朝日新聞編集委員ツイート炎上即アカウント削除は何が問題か? 読者側は記者を選別する材料に

記者Twitterは発信するだけでいいのか?(写真:ロイター/アフロ)

 朝日新聞編集委員(社寺・文化財担当)がTwitterで「あっという間に世界中を席巻し、戦争でもないのに超大国の大統領が恐れ慄く。新コロナウイルスは、ある意味で痛快な存在かもしれない」と投稿して批判が殺到。アカウントを削除したため、朝日新聞広報アカウントが謝罪する事態となった。

 

 

 「新型コロナウイルスが痛快」という内容自体については、居酒屋レベルな話を公的なアカウントで発言するのはどうかと思うが、それ以上に謝罪や説明をツイートせずにアカウント削除に走ったことがより問題だ。記者としてばかりか、社としてのモラルや「言論」を担うという意識に欠けていると批判されても仕方がないだろう。

 過去の事例でいえば、2018年11月に毎日新聞社会部記者が河野太郎外務大臣(当時)に、韓国徴用工裁判に対して駐日大使を呼び抗議したことについて、「三権分立の無視も甚だしい」という旨のツイートをして批判リプライが多数寄せられて、そのままアカウント削除したケースに近いが、この時の該当記者は謝罪ツイートをしていた。今回は社の広報を通じてお詫びをしている分、ある意味で編集委員を社の責任と捉えて批判の矛先になっている分だけ、誠実な対応といえるかもしれない。

 

 ところで、広報アカウントでは「本社は、報道姿勢と相容れない行為だったと重く受け止め、専門的な情報発信を担う“ソーシャルメディア記者”を取り消しました」としている。朝日新聞はTwitter展開や「公認アカウント」について、次のように説明している。

朝日新聞社は、新たな発信や読者のみなさんとの対話をめざして、各部門、総局、取材チームなどのグループや、記者個人によるツイッター活用をすすめています。さまざまなテーマや取材拠点から、記事の裏話や紙面で紹介できなかった写真も掲載しているほか、さまざまな出来事の実況中継も試みています。

出典:「公認」記者アカウントの紹介:朝日新聞デジタル

 

 また、「朝日新聞社編集部門ソーシャルメディア・ガイドライン」(PDF)によると、“ソーシャルメディア記者”は、所属長の推薦と、同社のゼネラルマネジャーを委員長とし、4本社の編集局長らで構成するソーシャルメディア委員会が認めた記者で、「社外から異論や反論が寄せられた場合、丁寧に受け止めるとともに、専門知識を生かしながら、可能な範囲でやり取りして本社の報道・評論が読者や社会に理解されるようにする」ことを求められている。記者向けにはオンライン研修をしているというが、今回の編集委員のアカウント削除は、この制度がまともに機能しているのか疑問を持たざるを得ないだろう。「本ガイドラインに抵触する行為が認められる場合、本社は、当該行為者に対して是正、利用停止等を命じるほか、従業員就業規則等に基づく処罰等の措置をとることがあります」とあるので、この編集委員の処遇がどのようになるのか、注視したいところだ。

 これは、他社の記者やフリーのジャーナリストにも言えることだが、Twitterを自己の意見や主張の発信のツールと見なして、より広い社会一般の問題を「拾う」という使い方をしていない人が多いように感じる。

 確かに、自分の主義主張の違う人たちのアカウントのツイートを多数目にするというのは、ストレスが溜まる作業ではある。とはいえ、少なくともネット上に「少なくない」数のクラスターがあると認識することは大事だし、「なぜそのような存在がある」のかウェブ(社会と置き換えてもいい)に関連した仕事をする以上に考える必要があるし、可能ならばそこにコンタクトを取って交流を図るべきだろう。そのためには多くのユーザーをフォローするなり、リストに入れるなりして、何をツイートしているのか見ることが大事だ。

 

 一方で、読者側から見ると、「居酒屋の冗談みたいなツイートを本気でする編集委員」が肩書きに相応しい人なのか、今回のケースでは詳らかにされたといえる。例えば読売新聞などは個人の記者の発信はほとんどやっていないが、少なくとも「何を考えているかわかる」というだけでも幾ばくかは「窓が開いている」とも取れる。

 朝日新聞の“ソーシャルメディア記者”の中には、「アラブの春」の時に現地の状況を詳らかに発信していた神田大介記者のように紙面に反映されない濃い情報を提供してくれる人もいるし、“ソーシャルメディア記者”に認定されていなくても、IT全般に詳しく初音ミクをはじめとするネットカルチャーにも造詣が深い丹治吉順記者のような人もいる。特に大手新聞社は人員を多く抱えており、個々の見解も微妙に違っている。そういった際に、「この記者の記事だから読む」というような指標にもなり得る。なので、朝日新聞に限らず、記者アカウントの人たちには今回のケースにげんなりせずに、Twitterでの発信を続けてもらいたいと強く願う。これによってTwitterでの発信が萎縮されることだけはないようにしてもらいたい。