SNS上で、嘘大げさ紛らわしい情報が闊歩しているようですが。

震災の時にTwitterでデマが周ったのは記憶にあたらしい。当時起きたことは意図的なデマというよりは、「良かれと思った未確認情報」が結果的にデマだったというものが多かった。

最近、東京ガスのCMについて、ちょっとしたトラブルがあった。サイバーエージェント社が運営しているバイラルメディア(情報をシェアさせることでPVを集める、最近流行ってるネタサイト)で、東京ガスのCMが打ち切りになったという話で賛否が巻き起こった

このCMは就活をテーマにしたCMで、確かに衝撃的な結末で終わるCMだ。

しかし実際は打ち切りになったというのは大げさな情報だったらしく、ちょっとしたクレームがついたぐらいの話だったそうだ。しかし、その話が誇張と伝聞で伝わって「批判のせいで打ち切りになった」と伝えられてしまった。僕もFacebookのシェアで、このニュースを見て、Amebaというロゴを見て、正しいものかと思って感想を書いたら、嘘だったことが後からわかった。他にもネット上にファンが沢山いる経営者の人なども、ついシェアしてしまい、大量のいいねやシェアがついていた。

嘘の情報に心を奪われることほど無駄なものはない。うっかり良心や正義感に従って思ったことが実は全部空回りでしたというのは、非常に徒労を感じる。

先日、このblogでFacebookのタイムライン制御に関するネガティブな話を書いたら、すごく反響を呼んでしまったことがある。その影響でYahoo!newsのトップにも表示されたらしく、相当のPVが集まってしまい、親戚からも連絡が来るぐらいのリーチをしてしまった。Facebookでネガ・ポジ関係なく大量のシェアを生むことは、対象ページに大量のPVを生む。バイラルメディアはPVを集めるのが仕事なので、その結果として広告収益に繋がる。この記事が、果たしてCAさんのバイラルメディアが意図的に仕掛けたものかはわからないが、結果としては、それなりに多くのPVが集まったハズだ。

別にそんな現象は昔から「釣り」というキーワードであったが、それにしても、最近、このような状況が加速しすぎていて危機感を感じる。

この件に限らす、最近、Facebookでは犬やネコの映像が流れていていたり、センセーショナルなニュースが流れていたりする。犬猫は実際にカワイイ映像なので良いじゃないか!と思うし、そう言う人も沢山いるだろうが、それを提供しているバイラルメディアには、必ず「営利」という目的があることを忘れてはいけない。

ネットメディアの場合は、目的はまず100%、PVを集めることだ。今は1PVあたりの価値を推し量る手段がないから、どんな内容でもPVを集めたほうが勝ちという基本的なビジネスルールがある。そして、こういった情報にユーザーの可処分時間が取られてていくことで、メディアとしての質がどんどんどんどん下がっていくし、見ている側も乱暴に言えば「バカになる」。そして、それまでFacebookのタイムラインでは有意義な情報を得られていると思っていた場所が、どんどんそうではない情報にうめつくされていくのは間違いないだろう。

そういう行為の先人であるテレビは、「つまらない」とまで言われるようになってしまった。数字を取るために低きに水が流れる方向に最適化されていくと他の業者も止められなくなる。何故なら、それが「ユーザーニーズ」だからだ。「面白いから、かわいいから良いじゃない!」と言う人達によって正当化されていき、そういう行為をPVやいいねという形で肯定してしまう。お金を稼がなくてはいけない業者はユーザニーズには逆らえない。そうなってしまうと、ある種のバブルのような状態が生まれてしまう。これは自由経済の負の面にあるどうしようもない仕組みなのだろう。

CAさんの件も、好意的に捉えれば、他のバイラルメディアに負けじとスピードを優先した結果、こうなってしまったのかもしれない。未確認の情報でも毒のある情報を流してしまわないと、他のバイラルメディアに取り上げられたら負けだからだ。競争というのはいい面もあれば悪い面もあって、今回は悪い方向に出ているのではないかと思うし、どうも最近、そういう現象が増えているように思える。

