【連載】17歳の殺人者 第4回 あの人にはかかわらないほうがいい……

目次へ

あの人にはかかわらないほうがいい……

「てめえ、待てっ!」

道路をスクーターで疾走していたカズキの前方にあるコンビニエンスストアの前で、Aが暴れているのが見えた。逃げようとする男の胸ぐらをつかみ上げ、男が乗っていた自転車を蹴飛ばしたかと思うや、路上に落ちていた空のガラスビンを拾い上げ、アスファルトに叩きつけた。男は完全に戦意を喪失している。荒れ狂うAの横には恋人のDの姉(一八歳)が立ちつくしていた。

カズキはその前日泊まった友だちの家から、同級生のヒロ(仮名・一六歳)とスクーターに二人乗りして綾瀬にやってきたところだった。ヒロはカズキの同級生で、やはり事件に関与、逮捕された後、家裁で特別少年院送致になった少年である。

時刻は午後五時をまわったところだった。興奮したAがカズキに命令した。

「てめえらも(ケンカを)手伝え」

「どうしたんですか?」

その男が一方的にAにぶつかってきた、というのがAの言い分だった。困りはてたDの姉がカズキに「(Aを)止めてよ」と頼んできた。

「センパイ、もうかんべんしてやってください」

カズキがAに頼むと、Aはすでに路上に倒れこんでいる相手の男に急に興味を失ったのか、とつぜん暴力を止め、カズキとヒロにこう声をかけた。

「おまえら、今日ヒマか?」

「はあ……ヒマですけど」

「じゃあ、夜になったらCの家に来い、いいもん見せてやる」

どうせなにかの用でAにこきつかわれることはわかりきっていた。あの人はヤバい人なので、なにをしでかすかわからない。かかわらないほうがいい……。カズキはそう自分に言いきかせた。

「ムリ……ですよ」

「なんでだよ?」

「……」

「どちらか一人でいい。俺を迎えに夜十一時ぐらいに来いよ。じゃあ、カズキだ」

そうAはカズキを指名すると、そのままどこかへDの姉と行ってしまった。カズキが困りきって、口をもごもごさせていたのがまずかった。

「どうする?」

と困りはてたカズキは、二人乗りをしてきた相棒の顔を見た。

「行かないほうがいいよ」

とヒロ。

「でもヤバいよ。絶対に来いって言ってたんだから……」

カズキはいったん家に帰り、布団に入り寝たふりをした。目をつむってからも、行くべきか、無視するべきか、迷った。しかし、けっきょく夜中になって親が寝静まったのを確認してから家を抜け出し、Cの家に行くことになる。行かなかったら、あとでAになにをされるかわからない。Aの恐怖に負けたのだ。

カズキがAの自宅に行き、玄関の外から名前を呼ぶと、Aが二階から降りてきた。

「いいもん見せてやるから、行こうぜ」

Cの家の前に着くと、Aが合図をした。すぐに二階からCが顔を出した。家の正面に立っている電柱をよじ登り、二階のベランダの手すりに足をかけ乗り移った。ベランダに面しているCの自室には、B、C、Dがいた。ヒロもすでにその座にまじっていた。

若い女性がいるではないか。

「あれ?」

知らない顔にカズキは驚いた。

黒いスカートをはいて、何日か前にカズキとAらが近所の洋服店で盗んだ縞模様の長袖Tシャツを着ている。

「友だちだ」

Cが言った。

二~三人分の布団がしきっぱなしだった。彼女はその上に腰をおろしていて、Aたちはその周りを囲むように座っていた。

カズキは彼女の表情を見てとっさに、「おかしい」と思った。Cは「友だちだ」と紹介したが、ちがうんじゃないか。なぜなら、女性がこちらを警戒しているような目つきだったからである。

女性を入れた七人はしばらく音楽を聴いたり、とりとめのない会話をしていたが、カズキはそのうちに眠くなってしまい、部屋のすみでごろっと横になり、浅い眠りにおちた。

目次へ

電子書籍で本書の購入を希望の方はこちら