『民主党ハイスクール』をとにかくダメ出ししてみる

こういう場に出るのはいつも枝野さんですね……(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 民主党が2015年12月23日に開催した『民主党ハイスクール・1時限目 渋谷』。その気になれば取材に行けたのだが、何より気力が湧かなかったし、10代の読者モデルたちと枝野幸男幹事長が交流するという図ではどのような議論が進むのかは、だいたい読めるし、各新聞などがベタ記事程度なら出すだろうからスルーを決め込んだ。実際、「10代と交流」「投票権を使おう」といった文脈で報道されている。

 「投票権使って」 枝野氏、若者に訴え (産経フォト)

 筆者に言わせれば、民主党青年委員会が主導したと思しき今回の企画は落第点。2013年の『民主党公開大反省会』や『ニコニコ超会議』への出展の教訓が生かされておらず、「まるで成長していない」というのが正直な感想になる。

 ※参考 筆者の過去記事

 民主党公開大反省会はどうすべきだったのか

 政党唯一の出展なのに民主党が『ニコニコ超会議2015』でダメだった理由を考える

 ■世代を区切っている場合ではない

 民主党が主導して企画したイベントの特徴として、参加対象をきっちりと区切りたがる傾向がある。2013年の『大反省会』も参加者は30歳以下限定としており、今回は10代限定の50人の募集としていた。

 ただ、今回のような「若者向けとの対話」ということならば、10代に限定する意味はあまりなく、読者モデルなどを客寄せに使う意味はもっとない。そこで挙がった「声」も「なぜ政治に参加しなければいけないのか」というそもそも論が展開されやすく(実際そのようになっていたようだ)、仔細な政策課題に踏み込んでいく余地がない。「選挙に行こう」と啓発するのはむしろ選挙管理委員会のお仕事で、むしろ「政治とは何か。その中で民主党はどういうポジションなのか」ということを広範に訴えるべきだろう。

 そういった面からすると、はっきりいって若者を対象にイベントをするのはポーズとしての役割しか果たさず、しかも人数が限定されているので効果は限りなくゼロに近い。世論調査で4~6%の間を推移していて、自民党に大きく水を開けられている政党なのだから、世代を区切っている場合ではないように思える。まずはターゲッティング以前の状況だと、強く認識する必要があるのではないか。

 ■「若者の声」を聞きたいならば、まず身内でグループディスカッションを

 今回のイベントのモデレーターを務めた西田亮介東京工業大学准教授は、終了後に「今日の印象: 竹槍とB29.どっちがどっちかはしらない」とツイート(きっと口止めでもされたのだろう)。その上で以下のように述べている。

 

今日聞けたのは、若者の素の声ではない。硬い場に合わせてきたモデル、アイドル、ライター等の人たちのプロフェッショナリズムであって、若者も話せばわかる、とか良い話にまとめて終わりにしないほうがよい。「素の声」が聞きたければ、定量調査とグループインタビュー等を積み重ねるべき。

出典:西田亮介氏のツイート

 個人的には「10代向けのイベントを開きました」で終わらせないためには、各選挙区で議員を交えて、市町村議の家族あるいは親族を5~10名程度集めたグループインタビューを実施するのが良いと思う。まず「身内」の印象を受け止めて、その後で一般向けのグループディスカッションを非公開の場で実施し、その上で各議員が出席した公開ディスカッションと、段階を踏んで「声」を集約していく地道な努力が不可欠なように感じる。というか、そういった試みをやっている形跡がない、あるいは圧倒的に足りないことは、今回のイベントの企画を見ると分かっちゃうんですよねぇ……。

 ■クローズドな会では伝播しない

 民主党、というか枝野氏はどちらかというと公開の会よりもクローズドな場の方を好む傾向があり、『大反省会』の時もわざわざ「閉じた場だから議論が深まることがある」といった趣旨の発言をしていた。それは一面の真実でもあるのだろうが、上記のように突っ込んだ議論になり得ないような会で公開にするリスクはほとんどなかったはず。『ニコニコ生放送』でも『YouTube』でもいいから、広範な層がアクセスできるようにすべきだったのではないか。

 ※2015年12月25日追記

 どうやら『YouTube』はあった模様。お詫びして訂正します。しかし、『YouTube』へのアクセス動線がなってないし、そもそも出演者に許諾って取っていたのですかね……。

 https://www.youtube.com/watch?v=tuXksea1L5k

 (追記ここまで)

 翻って自民党は党本部1Fのスタジオ「Cafe Sta」から毎日のように生放送を実施している(参照)。民主党が「若者向け」のイベントを半年~一年に一回、散発的に実施しているのとは対照的だ。それに加えて自民党は有権者のニーズに関しての調査を組織的に実施している。彼らのPR戦略に関しては西田氏の著書『メディアと自民党』に詳しいのでここでは置くが、ここまで書けばどちらがどちらが竹槍でどちらかB29か明白だろう。

 「忌憚ない意見を交わすにはクローズドで」という考えは既に古いと枝野氏をはじめとする党幹部に言える若手議員や党職員の不在や、風通しの悪さが透けて感じられてしまう。既に政権与党から転落して2年が経過して、試行錯誤している段階でもないし、ほんとうの意味でのネット活用というところも自民党に遅れを取っている、という現状を真正面から把握すべきだろう。

 

 ■最後に

 実は、『ニコニコ超会議』のダメ出し記事を書いた後に、民主党青年委員会の職員から「アドバイスを頂きたい」といったコンタクトがあった。「それって有償ですか? 無償ですか?」と聞いた後に音沙汰がなくなってしまったのだけど。そのこと自体はよくあることなのでどうでもいいが、さまざまに検討した結果が今回のようなイベントだったとすれば、残念というか「ほんとうにもうダメかもしれない」という思いを禁じ得ない。

 それでも、健全な対抗勢力があって議会制民主主義は機能するというのは多くの論者が指摘しているところで、筆者も同感ではあるので、民主党には自民党のパクリでもいいからPR戦略を立て直してもらいたいと思っている。とはいえ、遅きに失している感は否めないから、今日からでも何か始めて頂きたい。繰り返しになるが、政権転落からの2年。この期間をまるまる無駄に過ごしているのも同然だというところから反省して、とにかく動き出すべきだろう。