安易に「コスプレで町おこし」と考えない方がいいと思う件

たまたまネットを見ていて、『nikkei BP net』で気になる記事が流れてきた。「B級グルメ」「ご当地キャラ」の次に「コスプレ」に力を入れる自治体が増えている、という内容で、東京都大田区の『蒲田コスプレこれくしょん』や名古屋市の『世界コスプレサミット』などを例に出して自治体が積極支援を展開している、という。

B級グルメ、ご当地キャラの次に来る? 「コスプレ」に力を入れる自治体が続々!(nikkei BPnet)

実際に記事にあるようにコスプレイベントが大都市圏だけでなく地方でも開催されることが増えつつあるのは事実だ。だが、安易に「コスプレ」を軸に「町おこし」をしようという動きは危ういものがあるように個人的には思える。

まず大前提として、「B級グルメ」にしろ「ご当地キャラ」にしろ、各自治体が生み出したコンテンツであるのに対して、「コスプレ」はアニメやゲーム、マンガなどのキャラクターになり切るという性質のもので、コスプレをする人自体がコンテンツではないという点を踏まえるべきだろう。最近では新海誠監督の『君の名は。』が飛騨を舞台になったように、地方を舞台にしてその地と密接にプロモーションを行うアニメなどが増え、ファンの中には「聖地巡礼」する人も見られるが、それもあくまで作品があってこその動きだ。ただ「コスプレイベントを開きました」でコスプレイヤーが多数訪れるわけではないのだ。

かといって、アニメなどを合わせたイベントにしようとすると、コスプレイベントを開催するのにはハードルが上がる。アニメなどのキャラクターの版権は当然ながら作者・版権各社にあり、衣装デザインにも著作物性があり、複製権の侵害にあたるからだ。多くのイベントでレーヤーがコスをしているのは版権各社が「黙認」しているからであって、それを自治体のような「公式」で開くとするならば、著作物の使用を認めたことになる。まぁ、普通に考えてどの会社も二つ返事で「やりましょう」なんて言わないよね。

もう一つ、コスプレイヤーの「人口」は多くのイベントを企画している担当者が期待しているほど多くはない。例えばレイヤー専門SNSの『コスプレイヤーズアーカイブ』にレイヤーとして登録しているのは約14万人(2014年)。ちなみに、このサービスには海外からの登録者も一定数いる上に、既に活動しなくなった人も当然ながらアカウントを残している。

国内最大の同人イベント『コミックマーケット』は、コスプレ登録とコスプレ先行入場事務手数料を実施している(参照)。関係者によると、登録者数は28000前後で推移しており、多く見積もって一日あたり7000人のコスプレ参加者という数字になる。日本で一番集まるイベントでも、それだけの規模感であるということをよく考えるべきだろう。

実際、コスプレって筆者もやってみたことがあるが、想像以上に大変だったりする。既製品を揃えようとすると数万円かかるし、実際に作る人は縫製の才能が要る。加えて髪(ウィッグ)を合わせたり、化粧やムダ毛処理……他の趣味と比較しても極めるのはかなりの根気が必要だ。すぐに参加者が飛躍的に増えるジャンルではない。

結局のところ、「コスプレ」のような「ファンの集まり」を自治体が開くということは、前述のような版権の問題が絡む上に、実際に「コスプレ」をする人の数が全国に数百万人もいるわけではないので、「コスプレイベント」単体で人を集めようとするのは無理ゲーだと言わざるをえない。

そういった意味では、コスプレだけでなくアニソンDJパーティーや痛車といった他のファンコミュニティーも集まれるようなイベントにしていく、というのが一つの答えになるかもしれない。

栃木県足利市で開かれている『足利ひめたま祭』はまさにそのようなイベントで、公式発表で来場者約10000人、レイヤー参加者も約300人となっている。また、『ひめたま』では足利織姫神社のキャラクター“はたがみ織姫”という「ご当地キャラ」がいて、グッズ販売も実施している。

『ひめたま』は既に12回行われており、このような掛け合わせで集客を行っていくだけでなく、その継続性も大事。一朝一夕で大勢の人を集められるわけではないということを、イベント企画者は肝に銘じるべきだろう。