新宿ゴールデン街に感じる運営とユーザとの心理的距離とコミュニティの関係性について

ここ半年ほど、新宿はゴールデン街のいくつかのお店に入り浸っている。

ゴールデン街のお店は、7~10人程度しか入れない広さのお店も多く、ホストとなる店員さんは1人か2人を中心になる。店員さんの力量で他のお客さんとの間で話題も自ずと共有され、知らない人とのコミュニケーションを楽しめることが最大の魅力とも言える。

お店の広さ、すなわち、お客さんの人数と距離とコミュニケーション密度との間には明確な相関が期待できる。

ゴールデン街以外の飲み屋に1人で飲みに行くと、筆者のコミュ力では基本的に暇で、ひたすらスマホをいじっていたりするが、これは要するにお店の面積が広すぎて他の人とのコミュニケーション距離が遠いので、お互いが会話するまではリーチする気が起きない。

ゴールデン街のお店ではスマホを見ている時間があったら、その場の話題に参加することを考えたほうがいいし、いい感じにお店の中でコミュニケーションの輪に巻き込んでくれる店員さんがいるお店こそが、優れたお店だと考えることができる。

基本的に1人でスマホを見るような状況になったら、もう店を出たほうが良いので、オフ会などの飲み会でぼっちになってしまい、ひたすらスマホをいじって時間を潰すような状況とは違う状況が経験できる。

そのコミュニケーション可能性への期待感を抱けることが、この街にハマる要因である。

また、たまたま行ったお店で、WEB系の人ともばったり出会うことも多く、初めて入ったお店で、以前お世話になった人が、さっきまでこのお店にいて忘れ物を取りに来てばったり出会い、そのまま飲み始めるなどと言った出来事は、さすがに運命を感じた。また、お客さんが入ってくるなり、何故か僕のネットでの発言をよく知っていて、そのままWEB業界の人生相談になるなんてことも起きたりして、なかなかおもしろい。

ゴールデン街に通い始めたのは、友達に連れてきてもらったのがきっかけだ。

「ここならまた来れそう」というホームとなるお店を見つけてから、そこを軸足に他のお店を開拓していった。

昔、パソコン通信をやっていた時、そこのネットワークの常連と仲良くなるためには、ちょっとした無理をするべしという経験則から、毎日日替わりで店番の人が変わるお店で、毎日通ってみて、そのことを話のネタにしたりした。何も自分をカッコつけたり大きく見せなくても、その場で認知してもらえるだけのコンテンツ性は作れる。

パソコン通信は、接続先のホストに用意されている電話回線の数しか同時に接続できないので、言ってみればゴールデン街の小さなお店の椅子の数みたいに限られたリソースである。どこのお店に行って、どういう人と出会うかという日替わりのインスタント&リアルタイムコミュニケーションが、昔ながらのネットコミュニティに出入りしていた時代を思い出して懐かしい。

その一方、行く店行く店で「始めてゴールデン街に来ました」という人に出会うので、決して常連だけで埋め尽くされていないということはよくわかる。外国人観光客であれば、最初で訪れるケースも多く、こちらも片言すぎる英語で、そのまま盛り上がり、最後はハグして帰るなんてことも少なくはない。

いずれにせよお店の店員さんがコミュニティマネージャーとして機能していて、場の雰囲気と客層を構成する。個人的には若すぎる客層のお店や、オッサンすぎる客層のお店はいずれも疲れてしまうので、多様な世代が成立しているお店が好みである。

客層と言っても、常連だけで構成されるのではなく、初めて来る人達の雰囲気も醸成しているのが非常に面白い。狭い階段の上にある2Fのお店で、新規顧客の流入のしやすさを構成するのは何故か?などを考えたりすると思考実験になる。

最近、ようやく気がついたのだが結果的にゴールデン街の楽しさというのは、お店のかわいいお姉さんを探す旅ではなく、自分にあったお店の場を構成する客層を見つけるための旅だと考えるようになった。ゴールデン街にはなんと300店舗ものお店があるので、失敗したなと思っても別のお店にチャレンジすればいいのだと思います。

こちらのサイトからお店の一覧地図がダウンロードできます。

新宿三光商店街振興組合 公式ホームページ

学生の頃に楽しんでいた、パソコン通信時代の掲示板を見つけるような旅である。ゴールデン街のお店のような分散ホスト構造のネットワークの成立を期待して自分もマストドンのインスタンスを運営したりしているが、ゴールデン街のような賑わいはまだまだ足りないという状況である。マストドンに足りないのは、昔のBBS電話帳のような多様性をとりまとめるメディアの存在だと言える。それ以前にまだまだ多様性が足りないか。

やはりコミュニケーションの期待をもった人達による人の流れと、客層のダイバーシティはとても重要なポイントで、そこからさまざまなユーザクラスタをどのように切り取れるか?というのがお店の力量ということになる。新宿区歌舞伎町1-1という混沌とした場所の魅力は圧倒的で、元IT系の人が独立してお店を持ったなんて話を聞けば、将来的にゴールデン街にお店を持ってみたい気持ちにもなってくる。

また建物も老朽化しているようでゴールデン街の特徴である部分が、築地やその他の場所のノリで、今後の再開発で壊されるのではないか?などと言った話も聞いたり聞かなかったりするが、ここが再開発されて、例えば恵比寿横丁みたいなオープンコミュニケーションになってもダイバーシティは失われ、再現性がない世界になってしまうと思うので、時代の流れを積み上げて構成された奇跡の場所は、簡単には作り直せないですよ、というのも含めて、末永く残ってほしいものである。

なにせ外国人の旅行先の聖地にもなっているわけなので、2020以降の東京においても重要なコンテンツだと思いますので。

外国人の人たちに話を聞くと、やっぱりこの広さ、この密度で飲める場所なんて、そうそうないのでしょう?あと真夜中にやっているという部分も安全な東京ならではの風景だと思います。