【連載】17歳の殺人者 第58回 最終回 被害者のことを思わない日はない

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被害者のことを思わない日はない

被害者のことを思わない日はない。いつも脳裏の真ん中あたりに重くのしかかるように、被害者の言葉と表情がよみがえる。

「"わたしはいつ帰れるの?"と聞いた時の被害者の方の口調と顔が……忘れられないです。それに、彼女は物凄い暴力を受けていましたんで、そういった時の側面もいまだに忘れられないです。この八年間片時も忘れていないです。忘れたことは一度もないです。忘れてはいけないことですし、忘れようと思っても忘れられないことだと思います。毎日仕事をしていて、不意に思い出す時もあります。やっぱりドラマなんかで似たようなシーンを見たりすると、自分にとって彼女の言葉の響きは衝撃的なことだったので、瞬時に昔に引き戻されます。あと、似たような事件が起きた時とか、若い人の犯罪を聞いた時も思い出します。思い出すことは……変な言い方ですが、思い出すということは悪いことではないと思います。それによって僕の原点に戻ることができて、自分が頑張って生きなければいけないと思うことができますから。もちろん、それは苦しいことですが、自分がしてきたことの苦しみだし、被害者の方はそれに比べられない苦しみを味わっているわけですから、それに比べたら大したことないと思うのです」

カズキは現在、事件当時の友人や知人とは一切連絡を絶っている。親とも絶縁に近い状態だ。住んでいた街に立ち寄ることもしない。そうでなくとも、忌まわしい自身の過去はカズキを解放しない。

(初出『創』一九九八年七~八月号に加筆)

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