森友学園籠池泰典氏証人喚問に見るSNSなどの「非対称戦」

証人喚問での籠池泰典氏(写真:つのだよしお/アフロ)

衆参両院予算委員会で2017年3月24日に開かれた森友学園理事長の籠池泰典氏の証人喚問。筆者は『ニコニコ生放送』で証人喚問を視聴していた。安倍晋三総理大臣の昭恵夫人から100万円の寄付を受けた話など双方で食い違いがあるなど、腑に落ちない点が多々あったというのが率直な感想になるが、その真偽についてはこの場では置いておく。

籠池氏が証人喚問の後に日本外国特派員協会で記者会見を開き、昭恵夫人について「森友学園に共感するという内容の発言をしていたにも関わらず、態度が変わってしまった」と述べているのに対して、昭恵夫人は自身のFacebookで「席を外すように言った」という証言について「私は、講演などの際に、秘書に席を外してほしいというようなことは言いませんし、そのようなことは行いません。この日も、そのようなことを行っていない旨、秘書2名にも確認しました」と否定。さらに携帯電話への留守電のメッセージを入れたという点についても「何度か短いメッセージをいただいた記憶はありますが、土地の契約に関して、10年かどうかといった具体的な内容については、まったくお聞きしていません」とコメントしている(参照)。

また、籠池氏が西田昌司参議院議員の「お金の手当てができないままに小学校の計画を進めたのではないか」という質問に対して、「九分九厘できあがったところで松井一郎大阪府知事にはしごを外された」と発言していることについて、当の松井府知事はTwitterで反論を展開している。

このように、国会の予算委員会という場を飛び越えて、SNSがそれぞれの主張の場として活用されていることに関しては、これまでの証人喚問では見られなかった事だという点として、注目に値するだろう。これまでならば記者を集めて会見するなり、報道各社の取材にコメントをするなりしていた事が、SNSの存在によってメディアを介せずに直接当事者が発信をしている。当然ながら、その発信を各メディアとしては取り上げて記事にせざるを得ないが、記者会見と違って直接質問を投げかける機会は与えられない。つまるところ、その主張を真偽の検証を経ずに「ニュース」として取り上げなければならなくなっている。

さらに、100万円の寄付についての「物的証拠」として登場してきたのは、新聞・雑誌などではなく、『Yahoo!ニュース個人』の菅野完氏の記事からだ。これも『ハフィントン・ポスト』『週刊朝日』がニュースソースの一つとして使っている。菅野氏の発信も個人のものと捉えることができる(しかも途中から籠池氏の代弁者として振る舞っている)から、テレビ・新聞・雑誌といったレガシーメディアを飛び越えて、誤解を恐れずに書くならば「ネット発」で出されたものだ。ここも籠池氏と菅野氏の間でどのようなやりとりがなされたのか、全貌は明らかになっていない。

個人的に感じるのは、全てのメディアがこのようなSNSでの当事者(とそれに近い者)の発信に振り回されて、後手後手になっているということだ。今回の事件に関して、検証や裏取りといったこれまでのレガシーメディアが情報発信に至るまでになされてきた過程が「ゆるい」ように思うし、筆者の仕事でもあるネットメディアについても残念ながら力不足は否めない。そういった情報環境が、当事者たちの「非対称戦」を許しているように見えるし、それが今回の事件の解明になかなか至らない理由の一つとして挙げられるのではないだろうか。