体を埋めた場所に行ったと言うのです。これも信じることなどできません。私は藤井さんといっしょに現場にお参りにいきましたが、遠方からしょっちゅう行ける場所ではありません。[できることはしたいとそれはもう。]と恭教は念を押すように言って、智香子は[できることは数しれてるけどな。]とも言っていました。たぶん賠償はする気はないでしょう。私の手前、反省しているふりをしているだけだと思いました。

藤井 遺棄現場に行っているというならば、その証拠なりはあるのでしょうか。日付入りの写真をとっておくとか。

親族 何も示されませんでした。智香子に、報道で、言える範囲でどこまでがほんとで、どこまでがうそなのかと聞いたところ、藤井さんの『黙秘の壁』について、[本が出とるのは知っとるけど、(内容は)小耳にはさむ程度しかしらへんのや。]という返事でした。

恭教は、[信じてくれんと思うが、おおげさに書かれとるんやわ。ほんまに。金岡先生に相談したけど、言いたいことは山ほどあるけど、そやけど、ここでしゃべったら、まあ・・・わかってくれんと思うけど。]、[報道もぜんぶ知らんし。本やって全部読んでないし。本は出たのは知っとるし、(内容は)ちらっと弁護士の先生から聞いたけど、どっからどこまでとかは、ぜんぶしらんねん。]、[店の前で(被害者の加藤麻子さんが)寝泊まりしとったとかなかったっけ?あんなもん、ぜったい、ない。おじいちゃん(位牌が目の前にあり、ここに)おるけど、うそいわん。言ったらいかんけど、アルバイトがしとったこととかも、いっしょにかかれとる。アルバイトが(麻子を)いじめとったりしたことはあったから。たしかに。そういうこともかかれとった。それはいちいち言わないし。]と、アルバイトが麻子さんをいじめていたと言うのです。

■(藤井がラーメン屋の)オープンの日に来て、気が動転してしまった■

藤井 その情報は拙著で触れましたが、インターネットにはこういった虚偽入り交じった情報が飛び交ったので、こんな情報もあるとか、さまざまな情報を「可能性」として紹介しただけで、断定などしていません。とにかくいろいろな情報が飛び交った事件でしたから。それを自分たちの口から正直に話してほしかったというのが、麻子さんのご遺族の思いです。ぼくは『黙秘の壁』では断定調で書いているのは、裁判などであきらかになったことだけです。(杉本夫妻の読み方が)いいかげんなのは仕方ないにしても、逆に末節なことは否定しても、大筋ではぼくの取材した通りということですね。

親族 恭教は、[(加藤麻子さんが) 駐車場で寝とったとか、エプロンとか、かいとったやろ。いろいろ。一部はちょっとはあったかもしれんけど、駐車場で寝さしたとか、エプロンでおかしなかっこうさせたとか、そんなもん、でたらめ。言いたかったけどな。]とも言っていました。

藤井 それもインターネット上にあふれた情報を「こんな情報も飛び交った」という文脈で書いただけで、ぼくが断定した情報としては書いていません。が、インターネットの掲示板に書き込まれた一部は[ちょっとあったかもしれんけど]、と言っているのは、ぼくが元常連客などの取材から浮かび上がってきた話と、ネットの情報と符合したところがあったのですが、部分的には当たっていたと言っているということですね。

親族 そうですね。藤井さんが当時、夫妻が働いていた、長男のラーメン店をたずねたときのことも、[急に(ラーメン屋の)オープンの日にきたんやわ。書いとったやろ。俺も動転してな、びっくりして、もう、なんていうの、弁護士呼びます言うて帰ってもらった。それ書いとったよな。]と言っていました。

智香子も、[おばちゃんだけだったらよかったかもしれないが、ラーメン屋をしきっている子ども(長男)もいたし。事件についてはこの人(藤井)がここまで来る必要はないと思っとるし、そこまで来ることは。]と言っていました。バレないと思ってたのでしょうね。かなりショックだったようです。

藤井 彼らの動揺ぶりはかなりのものでした。夫妻の居場所を調べて、そこにいるという確認が取れるまで時間がかかりました。

親族 恭教は、[本当は向こうには(謝りに)行きたいんや。お墓参りもしたいんやけど、向こうも俺らのことが憎いんや。]、[本当に心から行きたいけど、黙秘したりいろいろあったからな。]と。私は「向こうの遺族の方は、一番は、お二人の口から(本当のことを)聞きたいと思います」と言うと、智香子は[そらそうやと思う。]と言っていました。加藤麻子さんのご遺族が叔父と叔母を憎んでいるのは当たり前ですし、それを理由に何も行動を起こさないとは本末転倒しています。

