【連載】17歳の殺人者 第33回 5.少年Bの告白 少年Bとの面会

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5.少年Bの告白 少年Bとの面会

東武伊勢崎線の小菅駅のホームに降り立つと、すぐ東側にコンクリートの塀で囲まれた建物が目に入る。早春の日差しがまばゆい朝なのに、いろあせたコンクリートで覆われているせいか、その建物だけがしずんで見える。

東京拘置所。

加害者の少年たちが住んでいた綾瀬とは目と鼻の先である。距離にしたら、二~三キロしか離れていない。

一九九○年四月。私は東京拘置所にBをたずねた。Bは監禁・強姦殺人事件で逮捕された四人の少年のうちの一人で、準主犯格である。

受付で面会表に自分の名前と住所を書きこむ。しかし、面会相手との関係を書く欄にはどれも該当するものがない。「友人」という項があったが、初対面なので、「その他」にマルをつけた。メモを取ることは許されたが、事件に関する取材は禁止です、と担当官に注意を受け、その旨を誓約させられた。

二○分も待っただろうか。面会室に通され席につくと、すぐに透明の間仕切りをはさんで向こう側の鉄のドアが開き、坊主あたまで背が高く、肩幅の広い、がっちりとした体格の少年が看守といっしょにはいってきた。

「こんにちは、はじめまして」と私が言うと、かれも「あ、どうも、こんにちは」と言って席についた。

数日前に私が書いた本をBに差し入れておいた。

「本、読んでくれた?」

「はい、読みました」

「どうだった?」

「おもしろかったです」

差し入れた本は、「ザ・ブルーハーツ」というロッグバンドをめぐって、数人の作家やライターが自分の思いを書いた『僕の話を聞いてくれ』という題名で、私も末席ながら執筆者のひとりとして参加させてもらっていた。

かれは私が書いた文章に共感を覚えたから、きょう、会う気になりました、というような意味のことを言った。とくに、私が自分の中学生のころを語っているくだりだと言う。当時は「校内暴力」が毎日のように新聞の社会面をにぎわしていて、どうして生徒が教師に手をあげるのか、そのわけを体験的に書いた部分だ。

「それは、どうもありがとう。ブルーハーッは聴いたことあるの?」

「一曲だけならあるんですが……」

テープを差し入れようとしたが、看守が禁止です、ととっさに横やりを入れる。だったら、歌詞カードのコピーを送るよ、と約束した。

「ケンジ君に会いましたよ。このあいだ、いっしょに晩飯を食べた」

ケンジ(仮名・十七歳)はBと中学時代の同級生で、かれらは一時期は四六時中いっしょにいたほど仲がよかった。

「ケンジは、いまなにしてるんですか」

「高校中退して、警備員のバイトしてる」

「へえ、そうですか」とBはなつかしそうに微笑んだ。

「あいつは、ぼくがいちばん楽しかったころの友だちです」

緊張のせいか、なにをどんな順番で話したのかは忘れてしまった。とりとめのない話をしているうちに、「時間です」と言われた。面会は十分間で終わりだという。最後にあわてて、「この事件を一方的に結論を出すんじゃなくて、ぼくなりの見方で書いてみようと思っている」と私はつけ加えた。そして、会ってくれたことにお礼を言って、手紙をだすことを告げた。Bは「返事を書きます」と頷いた。

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