DeNAキュレーションメディア問題はこれで幕引きで良いのか

DeNA守安功代表取締役社長(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

2017年3月13日に、DeNAがキュレーションメディアに関する第三者委員会の調査報告書を公表(参照)。それを受けて守安功代表取締役社長と、創業者の南場智子会長が記者会見を開いた。筆者は調査報告書を三度読みして会見動画も二度見してみたが、やはり違和感が拭えず、これで幕引きとして良いのだろうかという疑問が沸いてきた。それを簡単にまとめておきたい。

まずは、『iemo』など9サイトを統括し、DeNAの執行役員でもある村田マリ氏と、『MERY』を立ち上げ運営してきた中川綾太郎氏に対する、DeNAの甘さ。彼ら2人は問題が明らかになってから一度も公の場に姿を現していない。会見で南場氏は「2人の有能な若者を正しく導けなかった責任は極めて重い」として彼らをかばうような発言をしている。また、両者について「悪意があってやったわけではない」という発言もあったが、悪意がなく著作権違反のコンテンツを量産したり、ともすれば人の身体に影響を及ぼすような誤解を与える記事を配信していたことこそが問題で、それが「若者」かどうかは関係がなく、公の場で説明が必要だろう。まして村田氏は執行役員という要職についているから尚更で、それだけに南場氏と守安氏の過保護が気になった。

次に違和感を覚えたのは「外部編集ディレクター」の存在だ。各キュレーションサイトがクラウドワークスやランサーズ、シュフティといったクラウドソーシングサービスを使いライターを集めていたことは周知の通りだが、この「外部編集ディレクター」が「業務委託ライター」と同じくクラウドソーシングサービスから応募して採用された者なのか、もしくはクラウドソーシングサービスの社員なのかで話が変わってくる。後者の場合は実質的に編集プロダクションのような役割を果たしたことになる。第三者報告書では「特殊な業務委託契約」を結んでいたとあり、その内容が詳らかになっていない。各クラウドソーシングサービスは経済産業省の支援を受けていることもあり、彼らがどこまで編集に関与していたのかで問題の深刻度が高まるのではないか。

守安氏の「SEO至上主義」とも呼べそうな固執も疑問符がついた。ネットメディアを運営する際には「どのようにユーザーから読んでもらえるか」を逆算していくものだが、Googleからのオーガニック検索だけでなく、SNSからの流入も期待できるだろうし、各ポータルサイトなどへの外部配信といった施策も視野に入る。DeNAならば『モバゲー』とのシナジーも考慮されただろう。

しかし、例えば『WELQ』の2016年11月の数字を見ると実に89.5%がSEOでの流入となっている。メディアとしてGoogleに依存しすぎているし、逆に言えば『WELQ』というメディアのブランドをどのように作るのか、プランがなかったようにも感じられる。これは『MERY』以外の9サイトにも同様のことが言える。

もうひとつ。第三者報告書では「プラットフォーム事業者」について、「原則として情報・商品・サービスの提供者にならない」としている。例えばYahoo!はニュースを配信社から提供を受けているものと、このYahoo!ニュース個人のようにYahoo!と執筆者の契約で配信された記事、さらにYahoo!ニュース編集部の特集が混在しており、メディアとしての側面も合わせ持っている。DeNAのキュレーションメディアも第三者報告書にあるように、大多数の記事は編集部が委託して書かせた記事になり、指揮命令系統としてはDeNAが責任を持つメディアということになるだろう。多くのネット企業はこの「メディア」と「プラットフォーム」を敢えて混在させて曖昧なまま事業を行っているように個人的には感じられる。そのことが「隠れ蓑」にならないということが今回の事件で明白になったと言えるのではないか。

それにしても、『MERY』で一番アクセスの多い2016年7月が全体で2064403DAU。この時点で公開されている記事数が126865本。平均で約16.272という数字になる。つまりわずか16人しかアクティブユーザーがいないという数字には暗然とした気持ちになる。同じように『WELQ』の2017年11月時点だと、2798034DAUで公開本数が35197本。一本あたりで約79.497。『MERY』と比較してSEOの成果があったのかもしれないが、それでもアクティブユーザー80人足らずというのは、ちょっとしたブログ以下の数字だ。

今回の事件で、記事の粗悪乱造はあらゆる意味でアウトだということが明らかになった。ビジネスとしてもはっきり言って割に合わない。これが契機となって、より読者に質するような良いコンテンツと、それを書くことが出来る人が正当な対価を得られるような方向に転換されるといいのだけど。果たしてDeNAのみならずネット事業者が「メディア」をどう捉えていくのか、書き手のひとりとして楽観できないな、と感じている。