【連載】17歳の殺人者 第45回 夏の太陽の下の判決

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夏の太陽の下の判決

東京地方裁判所刑事第四部四一九号法廷。

初公判からおよそ一年が経った一九九○年七月十九日、A、B、C、Dの四少年に判決が言い渡された。論告求刑から二カ月。この日、夏の太陽が照りつけるなか六○○人以上の人が傍聴券を求めて長い行列をつくった。CとDの弁護人は両名を家裁へ再送致することを裁判所に求めていたが、それはかなうはずもなかった。成人と同様に刑事裁判で裁かれる要素を十二分に満たしていたからである。弁護人のCとDの人格的未熟への指摘は的を射ていると私は思いつつもやはり被害者に対しておこなった行為を考えるとき、せいぜい二年程度で社会復帰する少年院が妥当かどうか、疑問は最後までつきまとっていた。

〔主文。被告人Aを懲役十七年に、被告人Bを懲役五年以上十年以下に、被告人Cを懲役四年以上六年以下に、被告人Dを懲役三年以上四年以下に、それぞれ処する〕

横一列に並んで起立した少年たちの頭はきれいに刈り上げられていた。向かって左側から裁判長を食い入るように見つめるAと、肩を落とし、うつむいているB、C、D。この構図はこの一年というあいだまったく変わらなかった。

主文の読み上げは続く。

〔当時高校三年生として、就職も決まり夢ふくらませていた被害者は、何の落ち度もないのに、アルバイトからの帰宅途中、被告人らによって拉致され、それまでの生活とは打って変わった屈辱的な扱いを受け、四十日間にわたる期間、孤立無援の状態のまま、繰り返し陰湿・過激ないじめを受け、監禁の後半には、精神的にも、肉体的にも衰弱の度合いを深め、最後には常識では考えられないような仕打ちまで受け入れざるをえず、助けを求めるすべもないまま、あえなく絶命し、揚げ句はコンクリート詰めにされて捨てられるなど、当時の同女の置かれた状況を考えれば、その身体的苦痛・苦悶並びに被告人らへの恨みの深さはいかばかりのものであったか、誠にこれを表現する言葉さえないくらいである〕

判決理由の朗読が約一時間にわたってつづいたあと、裁判長は少年四人を再び起立させた、

「被告人、立ちなさい」

そして、一人ひとりの顔を見ながら、諭すように語りかけた。

「判決は以上の通りですが、事件を各自の一生の宿題として考え続けてください」

その言葉を最後に閉廷。退廷のとき、四人の少年のうちAだけが傍聴席をふり返った。

〔付記〕一審判決を不服とした検察側は控訴、一九九一年七月十二日に第二審判決(東京高裁)が下っている。Aは懲役二○年、Cは懲役五年以上九年以下。Dは同五年以上七年以下と、より重い刑が科せられた。Bについては控訴棄却。

よって、A、B、Cの三少年については量刑が確定。Dについては最高裁に上告していたが、一九九二年七月十七日に棄却、刑が確定した。

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