【連載】17歳の殺人者 第53回 二十五歳になった加害少年

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二十五歳になった加害少年

事件から九年。カズキは二十五歳になり、関東近郊の都市で新聞配達員として働いていた。一昨年(一九九六年)、結婚もした。

私は数年ぶりにカズキに会った。以前のような、おどおどした表情は消え、言葉遣いにも淀みがなくなっていた。彼は独白をするように、事件や自分が受けた処遇、自身の心境について語り続けた。前章の証言と重複するが、一○年近い歳月を経て、カズキの言葉がどう変化したのかを知っていただく上であえて掲載する。

「(被害者が拉致された)当日、A君から、"面白いものを見せてやるから来い"と誘いがありました。自分としては、あまり行きたくはなかったんで、断りたかったんですけど、断ると怖い印象がA君には強かったので、その時はしぶしぶ行く形になりました。C君の家に来いということだったんで行ったら、被害者の方がいて、その時は状況を把握できなかったので、誰かの友達か彼女がいるのかなという印象を受けました。初めのうちは、みんなでワイワイ話をしていたんですけど、そのとき僕が感じた印象はその女性の方の態度が、普通とは違ったので、おかしいなという印象があったんですけど――なにせどういう状況か聞かされてなかったものですから――それで時間が経つにつれて、A君とかに危害を加えるようなことを命令されるようになりました。やりたくはないんですけど、自分はA君に対して絶対的恐怖というのがありましたので逆らえず、初めはシンナーなんかをやって、ラりったふりをして、彼女に近づいて行ったりとかしてました。最初は直接的になにをするつもりもなかったんですけど、最終的には、彼女を押し倒せとかいうような命令をされ、最後の最後まで拒絶をしたんですけど、今度はB君が怒り出しまして、早くやれと急かされまして、嫌々彼女を押し倒して危害を加えたんです。危害というのは、性行為をするということです。被害者の方は最初は物凄く抵抗していました。ただ、やっぱり恐怖心がかなりあったと思いますんで、最後のほうは放心状態でした」

その場には、A、B、C、Dと、カズキといっしょに呼びつけられたヒロがいた。被害者を強姦した時、カズキはどんな心境だったのだろうか。

「彼女は放心状態で、初めのうちは抵抗していたんですけど、最後のほうは目も虚ろで、やっぱりちょっとおかしかったです。その時は、自分はひどいことをしてしまったなという感覚でした。それはもう、常にやっている最中にそれは感じましたので、できればもう(その場に)近づきたくないと思っていましたが、すべてにおいて命令されたことに逆らうと報復が待っていて、彼女にしているのと同じ行為を今度、A君たちから自分が受けることになります。要するに、自分に対する責任逃れみたいなところはあったと思います」

カズキが二度目にCの家に行ったのはそれから一週間くらいあとのことである。

「最初の日、そういう行為があったあと僕は帰ってしまったので、その後のことは分からないんです。二度目の時は、前回とは比べものにならないくらいに彼女がB君とかと打ち解けていまして――僕にそういうふうに見えただけかもしれないですけど――話をしたり、煙草を吸ったりしていたので、こういう言い方はおかしいんですけど、妙に安心感があったんです。その時はちょうど五分くらいいた程度だったんで、ちょっと(被害者を)見かけただけで、それ以上のことは分からないです。部屋にはB君、C君、D君。A君はいませんでした。僕は被害者の女性とは会話をしませんでした。被害者の女性に対しては、前回の件でどういう状況に置かれているかはある程度判断できたんで、不思議には思いました。彼女は無理矢理だまされて連れて来られたわけで、半ば監禁状態に置かれているはずです。そんな状況下に置かれているのに……。無理して(わざと打ち解けたふうに)やっていたのかもしれません」

被害者の女性は一週間、ずっとその部屋に監禁されていたことになる。それはカズキにも容易に理解することができた。

「どうしてそれが分かったかというと、やっぱり着ているものも変わっていないですし、あと病とかが増えていました。殴られたりした痕が増えていたので、状況的に見てそのままに置かれていることを察知しました。最初に連れてこられた時から続けて暴力を受けていたということだと思いました。逆にそれが彼女をああ(わざと打ち解けたふうに)させたのかもしれません。結局逆らっても危害を加えられるだけなんで、その場の流れに合わせて。僕はそう受け取りました」

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