【連載】17歳の殺人者 第23回 父親からすりこまれた理不尽な暴力の芽

目次へ

父親からすりこまれた理不尽な暴力の芽

Cの家では小学校低学年のころから、子どもに家事の役割分担を課していた。Cの役目は朝おきたら雨戸を開けることと、階段ふきだった。それを怠けると父親は体罰を加えた。息子が逃げまわると追いかけ、つかまえて殴った。

病院事務職員の父親の帰宅は早くて午後一○時。子どもたちが寝ついた深夜になることもざらだった。毎日のように酒を飲んで帰ってくる。Cが母親に手をあげはじめた小学校五年生のころになると、帰宅後、母親からその日の報告を聞き、寝ているCを起こして顔を平手打ちにした。ときには壁に頭を押しつけたり、罰として深夜に近くの公園を走らせることもあった。

が、その暴力もCが中学にはいるころにやめた。「力で屈伏させるのはよくない」と教育害などを読んで知ったからである。なんのまえぶれも説明もない一八○度の転換だった。

弁護人:お父さんに初めて暴力を振るったのはいつのことですか。

「中学二年生ぐらいだったと思うのです」

弁護人:どんなことがきっかけですか。

「きっかけは、お母さんと口げんかみたいなのをしていて、その間にお父さんが口出しするというか、なんかお母さんの味方をするように見えたので、"そういうふうに割り込まないでくれ"と言って殴りました」

弁護人:君はお父さんのこと、怖かったと思うのだけど、殴るとき、怖くなかった。

「そのころは、お父さんは暴力はいけないと言っていたので、殴り返してこないだろうというのもありました」

弁護人:昔ね、お父さんは君に体罰していたのだけど、そのこと(いまはしなくなったこと)について、君はお父さんに文句を言ったことがありますか。

「あります」

弁護人:なんと言ったの。

「小さいころは殴ったくせに、今になってなんかそんなこと言うなっていうか……」

父親は「悪かった」と謝り、教育方針の転換を告げた。そのときCは「わかった」と口にはしたが、父親の「暴力はいけない」という意味は理解できないでいた。父親からすりこまれた理不尽な暴力の芽はCの奥深くに宿っていた。

目次へ

電子書籍で本書の購入を希望の方はこちら