「青文字系」は死んだのか? ファッション誌『Zipper』休刊とネット連動の難しさ

『Zipper』2017年9月23日発売号(筆者撮影)

 1993年より祥伝社から発行されてきた『Zipper』が2017年12月22日発売号で休刊となることになった。祥伝社によれば、今後「ブランド力を活かした、新しい形でのビジネスを検討してまいります」というが、ウェブを中心としたメディア・ECサイトの展開を視野に入れているということだろう。

 『Zipper』は、2017年4月15日発売の6月号で休刊した『KERA』と同様、原宿ファッションにフォーカスした「青文字系」と呼ばれる雑誌の一つだった。『KERA』と2010年代の原宿ファッションの変遷については、既に筆者がざざっと振り返ってみているので、そちらをまずはご一読頂きたい。

 『KERA』休刊と2010年代原宿ファッションの変遷

 ゴシック&ロリータが中心だった『KERA』に対して、2010年代の『Zipper』は「古着ミックススタイル」に代表されるようなカジュアルでいながら尖ったファッション・アイテムの紹介に長けていた。AMOとAYAMOの二人によるユニットでアーティストとしても活躍しているAMOYAMOや、瀬戸あやみ、三戸なつめといった読者モデル=パチパチズを輩出。カジュアルアイテムをロープライスで提供していることで10~20代前半の支持が厚いショップSPINNS(スピンズ)や、前述したAMOYAMOをモデルとして起用したE hyphen world gallery(イーハイフンワールドギャラリー)といったブランドと親和性が高かった。

 『Zipper』のスタイルの一つの到達点となったのは、2013年3月30日にラフォーレ原宿で開催された発行20周年記念イベントだろう。専属モデルとして活躍していたIMALUと、連載を持っていたきゃりーぱみゅぱみゅと仲里依紗、映画監督の蜷川実花のトークなどが開催され、20年の歴史を総ざらいする場となった。

 ただし、日本雑誌協会の印刷部数を見ると2010年7~9月の184100部がピークで、イベントが開催された2013年1~3月だと143484部にまで落ち込んでいた。その後も数字は右肩下がりで、月刊誌から季刊誌に移行した2014年12月の時点では95050部。主流通先のコンビニエンスストアでの展開も厳しくなって広告収入が落ちていたことが自明な発行部数といえるだろう。

 『Zipper』が厳しくなった理由は、皮肉にも出演モデルたちがマルチな活躍を見せていったことも遠因となっている。例えば三戸なつめは中田ヤスタカのプロデュースで2015年4月にシングル「前髪切りすぎた」でデビュー。その独特な世界観と複数制作されたMVが注目された。

 各モデルが「モデル以上」の存在になり、ストリートに寄り添ったコーデ・スタイルを紹介してきた『Zipper』の読者層からすると、身近な存在から離れていったと感じる面があったように筆者には思える。

 さらに、ほとんどのモデルやブランドが『Twitter』などのSNSでの発信をはじめて、ユーザーが雑誌を読むことなく情報を得ることができるようになったということも、その凋落に拍車をかけたように感じる。先に挙げたスピンズなどのショップ・ブランドもモデルとのコラボアイテムを発表して独自にファン層を囲い込み、雑誌に頼らずにファンを開拓していく戦略を展開していったことも痛かったのではないか。

 現時点での最新号である2017年9月23日発売号を見ると、韓国のガールズグループBLACKPINKが表紙。さらにライブ配信アプリ『LIVE SHOP』とのコラボや、「インスタ映え」を謳ったヘアアレンジ特集などが組まれ、Webとの連動を模索している形跡が随所に散りばめられていた。しかし、ターゲット層の10代後半から20代は『Instagram』よりもむしろ『LINE』世代。オープンな場で情報発信するよりも、仲間うちでの情報の共有と交流を求めている。もっというと承認欲求の充足に困っていない世代だ。そういう層に「他者のまなざし」を希求する誌面づくりをしても響かないのではないか、という感想を持った。

 ここまで振り返ってみると、『Zipper』に限らず青文字系雑誌の果たしてきた役割は終わったのだと言わずにはいられない。休刊の報で、1999年から2003年まで矢沢あいの漫画『Paradise Kiss』が連載されていて、歌手のCHARAやYUKIが表紙を飾っていた頃に読者だったユーザーからは惜しむ声が多く上がっていたが、そういった層はとっくに『Zipper』を卒業している。それと比較して、現在進行系で『Zipper』で紹介されているような古着やレトロミックスを織り交ぜたコーデが好きな20歳前後の層からの反応は薄かったように思える。

 『KERA』に続く『Zipper』の休刊で、「青文字系」雑誌の系譜は途絶えたように一見感じられる。しかし、東京オリンピックに向けて国際化が進む原宿の街を見ると先に挙げたようなブランドをおしゃれに着こなしている女子を見かける機会はまだまだ多い。ただ、それが多様化する原宿に集まる人のファッションの中で、いかにも「原宿」な流行ではなく「いくつかあるスタイルのひとつ」になったということなのだろう。「青文字系」の雑誌はなくなっても、ショップやブランド、そしてそこに集う人たちが未だにいることは変わらない。

 だから、今回の『Zipper』の休刊で原宿のファッションが衰退したと捉えるのは早計だろう。むしろ街に集まる人たちが思い思いの服を着て楽しむ街という傾向は、日本を超えて広がっている。それがWeb、特にSNSで発信されている限りにおいては、「青文字系」ファッションはなくならないし、死なない。そういった相互発信するユーザーに乗って盛り上げる役割を担えるメディアは現状見当たらないので、そこに上手くハマると、まだまだ面白くてユーザーにも支持されるようなコンテンツは作れるように思える。