『アクタージュ act-age』連載終了報道で、書影など作画担当の「作品」を使うのは適切でない

漫画家にとって、書影などは代えがたい「顔」だ。(写真:アフロ)

 『週刊少年ジャンプ』で連載していた『アクタージュ act-age』の原作者のマツキタツヤ氏が帰宅途中の女子中学生の胸を触ったとして強制わいせつ容疑で逮捕された。報道によると、容疑を認めているという。

 

 これを受けて、『週刊少年ジャンプ』編集部は『アクタージュ act-age』の連載を2020年8月11日発売号の掲載をもって連載を終了すると発表した。

 

 

 マツキ氏と作画を担当している宇佐崎しろ氏は、マツキ氏が2017年の原作者を対象とした新人漫画賞『ストキンPro』に『阿佐ヶ谷芸術高校映像科へようこそ』を応募し、準キングを受賞。作画に宇佐崎氏を指名したという経緯を持つ。それだけに、『ジャンプ』編集部の発表でも読者へのお詫びに加えて、次のように宇佐崎氏を慮る言葉を入れている。

 

編集部はもとより、宇佐崎先生は断腸の思いをなさっていますが、

先生をサポートし、また作品を作っていけるよう励んでまいります。

出典:『週刊少年ジャンプ』編集部『アクタージュ act-age』連載終了に関するお知らせ

 

 もちろん被害に遭った女性が一番ケアが必要なことは議論の余地がないが、宇佐崎氏についても本人が何の落ち度もないにもかかわらず、『アクタージュ act-age』が既刊12巻・123話で打ち切りになってしまった。本作はファンよりアニメ化を望む声が高く、2022年には舞台化が決定し、一般公募のオーディションがはじまった矢先だった。それだけに『ジャンプ』編集部も宇佐崎氏も可能性が潰えてしまった痛手は想像以上のことだろう。

 

 さて、この連載終了のニュースは、各メディアが報じている。ここで筆者が気になったのは、一連の報道で『アクタージュ act-age』の表紙やサイトをサムネイル画像に採用しているメディアが散見されたことだ。

 例えば『ねとらぼ』は、記事で公式サイトの画像を使用しており(参照)、この記事がYahoo!ニューストピックスにも掲載された(参照)。また、『ORICON NEWS』の記事では『アクタージュ act-age』第1巻の書影を使用(参照)。こちらはTwitterトレンドのトップ画像に使われている(参照)。

 各メディア編集部やプラットフォーム、SNS運営側に他意はないかもしれない。だが、一枚絵という漫画家にとっては顔というべき「作品」を、原作者の犯罪逮捕ということで打ち切りになったことを報じる上で使うということは、宇佐崎氏に対して配慮が欠けていると言わざるを得ない。

 

 近年のニュースメディアでは、タイトルや本文よりもトップ画像によって閲覧数が上下するようになって久しい。他メディアと同じネタの内容を出して、画像の違いによってアクセス数が違ってくることは、ネットメディアの編集者としては天地の差のように感じられることがある。それはYouTubeなどでも同じで、サムネイル画像によって再生されるかどうか判断される。つまり、ネットのコンテンツで最も重要なのはトップに掲載される画像ということになる。

 特に無料閲覧・広告収入がビジネスモデルのネットメディアにとって、アクセス数を稼ぐために、どの画像を選ぶのかは本文以上に生命線になっている。その観点で言えば、今回の件で宇佐崎氏の「絵」を使いたくなる気持ちも分かる。だが、「絵」を描いた本人ではなく、別の関係者の犯罪が絡んでいる内容の記事に使うことは不適切なのではないだろうか。

 

 折しも、リアリティーショーに出演していた女性プロレスラーや、若手実力派俳優が亡くなったことにより、「自殺事例のメディア報道のあり方」が問われている。世界保健機関(WHO)の『メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き』(参照)では、「やってはいけないこと」として「センセーショナルな見出しを使わないこと」などに加えて「写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと」を求めている。これに関しては、特に週刊誌やスポーツ紙のネット版で守られていないケースが目立っている。

 

 今回の宇佐崎氏のケースでも似たようなことが言える。本人に落ち度がないにもかかわらず名誉に関わるような発信をメディアがすることは慎むべきだろう。筆者もネットメディアの末席に身を連ねる者として、一層の注意を払わなければならないと感じている。