【連載】17歳の殺人者 第14回 「離婚しないでください」

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「離婚しないでください」

小柄だが、肩や背中の筋肉が盛り上がっているせいだろう、主犯格Aの後ろ姿には威圧感がある。そして、多弁である。

弁護人や検察官の質問にはきはきと答え、意味のわからない部分があったら聞き返す。八九年十一月二七日の第七回公判でAは初めて被告人席についた。

弁護人:まずこの事件で、君がいちばん最初にこの法廷で言いたいことはどういうことですか。

「命というのは言葉でなんか表せないほど尊いもので、なんかそれを奪っちゃって、本当になんか申し訳ないという、なんか言葉でも表せられない、なんかわびるという言葉で、ごめんなさいとかすみませんでしたとかじやなくて、なんかそういうわびる言葉はないというか、それぐらいなんかすまないことをしたと思う」

弁護人:君はいま、拘置所の中で、おわびの気持ちでどういうことをしてますか。

「朝起きたらすぐと、あと寝る前は、弁護士の先生からもらった数珠を手にして祈ったり、冥福を祈って、あとは写経をやっています」

弁護人:君は、この事件を最初に鑑別所で自白しましたね。

「はい」

弁護人:その日、たまたまご両親とか私とかに面接がありましたね。

「はい」

弁護人:そのときに、ご両親にあなたが言ったことは、どんなことでしたか。

「離婚しないでください」

弁護人:どうしてなの。

「いままででも、なんか自分が事件を起こすと離婚するとかしないとか、そういう話があったので、こういう大きい事件になっちゃうと、もう離婚するのじゃないかなという……」

両親の離婚を心配する言葉がAの口から出たことが、私には意外でならなかった。

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