少し前であれば、ある程度のリテラシーがある人は、そういう情報に飛びつかなかった。震災の時にデマが流れても割と冷静でいられたのは、まず決してネット上で信頼のあると思われてる人が釣られたわけではなくて、ネット上での信頼があまりない人が釣られていたケースなので、そもそもそれって本当なの?という視点を持ちやすい前提条件があったと思う。もちろん震災直後で、例え東京都市部においても冷静になりたい人と、冷静になれない人のコントラストがはっきり見えていたせいもあるだろう。

最近は、そういうのがゴチャゴチャしてきた感がある。識者と思われていた人が、ついつい釣られるようになった。何せ情報のシェアがどんどん簡単になってるので、酔っ払ってる時にでもクリックミスをしてしまえば大きく広がる。信頼のある人と言っても、別に生活の襟を正してインターネットをやってるわけでもなく、その実、タダの人なのだから、普通の人としてあるがまま行動した結果、その人達を信頼している人たちが更に釣られるという形で、文字通り「バイラルしていく」というタチの悪い構造を生み出している。

また、そういう人たちの正義感を刺激するコンテンツが増えているのもあるだろう。このCM打ち切りの話のベースにあるのは、最近、騒がれている「消費者のクレームに企業は屈するか否や」もしくは「炎上を恐れて過度に自主規制したくなってしまうか」という部分への刺激である。ソーシャルメディアを通じて、余計に力が増大した消費者と、企業はどう付き合っていくか!?というテーマの話題は、今、ソーシャルメディア上では関心の高い話題です。ネタとして炎上すれば炎上が好きな人に響きますが、その逆に、及び腰になれば及び腰になるのを批判したくなる人に響きます。バイラルメディアの人たちは、そういったユーザーの関心をうまく汲み取りPVに変えるのが仕事です。釣り記事に含まれる思想は、複数のメディアを通じて濃縮されていきます。

こういった流れの先に、ネットに明るい未来が待っているのかというのは非常に怪しい。現在得られるネットアテンションを、メディア間の競争という形で、人のアテンションを焼き畑のように狩ってしまっているからだ。…が、マイルドヤンキー論ではないが、数多くのクラスタに所属している人の意思が可視化されているのが今のインターネットなわけで、これこそが「あたりまえのインターネット」の形なのかもしれない。ただ、だから余計に人を釣ったもん勝ちという状況は是正されねばならないだろう。

追記:

CAさんだけじゃなかった。というかCAさんも釣られた側か。

テレビCM:リアルな就活 批判受け東京ガス放映打ち切り - 毎日新聞

この記事を読むと、批判と打ち切りは必ずしも関係ないことがわかります。何を強調すべきか、という話ですよね。あるべき見出しは、

「家族の絆・ばあちゃんの料理」編が広告賞の最優秀賞に内定したので放映中の広告を切り替え

ですが、これでは世間の注目を浴びられないと判断されたのでしょう。でも、そこで完全にミスリード狙ってますよね。世の中こういうものなんですかね。もしくは、バイラルメディア、キュレーションメディアを通じてミスリードの濃度が深まっていくことを嘆くべきか。

「嘘を嘘と見抜ける人じゃないと」というネットを楽しむための名言があるが(正確には2ちゃんねるの話だけど)、権威のあるメディアにやられてしまうと、今の状況を乗りこなすのは少し難しい。なお権威のあるメディアにある信頼とは、「嘘大げさ紛らわしいようなことは書かない期待ができること」ということを信頼と言うのだと思います...

追記2:

こちらはプロの視点からの別の推測です。もう少しCM打ち切りはセンシティブな話題なんだよ、というお話です。

【改題】j-castニュースは東京ガスに取材したの?<CM打ち切りの件について>

もしこのニュースにあえて伝えられてない部分を深読みしてしまうなら、企業のPRは、失敗してもダメだけど、及び腰になってもダメということなのかな、なんて思っています。ネットでセンシティブな話題を「事なかれ」みたいに収めると、余計にネットで騒がれることが増えているような気がします。是非、ネットメディアの方には、真偽を取材していただき教えて欲しいです。

なお、関係ありませんがネットメディアの方には「セブンカフェのコーヒーメーカーの現場カスタマイズは元々設計に入っていたのか否や」というのも是非取材して教えていただけるとありがたいです。