新国立競技場の建設問題で、新しい展開があったようです。

新国立設計ザハ氏と契約解除へ…文科省など検討 : 社会 : スポーツ報知

2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場(東京都新宿区)の整備計画が大幅に見直される問題で、文部科学省などがデザイン監修者としたイラク出身のザハ・ハディド氏(英在住)の事務所との契約解除を検討していることが5日、分かった。政府関係者が明らかにした。ザハ・ハディド・アーキテクツ側と設計を変更するよう交渉を行い、不調に終わった場合、契約を解除する方針だ。

もともとの案は、そもそも東京のど真ん中で建築できるか?という話がありましたね。そういうのを受けるとザハ氏に問題がありそうについつい見えてしまうわけですが、少し調べてみると違う側面が見えてきます。

磯崎新による、新国立競技場に関する意見の全文 | architecturephoto.net | 建築・デザイン・アートの新しいメディア。アーキテクチャーフォト・ネット

(2)、その案を作成した「建築家」を選ぶ。プログラムに変更があるとき、その建築家が条件に適合する新しい案の作成者になる。(建築家の潜在的能力が評価される)

私のかかわったオリンピック施設の場合は常に(2)のケースでした。私は新しい条件に対応して、更に新しいアイディアを加えて、実施設計から管理までつき合うことができました。プロフェッショナルな建築家であれば、状況の変化に柔軟に対応できねばなりません。今回の当選者ザハ・ハディドは、30年前に私はその才能を発見して、その後いくつかの共同の仕事をやった建築家で、彼女のプロフェッショナルな能力は抜きんでており、どんな困難な時でも自ら主体的に参画していれば、自らの署名をそのデザインに残しうる人です。修正案にはその片鱗もみえない。歴史的な誤謬がおかされた、と言わざるを得ません。

新国立競技場問題で注目の建築家『ザハ・ハディド』展を見る - 連載・コラム : CINRA.NET

この新国立競技場設計案は、コンペ提出時にも、コンペを通過した後も、スケールを縮小したり、建物の向きを変更したり、やむなき事情で修正を繰り返しています。その理由を光嶋さんに尋ねると、本来は設計者を選ぶのが建築コンペであるのに、新国立競技場に関してはデザイン監修者のみのコンペティションであり、実施設計は別の人が手がけ、コンペを通過したザハは、あくまでアドバイザー的な立場になってしまうなど、責任の所在が曖昧だったり、新国立競技場計画にまつわる問題は複雑なようです。

典型的な船頭が二人以上いる問題が起きてる模様。

私が存じ上げないだけかもしれませんが、そもそも建築家であるザハの名前は出てくるのに、このプロジェクトを統括しているプロジェクトマネージャー(PM)の名前が出てこないのはおかしいですね。

まるでザハ氏が悪いように言われてるような気がしますが、磯崎氏の発言を見る限り、コンペの後の実現性を全うしてこそのデザイナー(建築家)であり、ザハ氏はそれを全うできる人材であると仰られています。

問題の本質がオリンピックが政治の目的と、都市計画という街づくりの問題であることが混在しているというのは重々わかりますが、それらをまるっとまとめあげるのが、優れたプロジェクトマネージャーの仕事だとも思いますが、その人の名前が前に出てこずデザイナーのせいにされてる以上、そりゃうまくいかないよなぁ....と。

以下の記事を読むと、東京オリンピックには、田中角栄氏という強烈なビジョナリストがいたと言うわけですね。事務方であるPMがその後ろにいたにせよ、企業で言うなら社長として、プロジェクトのビジョンを担った名前が一番前にいるということは非常に重要です。それがいないならPMの人が一番前に立つしかないと思います。

代々木体育館は田中角栄という政治家と丹下健三という建築家のコンビであの時代の日本を歴史に刻んだと言ってもいいと思います。ではこの案はいったい何を歴史に刻んでいるのか。あるいはそもそも刻むという意識があるのかどうか。ザハはここで何を刻んでいるのか、あるいは審査員にも同じことは言える。安藤忠雄さんや鈴木博之さん、内藤廣さんたちはこれを選ぶことでいったい何を刻んだのか。曖昧であることは、責任のあり方に行き着きます。おそらく100年後にこの建物を見たらこれがどういう社会を背景としているか、ありありと見えるにちがいありません。

出典:新国立競技場──ザハ・ハディド案をめぐる諸問題

これだと周囲にいた人は、最初から負けが見えてたからババは引きたくないと思って過小責任モードに入ってたか、そこまで権限が移譲されないのがわかってるから、まぁ別に言われたことだけやっとけばいいんじゃね?、という雰囲気がありありと伝わってきます。

この話を、私がいる業界に置き換えて書くと、

Web作ろうとデザインのコンペを募集して、でも実際のデザイン作業は別の人も関わって、しかもPMがいろんな人の意見をまとめあげられずに、デザインがしょぼくなっちゃった上に、しかも納期に間に合わなくなっちゃって、どうにかやり直すために、すでにアドバイザー役になってる最初のデザイナーをクビにしたいんだけどどう?

みたいになってるあるある話の部分にこそ共感を持たざるを得ません。

今更、別にザハ氏をクビにするのだとか状況状況にあわせて朝令暮改みたいになるのはいいにしても、完成へのビジョンだけは遂行いただくようお願いします。

このままだと、典型的な開発の失敗パターンが可視化された事例として、後世に語り継がれる結果になりそうですが、はたしてどうなることか。

そういえば、これ税金で作るんでしたっけ?