新型コロナで一変した就職氷河期支援 サバイバルしてきた「経験」が認められない呪縛を逃れるには?

就職・転職で氷河期世代は屈辱感に苛まれてきた。(写真:アフロ)

 『就職氷河期世代支援プログラム』を政府が発表してからまもなく1年が経つ。3年間で計650億円超の予算を計上し、「正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者」「就業を希望しながら様々な事情により求職活動をしていない長期無業者」「社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする者など」の約100万人を対象に就労支援などをするという計画だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により状況は大きく変わった。

 

 東京新聞の記事によると、就職氷河期世代を採用する予定がないとした主要企業は102社中90社(約88%)に及んだという。

 

 氷河期採用 9割弱予定なし 「キャリア重ねた人優先」政府要請広がらず(TOKYO Web)

 

 採用を予定していない理由としては、「正社員経験などキャリアを重ねた人の中途採用を優先」が42社、「その世代の中途採用枠を設けていない」が8社、「既存社員との処遇バランスが難しい」が2社となっており、「中途採用は即戦力を重視」という言葉に代弁されているように、これまで就職氷河期世代が転職または就労しようとした際に壁になっていた採用側の意識が見事に並んでいる。

 もともと、政府の支援策により就職氷河期世代の採用に積極的だったのは、タクシー運転手、自動車整備士、施工業者、倉庫内軽作業、介護職、ルートセールスといった業種で、今回の記事の調査の対象である上場企業のような安定した給与体系を得られる募集はほぼなかった。一部の企業では40代までリストラの対象として早期退職を募集していたくらいだから、今更ロスジェネ世代の採用を「予定していない」ということに驚きはないが、「やっぱりか」という落胆を覚える人も多いのではないだろうか。

 

 ところで、この世代は偏差値至上主義の詰め込み教育を受けて、就活時には少ないイスの取り合いをしてきて、常に競争に晒されてきたため、性別や社会的立場、個々人の経験の差が大きくて分断されているという話は以前に書いた。

 

 「明確な定義がない」「同世代でも全てが敵」 就職氷河期世代が「分断」されている理由

 

 また、この世代からはサイバーエージェントグループの藤田晋氏(1974年生まれ)やZOZO創業者の前澤友作氏(1975年生まれ)など、IT企業を創業した成功者を多数生み出した。そして、彼らは総じて同世代に冷淡に見える。堀江貴文氏(1972年生まれ)がテレビ番組で失業者に「本人たちに原因がある」と述べたのはその典型だろう。

 今回も「同世代も含めて、周囲ぜんぶが敵」といった状況が垣間見える。あるツイートで「同世代に向けて言いたいのは甘えてんじゃねえよ、ということ」といい、それを引用する形で「真の天敵は就職・起業に成功した同世代」という声が見られた。

 

 もうひとつ、この世代は「キャリアを積む機会が失われていた」人が多かったのは確かだが、何もその間に「経験」を積み上げられなかったわけではない、ということについて、企業・団体の採用担当が見過ごしているように感じられる。このことに怨嗟に近い念を抱いている人は多数おり、以下のツイートがその典型だろう。

 

 

 個人的には、コンビニエンスストアで多岐に渡る業務、特に発注管理をできる自信はないし、介護職でひとりひとりの入所者に向き合う自信もない。どんな「軽作業」にも書類仕事はつきもので、細かな条項をミスなくチェックする粘り強さも欠けている。逆に言えば、派遣・アルバイトで転職を繰り返してきている就職氷河期世代は、数々の業務を経験しており、今からスペシャリストになるのは難しくてもゼネラリストとしての素養はある人も多数いるのではないだろうか。

 政府の支援プログラムはこの世代が正規雇用の経験がない、もしくは浅いという前提の上で立てられているが、むしろロスジェネとして戦ってきた軌跡を認めることこそが、当事者たち(もちろん、これには筆者も含まれる)がずっと求めていることだという視点が欠けている。企業側の人事や派遣会社の担当者に、自分の「履歴書」を否定される屈辱感は、経験した者でしか分からないのかもしれない。

 

 一方で、この世代はインターネット第一世代でもあり、仕事に携わったことがなくてもITリテラシーの高い人が多いのも特徴といえるだろう。それを活かせないのは、個々人の努力の問題でなく、社会全体のIT化が遅れていることも起因しているということは、今回の新型コロナを巡る各種給付金・助成金の支払いの手続きでも露呈したように思われる。

 図らずも、Twitterのハッシュタグ「#検察庁法改正案に抗議します」でネットが実際の政治に一定の影響を与えることが証明された。人口のボリュームゾーンが大きいロスジェネ世代が、一つのイシューに対して一斉に声を上げたとするならば、これまで体験したことがない「成果」を出せるかもしれない。前述のようにこの世代は性別や社会的立場、個々人の経験の差が横たわっていて分断を強いられているが、それを超えて世代としての「まとまり」をもつ何かを見つけることが求められているように思える。