藤井 弁護士の指示だとは思いますが、償いたいという手紙は出しておきながら、謝りにもし仮に行ったら、被害者遺族が何を聞いても、やはり黙秘を理由に何も話さないでしょう。ということは、永遠に謝罪はできないということです。

親族 それに、いきなりご遺族のところに行ったら、それは暴力ですよね。そんなことすら、彼らには思いも及ばないし、誰もアドバイスをする人もまわりにはいません。

藤井 これは今回のケースに限ったことではありませんが、加害者はまず被害者らが書いた本をきちんと読み、自分たちが何をしていくべきかを考えるべきなのです。ほんとうに反省しているなら、そうするべきです。

■警察とアレ(藤井)は通じてるやろ■

藤井 あなたのお話を聞いていると、今の時点では彼らは救いようがないですね。弁護士をすごく頼りにしていますが、刑は軽くしてもらったけど、償いについては何もしてくれないです。あくまで代理人ですから。ほんとうに贖罪の気持ちがあるなら、犯罪被害者や遺族について、まず学ぶことです。そして自分たちで最善の方法を考えることです。

親族 だから、[こんな本に(『黙秘の壁』)嘘書かれようが、そこも黙秘する。それが、おばちゃんらの権利なんや。嘘書かれても弁解しない、それが黙秘なんや。自分たちの都合のいいことだけ弁解するわけにはいかんのや。]とも智香子は言いました。私が「どこが嘘かも言えないですか?」と聞いても、[うん、それも、黙秘や。]と。

藤井 自分たちを不利な状況から防衛する黙秘とはそういうものですからね。

親族 恭教は、[警察とあれ(おそらく、藤井のこと)は通じてるやろ?だから、そんなんから情報入れて、もう、な。それと、あれや、テレビ局やらが漫画喫茶に行って、従業員一人一人に聞いてたやろ?いろいろな。だから、信じてくれん。言い訳にしか聞こえん、と思う。]と言っていましたね。でも、藤井さんの本を読めばわかりますが、警察からいっさい取材を拒否されているし、事件を担当した警察官も加藤麻子さんの遺族に対してすら、断片的な情報しか話していないことがわかります。まあ、彼らに本を読む能力があるとは思えませんが。

藤井 事件当時の情報番組の報道等と拙著を混同していますね。ひどいものです。

親族 智香子は、[細かいことは喋らんけど。おっちゃんもおばちゃんも、そうなろうと思ってそうなったんやない。]と加藤麻子さんの命を奪って、山の中にに埋めたことは自分の意思ではなかったことを繰り返していました。恭教も私に何もしゃべらない理由について、[細かいことは喋れんけど、殺人やらな、傷害致死とかなったり。]と、やはり起訴される可能性を考えているようでした。しかし、一方で、[まあ、自分がやったことやからおかしいけど。ほんまに、おっちゃんやおばちゃんは悪いと思ってんねや。ほんまにもう、心からな。せやけど、こういう本があるから、あいつら謝る気ないわ、と思われてるんや。だから、謝りにも行けないし。]と恭教は、藤井さんのせいにしていましたね。責任転嫁もはなはだしいです。

藤井 夫妻がまったく反省していないことだけはよくわかりました。自分たちが命を奪った加藤麻子さんや遺族のことを何も考えていないのでしょうね。刑務所での)矯正は見事に失敗ですが、本当は人の命を奪ったのに、法をうまく使って死体遺棄の刑事責任しか問われなかったのはラッキーぐらいにしか思っていなのでしょうか。今回はありがとうございました。

(以上・この「『黙秘の壁』アフター」シリーズはまだ続きます)

付記・一連の犯罪加害者親族である青年の手記と、私との対話を当ページで発表すると、数十万人の方に読みにきていただいた。心から感謝申し上げるとともに、次の報告をしなくてはならない。私(藤井誠二)は加害者親族の青年の手記を掲載したが、当初は実名による告発であった。彼の父親についても実名で書かれていた。しかし、ほどなくして青年の父親の代理人弁護士から、「父親のプライバシー権・名誉権を侵害している箇所がある」と「通知文」が送られてきた。青年と検討した結果、当ページから該当されると指摘を受けた箇所については手直し等を施すことにした。御了承願いたい。