女性ファッション誌狂騒曲~多難な新雑誌『DRESS』と講談社の見えない明日~

2013年4月1日に創刊された『DRESS』(幻冬舎)。『STORY』『美st』(ともに光文社)を手がけた山本由樹氏を編集長に迎え、40代独身女性をターゲットに置き、結婚よりも恋というテーマに「女性のための幸せな社会変革」という遠大な目標を掲げている。

しかし、ネットにおける評判はおおむね悪い。広告が多くて独自記事が少ないというのを既に見透かされているだけでなく、そのペルソナ設定が素敵オーラを無理やり発散させているため「イタい」と見る向きが強くなっているようだ。

広告だらけ、中身が無い、必死すぎ……秋元康ら豪華経営陣が新創刊した雑誌『DRESS』に厳しいコメント相次ぐ(ガジェット通信)

見城徹社長によると30万部(そんなに刷ったのかよ…)のうち「7割の実売を確保すれば十分採算はとれる」とのこと。これは月刊誌で翌月号以降に部数の調整を維持するのに最低限のラインなので真新しいコメントではないが、今や書店よりも部数が出る主戦場のコンビニチェーンでさばけるような内容でもないし、前途は多難なのではないだろうか。

低迷女性誌、読者を模索 独身アラフォーに照準・生き方提案(朝日新聞デジタル)

2004年に創刊し「艶女(アデージョ)」というキーワードを全面に押し出した『NIKITA』(主婦と生活社)以降、30代から40代以降の女性をターゲットにした雑誌は次々と登場している。これは購買意欲を喚起したいという広告出稿側のニーズがあり企画が通りやすいという背景にあるのだが、『NIKITA』が4年も経たずに休刊になってしまったように、コンセプトを練りすぎてターゲットを絞った末に失敗するケースも後を絶たない。

2013年8月号を最後に休刊が決まった講談社の『GLAMOROUS』も「辛口カジュアル」というテーマ設定や「グラ男」というコピーを打ち出していたが、出版あるいは広告サイドの意図通りには読者を獲得できなかった。もっというと「大人ギャル」路線には10万人以上の市場規模はないという証明にもなっている。

同じく休刊が決定した『Grazia』はワーキングマーザーを対象にした誌面作りにシフトさせていたが、そもそも30代で仕事と子育てを両立させている女性でファションやグルメ・観光ができる余裕がある層はそれほど多くないので、ハイカルチャー志向がうまく響かなかったということになるだろう。

講談社の女性誌「グラツィア」「グラマラス」休刊 (Fashionsnap.com)

講談社のリリースによると、3 年後、5 年後も見据えた「新しい雑誌ビジネス」の開発にも取り組むため、新雑誌研究部を立ち上げるとあり、二誌の休刊は、既存の雑誌の生存戦略の一貫という色合いが強い。しかし、講談社の女性ファッション誌は、ここ数年他誌の二番手以下に甘んじており、どれもジリ貧状態だという現実がある。

参考・日本雑誌協会印刷部数
参考・日本雑誌協会印刷部数

日本雑誌協会が公開している印刷発行部数によると、『with』『ViVi』『VOCE』『FRaU』の四誌ともここ四年で順調に部数を減らしている。『with』は2009年10月-12月期には420000部だったものが、2012年10月-12月期には306667部にまで落ち込んでいるのをはじめ、『ViVi』も413334部より323334部、『VOCE』と『FRaU』も含めて2割以上減という右肩下がり状態に陥っている。

この理由を出版・雑誌不況に求められないのは、競合誌の推移を見ると明白になる。『with』のライバルになる集英社の『MORE』は、同じ期間で約43万部で安定している。『ViVi』と対抗する『non-no』は2009年12月に休刊になった『PINKY』を実質的に統合して部数を一気に伸ばした。

ビューティー・コスメ誌は、『美st』をはじめ『MAQUIA』(集英社)、『bea’s up』(スタンダードマガジン)などが10万部前後でひしめく激戦区だったのだが、その中でも小学館の『美的』が11万部と抜けだしており、『VOCE』と約3万7000部の差ができてしまっている。

同様にライフスタイル誌の『FRaU』は、部数を伸ばしている文藝春秋の『CREA』に対して分が悪い。66667部という数字を下回ることになると、休刊の話もちらほら聞こえてくるかもしれない。

ここまで負け続けている状況だと、ブランディングや誌面の内容だけでなく、販売戦略を含めた複合的な課題を抱えていると見るべきなので、デジタルコンテンツ開発や通販、商品化ライセンスといった手数のかかる展開を進めるよりも前に、コンセプトを含めた見直しが必要になってくるのでは、と考えざるを得ない。特に大学生をはじめとする20歳前後のファッション誌離れは加速しているが、それはファッションへの興味が失われていることを意味しない。むしろ「自分らしい」スタイルへの希求は高まる傾向にあるので、雑誌のカラーを時流にアジャストさせていくという作業を遂行できるかどうかに浮沈がかかっているように見える。外野の立場からではかなり難しいだろうという感想を持つけれど。

ひるがえって、『DRESS』もコンセプトありきで読者ニーズをくみ取っているようには見えず、架空のペルソナのもとにキャッチコピーで引っ張ろうという意識は、過去の失敗パターンをなぞっている。強気の部数設定もあり、かなり多方面に火傷が広がりそうな印象だけど、一読者として生温かく動向をウオッチしていきたい。