DMMグループOBとして感じた『はちま起稿』買収問題

『DMM.com』コーポレートサイト

まとめサイト『はちま起稿』が2016年1月から10月まで『DMM.com』がサービス運営していた問題。これが明らかになったのは『ねとらぼ』の広範に渡る取材が大きな役割を果たしたと言えるだろう。

Webメディア「はちま起稿」サービス運営・事業譲渡に関するお知らせ

はちま起稿を買収したDMM、元管理人・清水氏ら主要メンバーを雇用しステマ関与か 取材に対し隠蔽工作も(ねとらぼ)

ところで、筆者は2004年から2007年まで、DMMグループの出版社ジーオーティーに在籍していた。仕事の内容はアイドルイメージソフトDVDレーベル『エアーコントロール』の担当が主だったのだけど、さまざまな理由からグループ各社を跨ぐ動きを求められて、例えば取り扱いAVメーカーのAmazonの営業窓口も自分が担当だった。当時のグループの雰囲気では「社」という枠に囚われずに業務が進むことが多かった。『エアーコントロール』を例に出すと、プロデューサーはAVメーカー『MOODYZ』と兼任で、広報も北都(現CA)の所属。ジーオーティー側の窓口を自分がやるという、外部から見ればややこしい体制で動いていた。グループ全体が万事この調子なので、「誰が、どのような動きをしているのか」は隣席の同僚についても分からないということはざらにあった。

筆者は幸運なことに亀山敬司会長の仕事を間近で見る機会があった。個人的な印象は、儲けるためには業界の慣例を破ることも厭わない根っからの商売人。違法ではない、グレーゾーンをどんどん攻めていくことで、グループ全体で1300億円以上という売上を達成することに成功したともいえる。それはアダルトビデオで、既存の倫理機関を通さない「インディーズ」での制作や、当時買い切りが主だった販売店に委託(返品可)にして棚を増やす戦略などを推し進めていったことからも見て取れる。

話を『はちま起稿』問題に戻すと、まず買収に至った意思決定が誰にあったのか、ということが焦点になるだろう。DMM.comの松栄立也代表のレベルでビジネスが進められ、他のスタッフが詳細を噂話程度しか知らないといった可能性もある。なので、買収の目的を含めて明らかにするには、松栄代表の証言が不可欠だ。

『ねとらぼ』ではDMMが『はちま起稿』を運営することで「ステルスマーケティング」問題があるとしている。個人的には、仮に自社のゲームを好意的に紹介したり、他社サービスをネガティブに知らせるということは、どのメディアでも行っている編集権の範疇であるように感じる。仮に「ステマ」が問題になるとすれば、他社サービスの評価あるいは批判する際に、DMM Gamesあるいは他社からの「広告費」で書かせた上に、それが広告だと読者に分からないようになっていた場合だろう。

一方で『はちま』を非公表のまま運営していたことに関しては、『ねとらぼ』が指摘するようにコンプライアンス上の問題になってもおかしくない事案ではある。ただ、DMMグループが未だにアダルトソフトの制作・販売が主な事業であることを忘れるべきではない。もっとヤバい橋はいくつも渡っている。そもそもDMMは非上場企業。コンプライアンスや倫理観がもともと希薄な会社なのだ。

個人的に気になったのは、2016年10月に『はちま』を手放しているという点。DMMグループは来年に持ち株会社制に移行し、画像SNS『pixiv』の片桐孝憲氏がDMM.comの社長に就任する。

DMM社長に34歳外部人材が選ばれた全事情(東洋経済オンライン)

片桐氏は当然ながら『はちま』のお行儀の悪さを知っているだろうし、社長を引き受けたからには『はちま』が一時DMMが運営していたことを認識していた可能性が高いのではないか。その上で、『はちま』を株式会社インサイトに譲渡するプロセスに何らかの関与があったのか、片桐氏に確認してみたい。