東京都知事選の得票数四位以下の候補者について考察してみる

演説中のマック赤坂氏(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

東京都知事選挙は、小池百合子氏が2912628票を獲得して当選した。これは2007年に石原慎太郎氏が獲得した2811486票を上回っており、堂々たる勝利といえるだろう。今後、自民都連や都議会との関係がどうなるのかや、無残な負け方をした鳥越俊太郎氏を擁立した野党四党がどのような責任を取るのかなどにも関心が集まるだろうが、こちらは諸兄の賢察を待ちたいと思う。

個人的には、主要三候補からは離された票数だが、四位以下の候補者の数字も興味深かった。彼らはほぼマスメディアからは「いないもの」と扱われていた印象だが、それでも一定の票数は確保している。ここでは彼らについて選挙マニアとして少し考察してみたい。

「ネット候補」としては物足りなさがあった上杉隆氏

まず、四位となる上杉隆氏。18万票近くを獲得した。ジャーナリストとしての毀誉褒貶についてはここでは置くが、都知事選では都の最低時給907円で働くと名言し、首都直下型地震対策死者数・都内養護老人ホーム待機者・都内保育所待機児童を「3つのゼロ」を掲げ、党利党略の報道が先行していたことを逆手に取って「知事選に政策論争を」と一貫して訴えていた。

ところで、上杉氏の『Twitter』アカウントは32万人以上のフォロワーを有している(参照)。選挙戦では、このほか上杉隆事務所(@OfficeUesugi フォロワー約10300)なども活用し、積極的な情報発信を行っていた。また、支持者の声をこまめにリツイート(これは普段から行っている)しており、ある程度は支持層を強固なものにするように作用したことが考えられる。

ただ、先に参議院選挙で同じくマスメディアでの露出がなく、しかもポスターを貼れないというハンデがあった山田太郎氏の約29万票には及ばない。もちろん、全国区と東京都限定という差があるにせよ、「ネット“どぶ板”」という面では若干物足りなさがあったというか、山田氏の方がユーザーから寄せられたリプライにも対応したり、毎日『ニコニコ生放送』で自身を晒すなど、票起こしが丁寧だったように感じた。このあたり、「アンチ」も多い上杉氏はネガティブな反応に敏感で、十分にネットを活用することができなかったのではないだろうか。

コスプレ封印で票数を伸ばしたマック赤坂氏

スマイル党首のマック赤坂氏は、2014年の約15000票から51056票と3倍以上の「躍進」を見せた。ちなみに2011年の都知事選は4598票、2012年には38855票を集めている。

今回注目されるのは、同氏が政見放送でのコスプレを封印し、成果主義の導入といった都庁改革、都議会議員の一人あたり年収が2500万円だとし、都議を将来的にはゼロにして区議が都議を兼任する制度にすると主張。カットした予算を福祉に使うと強調するという極めてまっとうな政策をアピールした。

一方で街頭演説や『twitter』ではこれまでのノリと同様。スマイル体操を伝え、時には他候補者に絡むといった、良い意味で泡沫候補らしい選挙戦を展開した。いずれにしても、赤坂氏の人となりが知られることに加えて、ネットでの知名度は上がったために「投票はしないけれど応援はする」といった声も多かった。彼の硬軟合わせた選挙戦は、今後の泡沫候補の戦い方として一つの指標となったように思える。今後も赤坂氏が各地の選挙に出馬するかは定かではないが、有力候補の誰にも入れたくないという層の受け皿となることは十分に考えられるのではないだろうか。

メディアアートとして政見放送に賭けた立花孝志氏

一方で政見放送にすべてを賭けた候補が立花孝志氏だろう。NHKから国民を守る党の代表として立候補した立花氏は、政見放送で「NHKをぶっこわす!」を連呼。その表情がまたイイのだ。NHKで放送される政見放送でこのフレーズを繰り返すためだけに、かなりのリハーサルをこなしたと思われる流麗な演説を披露した。その上で「続きはWebで!」とやったのも良かった。

このように、政見放送で「目立つ」目的で使う候補はこれまでにも赤坂氏をはじめとして数多く存在した。1991年の都知事選で「パワー・トゥ・ザ・ピープル」を歌い英語・仏語で通した内田裕也氏や、2007年に「こんな国は滅ぼせ!」とやって選挙そのものを否定し中指を立ててみせた外山恒一氏などは、ある意味メディアアートとして政見放送を活用した事例として挙げられる。立花氏もこの系譜として捉えられる。

ただ、問題は得票数だ。内田氏は54654票、外山氏は15059票だったが、それまで知名度ゼロに等しかった立花氏も27241票を集めた。赤坂氏同様に有力候補の誰にも入れたくない無党派層の一部が流れたのだろうが、案外無視できない数のような気がしないでもない。今後の立花氏の活動に注目したい。

「切羽詰まった人」を可視化した桜井誠氏

さて、得票数五位の114171票を得た在特会(在日特権を許さない市民の会)元会長の桜井誠氏をどう捉えるのか、は評者によっても意見が分かれるだろう。評論家の古谷経衡氏は「検討はしたが驚くに値しない」とし、ネットの右派の2割を取り込めたにすぎないとしている。

縮む東京の「極右」地図~桜井誠氏の得票から見る都知事選分析~(古谷経衡)

ただ、小池氏が韓国人学校への都有地提供を「白紙にすべき」といった「極右」好みの政策を盛り込んでいたにもかかわらず、桜井氏に11万票以上の票を得たということは、自分の境遇を外国人(特に韓国・中国人)に原因を求める「切羽詰まった人」がそれだけ存在するということにはならないだろうか。そして、彼らの多くは自分のことを「弱者」だと考えているはずだ。つまり「弱者」対「弱者」という不幸な構図から抜け出せない人が東京の有権者のうち1.7%はいるというのは、果たして政治的に無視していいものなのか、議論の余地があるように思える。

オリンピックに向けて国際化を進める必要性のある東京にとって、彼らの存在がリスク要因として可視化されたことは、ある意味で今回の都知事選で最も目を向けなければならないのではないかと、個人的には考えている。このことは、別の機会により深掘りしてみたい。