【連載】17歳の殺人者 第54回 警察に駆け込もうかとも思ったが

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警察に駆け込もうかとも思ったが

三度目に行ったときはどんな状況だったのだろうか。

「彼女が逃げないように見張りを頼まれたんですけど、二度目に行ってから一週間か一週間ちょっとくらいあとで八九年十二月中旬だったと思います。A君の命令でした。その時は、A君が上(暴力団)からの命令で色々とさせられていたという形でした。三度目に行ったときは部屋にD君と彼女がいました。D君は同じ部屋で見張りをしていました。被害者の女性は二回目に行ったときとうってかわって元気がなくて、その時、初めて個人で会話らしい会話をしたんですけど、被害者の女性の方から"わたしはいつになったら帰れるの?解放してもらえるの?"と聞かれまして、僕もそれに対してどう答えていいものか、まして答えられたにしても答えていいものか、困りました。僕は"A君に命令されてやっていることなので、僕には分からない"という答え方をしたんですけど、被害者の方はかなり気が滅入っていたみたいで――半月も部屋に閉じこめられているという、状況が状況なのでそれは当たり前のことなんですけど――日に日に疲れが増している感じでした。部屋はもともと全部閉め切って、物が乱雑としているような状態は変化がなかったのですが、被害者の女性の体格や体型はやつれてきていました。食べる物もいちおう出していたみたいですけど、口にしていなかった.みたいです。彼女は、いつも敷きっぱなしの布団の中に座っていたり、横になっていたりしていました。そういう女性を見て、まず一番最初に率直に思ったのは、こんな状態をいつまでも続けられるわけはないんで、いつになったら(A君たちが)彼女を解放するのかということでした。僕は、最初にいっしょにC君の家に行った友達と警察に駆け込むかという話までして悩んだんですけど、結局お互い最終的に出てくる言葉は、そんなことしたらダダじゃすまない、自分たちが今度は同じ目に会う、と。そんな恐怖の方が大きくて、結局はなにもせずズルズルと関わっていったんです。警察に通報したことがバレたら、A君に殺されるかもしれないと思った。逆にそれでも一緒にいたのは自分にとって都合のよい部分があったんだと思います。一緒にいれば怖いものはない。そういう気持ちもあって、一緒にいたと思います」

一九八八年十二月末、女子高校生を監禁してから一カ月以上が経過していた。その頃カズキはAらと距離を置こうとしていたのだが、再度呼び出されている。なによりカズキは、「監禁」に少なからず自分が関与してしまっていることに恐れをなしてしまっていた。

「僕が距離を置こうとしていることを、彼らは気に入らないみたいで、僕の職場まで電話してきたりとか、嫌がらせの電話を家にまでしてきて、とにかく一度来いと言われて、それで行ったんです。その時はB君、C君、D君がいました。被害者の女性は三回目に行った時と比べて、傷が増えていました。B君が女性と揉めているような感じで、なにか彼女に問い詰めていたのを覚えています。詳しい内容まで覚えていませんが、彼女がなにか言ったことが気に障ったようで、彼女を手で殴ったり、蹴ったりしていました。横で見ているのが本当に辛いくらい、暴行を加えていました。彼女は泣きながら謝っていました。僕はこのままこの人たちと関わっていたら、とんでもないことになってしまうという――自分本位な考え方なんですけど――頭が先でしたが、その時も彼女に暴行を加えるように命令されましたが、僕は嫌で最後まで拒絶していました。するとそれが気にいらないみたいで、今度は僕の方に矛先が向きかけたんですけど、その日はそれ以上のことはなくて家に戻りました」

以来、カズキはCの家に立ち入っていない。実家からも離れた。

「A君から逃げたいという気持ちが先だったので、家も離れて住み込みで仕事を見つけて、ちょっと離れた所に住んでいました。その間も被害者の方のことは気になっていたんですけど、友達からの連絡で彼女を帰したということを聞いて――自分の目で見て、確信したわけじゃないんですけど――半分安心していました。それとは逆に、あの状態で本当に帰せたのかなという疑問は半分ありましたが……。友達からその連絡があった時、僕のことをA君たちが血眼になって探している。気をつけろという警告めいたことも言っていました。いつ(A君たちが)来るんじゃないかと恐怖心がよりいっそう大きくなりました」

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