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不登校の小中学生16万超え 「それも認める」ならネット学習を強化せよ

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(写真:アフロ)

 10月26日、朝日新聞に「不登校生「出席」 文科省、学校復帰無理に求めない方針」と題する記事が掲載された。

 不登校の小中学生は年々増加している。2013年は12万人だったが、2018年には16万5千人と、5年で4万人以上も増えている。そこで文科省は、学校復帰を前提とした支援から、フリースクールなどに通う不登校生も「出席」扱いにしやすくするよう、方針を変えるようだ。

 これまでも、何らかの形で学外で学習する不登校生を出席扱いとする制度はあったが、あくまでも学校復帰を前提としていた。しかし昨今、多様な学びの場を認める動きもあり、今回の方針転換に至ったようだ。重要なのは、将来的に本人が学校復帰を希望したときに、円滑に戻れることであろう。ちょっとくらいレールから外れても、逆転できる世の中のほうがずっとよい。

 ということで文科省の皆さん、そろそろインターネット学習に本腰を入れないでしょうか。自宅からPCやタブレットを使って学習できれば、気分が落ち着いているときに学べるし、学校に通う子供たちに遅れることもなくなる。それから、学校の授業の復習にも使えるし、家庭の事情で海外に行く必要のある子供の不都合も解消される。

 いいことずくめのネット学習、やらない手はないのである。

どうせなら最高の教育にしよう

前にも書いたが、東京大学とベネッセ教育総合研究所が行った「子供の生活と学びに関する親子調査」によれば、勉強嫌いの子供は小学校から中学校に上がる際に一気に増加する。

 勉強が「嫌い」(まったく+あまり好きではない)な児童生徒は、小学校1~6年では2~3割で推移していくが、中学校に上がる段階で一気に45.5%にまで増え、中2になると57.3%にも達する。以後、勉強が嫌いな学生は、平均して6割をキープしていくのが現状である。

 嫌なことに取り組むことで忍耐力が鍛えられるという意見もあるが、人生は学びの連続だ。勉強が嫌いなままだと、なかなか不幸な人生を送ることになる。また、勉強が好きになると、成績も上がる。それならインターネット学習は、楽しく学ぶ環境を整えることに重点を置こうではないか。

 だいたい、現在の教科書は面白くないばかりか、何が言いたいのかもよく分からない。例えば山川の日本史教科書には「信長は1560(永禄3)年、上京をくわだてて進撃してきた駿河の今川義元の大軍を尾張の桶狭間の戦いで破り、1568(永禄11)年には京都にのぼって足利義昭を将軍にたてた」とある。戦った理由もなければ、なぜ急に義昭が出てきたのかも不明である。こういう教科書では、自宅での学習はできない。

 子供たちが好きなのは、動画や漫画である。よって教材は、すべての教科において、これらを用いて学べるものがよい。どこぞの大学の通信課程のように、文字びっしりのパワーポイントを映し、抑揚のない声で小難しいことを話し続けるようではいけない。学びの意味を伝え、興味を喚起し、メリハリのあるストーリーを作成することで、学習後の充実感を覚えさせるものでなければいけない。

 人は、興味のあることは勝手に調べるものだ。よって子供たちの知的好奇心を満たすためにも、副教材は充実していたほうがよい。漫画でもよいが、しっかりと文字で学びたい子供や、授業後に復習したい子供のためにも、相当分量のある教材を用意してほしい。ド田舎出身の筆者が主張するに、勉強したいのにできないのは、非常に辛いものがある。

 そうすれば、学校に通う子供においていかれないどころか、彼らを出し抜くことだって可能である。そこまでいって、ようやく多様な学びを認めたことになろう。たとえ学校現場に適応できなかったとしても、自分のやり方で、自分の人生を切り開く。学習する機会が準備されていれば、努力次第で人は、どこまでも行くことができるのだ。

現場の教師の助けにもなる

 すでに知られているように、小中学校の教師は過酷な労働環境で働いている。

平成28年の調査によれば、教員の平日1日当たりの平均勤務時間は、小学校で11時間15分、中学校で11時間32分。実に小学校では33.5%、中学校では57.6%もの教員が、厚労省が定める過労死ラインの月80時間を超える残業を行っているのである。

 そういう現状のなかで、授業についていけない子供たちの面倒をみることができるだろうか。現場にもっと頑張れということは、さらに事態を悪くするだけである。したがってインターネット学習は、現場の教師の負担を減らすための、教育支援ツールとしても導入されたい。授業準備の時間を減らし、授業後のフォロー活動や、テストの採点などの付帯業務を減らすためにも、活用できるようにしたい。

 最終的に筆者の言いたいことは、すべての授業においてインターネットを活用して行う方針へと、シフトすることである。あるいは、紙の利点と電子の利点とを併せて考えることで、効率的かつ効果的な教育を行う環境を整えることである。企業における働き方改革も同様だが、現場に残業するなと言ったところで、仕組みが整っていないことには不可能である。また、効率を上げる方法を教授しないことには、現場は右往左往するばかりである。

 現在の学校教育の仕方では、あまりにも現場の教師の精神的・肉体的負担が大きすぎる。心に余裕をもった教育でなければ、まっとうな人間は育たないのだと、改めて強調したい。筆者は、悩める子供たちや、助けたくてもそれができないお人よしの教師たちの姿を見たくはない。インターネット学習の充実が、彼らを救うための手段であろうと考える。

皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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