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武井咲さんは「フラジャイル」続編で病理医役ができる~進む遠隔病理診断

榎木英介病理専門医&科学・医療ジャーナリスト
遠隔病理診断は急速に進歩し、どこでも病理診断ができる時代が来つつある(写真:アフロ)

美男美女カップル誕生だが…

 え?あの二人は愛し合っていたの?

 まさかの人気者かつ美男美女カップルの誕生だ。EXILEのTAKAHIROさんと、女優の武井咲さんが9月1日、結婚を発表した。子宝にも恵まれたという。

 少子化、非婚化が進む日本にとって祝福すべき出来事だ。お二人には幸せな家庭を築いてほしい。

 ただ、いくつか問題も出ているらしい。

「フラジャイル」はTOKIOの長瀬智也ふんする偏屈イケメン天才病理医が主人公。武井はヒロインの新米病理医を演じた。関係者によると、武井は今春、続編出演を打診されていた。しかし、来春に出産を控えた体型が出演できるかどうか、体調面の心配もあり、不透明。原作漫画にも登場する重要な役だけに、続編から姿を消すことは難しく、続投か代役か、フジ側は頭を抱えている。

出典:デイリースポーツ記事

 「フラジャイル」といえば、昨年1月から3月に放映された病理医を主人公とするドラマで、病理医の私たちも大興奮してみていた。

  1. 全国の病理医が待ち望むドラマはじまる
  2. 祝好評終了!病理医ドラマ「フラジャイル」の健闘をたたえる

 放映以来、病理医の認知度は確実に高まり、病理医志望者も増えている実感がある。中学生になったばかりの芦田愛菜さんが病理医志望を口にしたのもこのドラマがきっかけだ。

 武井さんは新米病理医宮崎を好演していた。宮崎は「フラジャイル」には外せない重要キャラクターだ。このドラマのファンとしても武井さん演ずる宮崎を再びみてみたい。もちろん体調優先だから、過酷なドラマ撮影が難しいのは分かる。悩ましいところだ。

 「フラジャイル」よりEXILEか…

「遠隔病理診断」がある!

 ここで一つの提案がある。

 それは、武井さんにそのままの妊婦の病理医を演じてもらうことだ。

 カギになるのは「遠隔病理診断」だ。

 病理診断の基本は、顕微鏡を使って、ガラスの板の上に張り付けられた病気の組織の標本を見て、それががんかがんでないか、がんだとすると何がんか、などを診断する。顕微鏡の進歩は著しいが、顕微鏡でガラス板を見て診断するという基本は変わっていない。

 ところが、近年、病理標本をデジタルデータとしてコンピュータ上に取り込むことができるようになっている。このデータをコンピュータ上で再構成して、一枚の標本のようにみることができる。バーチャルスライドだ。

 日本ではオリンパス浜松ホトニクスの製品が普及している。

 病理標本の画像データ化によって、サーバー上に保存されたデジタルデータにインターネット回線経由でアクセスし、病理診断ができるようになった。遠く離れた遠隔地で病理診断ができるようになっただけでなく、タブレット端末を利用して、技術的にはどこでも診断ができるようになったのだ。

既に、東北大学ではバーチャルスライドによる遠隔病理診断システムをVPN(仮想プライベートネットワーク)を用いて構築済み。東北大学病院 病理部 特命教授 がんセンターテレパソロジーセンター長の渡辺みか氏は、学会出張の際などに「iPadを使って病理診断を行っている」と話す。

出典:「病理画像」もiPadで診断する!

 この技術を利用すれば、産休中、育休中の病理医が、自宅で病理診断をすることだって可能なのだ。

 武井さんが妊婦の病理医として、タブレット端末をみながら病理診断するシーンを見てみたい。

病理医の働き方改革は吉報か

 ドラマ「フラジャイル」には原作の漫画があるし、重要キャラの設定を変更することは簡単ではないと思う。まあ、言ってしまえばファンの妄想だ。

 だが、上で説明した最先端の病理診断技術を使えば、こうしたキャラ設定が決して妄想の話だけではないことは分かっていただけただろう。

 もちろん、こうした遠隔病理診断が現場に普及するにはまだ、しばらく時間がかかるだろう。病院外で診断することは、医療法のグレーゾーンだし、個人情報の漏洩には相当に注意を払わないといけない。顕微鏡に慣れてしまうと、画面を見て診断することには戸惑いを感じることもある。

 しかし、病理診断のデジタル化の流れは止まらない。将来的には人工知能が病理診断を担う時代も迫っている。

 病理診断は病院でしなければならないという固定観念が崩れ去ろうとしているのだ。

 こうした新しい技術は、病理医の働き方にも大きな影響を与えるだろう。

 通勤が不要になり、楽になるのか。人材の活用が広がるのか。それとも、24時間診断に追われて気が休まらなくなるのか。

 地理的な制約を超えられるということは、諸外国との競争にもなるということだ。安くて正確な診断を売りにする国が現れ、どんどん仕事を奪っていくかもしれない。放射線科ではすでにインドが先進国の画像診断を請け負っている。

TS社がインドの昼間にデータを処理し、米国の医師が翌朝、病院に着くころには立体画像が届く。「米国の医師・技師の肉体的負担は軽くなるし、病院のコストダウンにもつながる。米国で処理するより3分の1の費用ですむ」と、ディピカ・ベディ管理部次長。

出典:24時間態勢で患者の立体画像を世界へ

 病理医も含めた医師の働き方に大改革をもたらす遠隔医療…今後の医療を考える上でも、武井さんの病理医をみてみたい。

病理専門医&科学・医療ジャーナリスト

1971年横浜生まれ。神奈川県立柏陽高校出身。東京大学理学部生物学科動物学専攻卒業後、大学院博士課程まで進学したが、研究者としての将来に不安を感じ、一念発起し神戸大学医学部に学士編入学。卒業後病理医になる。一般社団法人科学・政策と社会研究室(カセイケン)代表理事。フリーの病理医として働くと同時に、フリーの科学・医療ジャーナリストとして若手研究者のキャリア問題や研究不正、科学技術政策に関する記事の執筆等を行っている。「博士漂流時代」(ディスカヴァー)にて科学ジャーナリスト賞2011受賞。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。近著は「病理医が明かす 死因のホント」(日経プレミアシリーズ)。

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