口座開設時の本人確認の簡略化…本当にやるんですか?

こういう記事が上がっていた。

口座開設時の本人確認、30日からネットで完結 警察庁

これまでネットで可能だったのは口座の申込みだけで、最終的には書類の郵送を通じて行っていた本人確認を免許証と写真の組み合わせだけで完結できるようにする改正を行うとのこと。

メリットは、それに該当する手続きが簡略化されること。同種のサービスに参入したい人の敷居が下がること。

デメリットは、口座番号の信用度レベルが下がること。

現在の銀行口座番号は、かしこまったプロセスのおかげで信頼性の高い情報として考えられてきた。

ネットのサービスの問題は対面が不可能なので、本人確認の信用度は対面と比べては高い状態とは言えない。その状態の中で、行動履歴から不正ユーザーを洗い出すなどの取り組みが不可欠である。

一方、銀行口座情報は銀行窓口での対面での取引や、リモートでの申込みにおいても、それに相当する厳しい本人確認を経て作られたとても貴重な情報として考えられていた。別に対面だからと言って不正がないわけでもなんでもないのはミナミの帝王でも見てればよくよく思う所ではあるが、とはいえ、一度はそこに訪れているという行動履歴の存在は、ボットによるID自動生成などを視野に入れなくてはいけない世界から見ると地味に絶大である。

カラオケボックス等の会員カードとして、運転免許証や写真付きの本人確認書類が重宝されているのと同じく、対面を通じて作られている口座番号は、それを持つための一定のコストを払ってるという意味で、貴重な情報として考えられる。

そのため、ネット上のサービスは、その利用者がその口座番号の持ち主であることを確認されていれば、口座番号に頼った本人確認に近いものが得られると考えることは不可能ではなかったが、この改正で、口座番号の信用価値が下がってしまう可能性が考えられる。

もし価値が維持されていれば今後、銀行APIが普及した際に認証をするだけで本人確認相当の確認が取れたものとして、なんならネット系企業は、その認証に対して銀行に照会料を払ってもいいぐらいの貴重な情報だと考えていたが、残念ながら、この改正でビットコイン取引所で行われている本人認証と同レベルの信用レベルになってしまうかもしれない。

本来ならお金の出入りに関する認証プラットフォームとして絶大な存在感をネットビジネスに対して及ぼせたハズなのに、と思わざるを得ないところもある。

実際メガバンクなどがどのような動きをするかによっては、特定の銀行であれば信用できて、それ以外のネットバンクはアテにならないなどの差別化を図っていくことは可能かもしれないが、どこの銀行は信用できてどこの銀行は信用できないとなるのも、それはそれでややこしいので望ましい状況ではない。

この取組が本当に意味のあるものなのかは個人的にはあまり理解できないというのが正直に思った所。サービスレベルがネットビジネス側に寄ってくると考えれば、同じ土俵に近づいていくのでネットビジネス側は有利と言うことなのかもしれない。

何せ日本のフィンテックにおける障壁への打開策とは昭和の時代に完成している銀行システムを如何に破壊するかということに他ならないのだから、このような規制緩和はポジショントークとしては、本来歓迎以外のなにものでもない。遅々として進まない銀行APIのビジネス化も、その先のビジネスの成功例が見えなければと考えれば、ベンチャーがリスクを取って道を切り開いてメガバンクが追従し、ようやくみんなの生活に影響を及ぼし始めるというシナリオも期待はできる。

一方で、重要なのは規制緩和に伴って、回り回ってとばっちりを受ける消費者が増えないことに尽きる。銀行口座のように普及率が100%に近いものを規制緩和をしてどういう意味があるのかはイマイチわからないが、サービスレベルが落ちて、困る人がないようにしっかり議論されたものとして期待するしかないが、個別最適のプロセスの簡略化だけにこだわって、銀行がもたらす価値と言う大切なものを見失ってないかだけは心配である。

考え方が間違っていたら、知見を広げたく是非コメント欄で教えて欲しいものである。