「ネットを信頼しない」鳥越俊太郎氏はネットメディアによって「終わる」のか

都知事選に敗れた鳥越俊太郎氏(写真:アフロ)

先の東京都知事選で野党4党の統一候補として出馬した鳥越俊太郎氏だが、投票数1346103票・得票率20.56%で3位という結果に終わり落選した。当選した小池百合子氏が約291万票で、2倍以上の差をつけられたということで、惨敗と表現して差し支えないだろう。

これを受けて、『ハフィントン・ポスト』日本版が鳥越氏にインタビューをしている。

「ペンの力って今、ダメじゃん。だから選挙で訴えた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】

「戦後社会は落ちるところまで落ちた」鳥越俊太郎氏、惨敗の都知事選を振り返る【独占インタビュー】

率直な感想を述べるならば、「この人が都知事にならないでほんとうによかったね」ということになるのだが。このインタビューは自身のみならず、支援をした人や支持をした人、それに「ペン」で仕事をしている人(筆者自身もその末席にいる)、もっと広い範囲でいえばリベラル勢力のすべての名誉を損なっていて「誰得?」といった内容になっているように思えた。逆に言えばそれだけの発言を引き出して記事化した『ハフィントン・ポスト』の功績は讃えられてしかるべきだろう。

まずは「ペンの力って今、ダメじゃん」のくだり。その理由について、「安倍政権の跋扈を許しているのはペンとテレビでしょ」と続けている。ここで都知事選に出馬をしたのは「都政」を良くするためではなく、「対国政」であったことが図らずも示されている。つまり出馬自体に大きな矛盾を抱えていたわけだ。

そして『ニコニコ生放送』の討論番組に出演しなかったことや、池上彰氏の選挙特番に出なかったことを「選対に任せていて知らなかった」と述べ、まったく話を聞いていなかったという。そんなことがあり得るのだろうか?

というのは、鳥越氏は10年前の2006年に『オーマイニュース』日本版の創刊編集長の時にも、「言った、言わない」で揉め事を何度も起こしており、重要なことは矢面に立つことを避けていた。このことは、出馬会見が行われた時点で指摘した。

鳥越俊太郎氏の“黒歴史”『オーマイニュース』について振り返ってみる(ふじいりょう)

『ハフィントン・ポスト』のインタビューでは、鳥越氏が自身のサイトから都知事選の記述を消されていることを突っ込まれている。これは『オーマイニュース』編集長の経歴を記載せず「黒歴史」化しているのと同じことで笑うしかないのだが、「ネットにそんなに信頼を置いていない。しょせん裏社会だと思っている。メールは見ますけれど、いろんなネットは見ません」と述べつつ冒頭にはこんなことを発言している。

(前略)それから10日ぐらいたって、参院選の開票日(7月10日)になった。

翌日、ネットなども見ていろいろ考えた。「このままでいいのかな」と。安倍政権が、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、安保法制と強行採決で突っ走ってきた。「このまま日本が行くと、日本が大変なことになってしまうなあ」という僕なりの危機感があった。

ネット、見てるじゃん。見てるとして、「信頼」してないのに出馬を思考する上での材料にしているのだとすれば、ここもやはり矛盾している。短いインタビューの中にも、このようにおかしな箇所がいくつも出てくる。

筆者は『オーマイニュース』の顛末を知っているから、鳥越氏の発言のこうした矛盾に驚くことはない。ただ、当時『オーマイニュース』で鳥越氏の「仕事人」としての脈絡は絶たれたと思っていた。そういう意味において、今回の野党4党の統一候補として担がれたことに驚いたし、筆者の見立ての甘さを感じたものだが、スマートフォンが普及した現在において、多くの人にとってネットは限りなく生活の一部となっている。

そんな中で、4割の有権者が棄権していることについて「自分たちの将来、今の生活について何も思っていない」と断じて、候補者として魅力的な「東京」像を示すことができなかったことを棚に上げるというのでは、敗因について「僕の力が不足していたという一語に尽きる」という言葉も軽く聞こえる。

10年前はまだインターネットでの言論は一部の「モノ好き」の世界だったかもしれない。だが、誰もがいつでもどこでもアクセスできるようになった現在において、今回の『ハフィントン・ポスト』のインタビューも同様に誰でもどこでも読める。『オーマイニュース』では断てなかった「仕事人」としての鳥越氏を、このインタビューによってついに「終わらせる」ことができるのか。テレビの世界ではしぶとく生き残り続けるのか。どちらにせよ、「ペンの力って今、ダメじゃん」と言い放った鳥越氏に今後オファーをするメディアは、ずいぶんマヌケに見えるのではないだろうか。