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高齢者の起業はメリットだらけ 充実した日々を過ごすための起業のすすめ

遠藤司SPEC&Company パートナー 皇學館大学 非常勤講師
(写真:アフロ)

 「高齢化問題を解決するいちばん簡単な方法は「高齢者」をなくすこと」の中で、高齢者こそ起業を行うのにふさわしいということを書いた。

 記事の中で言いたかったことは、ビジネスの世界においては「高齢者」という概念をなくしてしまうべきだ、ということであった。あるいは、既存の企業から「高齢者」をなくすこと、つまり高齢者の皆様にはむしろ起業をし、やりたいことをやって元気に暮らしてほしい、ということであった。

 現状のところ、高齢者という言葉はある意味でレッテルを含む。年齢が高く、仕事をするのにふさわしくないという印象を与えるのである。実際にはそんなことはない、高齢者と呼ばれる人たちはピンピンしている。貧弱な私よりはずっとバイタリティがある。年寄り扱いをすると怒られてしまうこともあるくらいだ。そういった「高齢者」の方々にこそ、前向きに新たなことを始めていただき、日本に活力を与えて欲しいと筆者は思っている。

 突飛なことを言っているだろうか。そんなことはない。中小企業庁が発行している『中小企業白書(2014年版)』のなかに「起業希望者及び起業家の年齢別構成の推移」という項目があるが、そこには各年代の起業家の割合が掲載されている。2012年時点のデータを見ると、実に60歳以上の起業家の割合は32.4%にも達しているのである。30歳未満は11.9%にすぎない。高齢化の影響もあってか、若者の起業家の割合は年々減ってきている一方で、60歳以上の割合は増えてきているのである。

 ようするに、乱暴にいってしまえば、みんなやっているのである。起業というと大層なことだと思われがちだか、そんなことはない。高齢者に対する起業の実際と、そのメリットについてまとめていきたい。

さほど成功しなくても食っていける

 まず、起業とはどういうことなのかを、述べておきたい。

 起業というとイメージとしては「一発でかいビジネスをぶち上げること」のように思われがちであるが、そんな大層なものではない。起業とは、何らかの価値をもつものを世に提示し、それに対してお金をもらう仕組みをつくることである。その条件さえ満たしていれば、それは起業である。しかも多くの場合、特別な手続きなどはいらない。会社をつくる必要もない。はじめてしまえばそこから起業スタートである。

 始めたからには続けていきたい。続けていけない状況は一つ、食っていけないときである。したがって、食っていけるくらいの儲けがあればよいのである。ただし、税務署への申告はちゃんとやっていただきたい(簡単である)。

失敗リスクが小さい

 そう考えると、若者よりも高齢者の起業は失敗するリスクが少ない。すでに子供が経済的に自立しており、夫婦で食べていけるくらい稼げばいいからである。また、もしも失敗したときのために年金がある。年金はセーフティネットである。よほど深刻な事態にならないよう、ビジネスを回していけばよいだけである。

そういうわけだから、どんな起業ができるかは想像にやさしい。知っている例を適当に列挙する。

・トマトを栽培して、楽天やAmazonなどのネットで販売する

・古民家を改造して、外国人旅行者の宿泊客を呼びこむ ※民泊の許可が必要

・読書ブログをつくり、アフィリエイト(ネット広告)でかせぐ

・ラーメン屋台を担ぐ

・これまでの仕事の知識を活かしてコンサルタント

 実はこれらはいずれも結構儲かっている事例である。初期投資もかからないし、簡単である。明日からでも始められそうである。趣味が高じて、というレベルでもよい。やりたいことをやればよいだけである。

 なお、日本政策金融公庫がシニア向けの起業家支援基金というものを設けているが、最初はそこまでの規模の起業を目指す必要はない。手元にある貯金をいくら割くか、という考えから始めたほうがよいように思う。新しく何かを始めるときは、スモールスタートが原則である。

寿命が伸びる

 変なことを言うようだが、おそらく高齢者が起業をすることで寿命が伸びそうである。

 マウントサイナイ医科大学の研究によれば、高い目的意識をもっている人は、死亡リスクや心血管疾患の発症リスクが低く、健康寿命が長いようである。つまり、生きる価値、生きがいを見出し、他者の役に立っていることを実感している人は、長生きができるのである。ビジネスというものは、社会に何らかの価値を提示することであり、まさしく役に立つ何かを示すことである。そのような起業ができているならば、寿命は長くなるはずである。

 これは高齢者のみにいえることではないだろう。すべての働く人は、働くにあたって目的意識を持ち、前向きに取り組むことができなければ、心身ともに健康を害する。仕事に生きがいをもてないならば、生きがいをもてる仕事に移るべきである。

 高齢者の皆様は、健康のためのスポーツよりも、ビジネスを始めるべきである。

毎日がずっと充実する

 インターネットで高齢者の生きがいについて検索すると、多くの人が定年後の生きがいについて不安を抱いているようである。また、退職後の高齢者の生きがいづくりをビジネスとして立ち上げている例も数多くあるようである。

 日経新聞の記事をみると、定年を迎えた高齢者の「就活」が大変そうである。職を見つけられても、どうやら65歳までとか、長くても70までといった場合がほとんどであろう。

 その後はどうするのだろうか。生きがいを持ち続けて、誰かの役に立って生きていかなければならない。

 そうであるから、いっそのこと再就職などせず、最初からやりたいことを始めてしまったほうがよいのである。そうすればこの先働きたい期間、働ける期間はずっと働くことができる。社長になれば、辞めなくてすむ。自分の仕事を続けて、追い求めて、自分らしくあることができる。

 いつまでも心身ともに元気でいてほしいのである。毎日をずっと充実させて、日本に活力を与えて欲しい。

 何度も言うが、「高齢者」こそ、わが国の成長の原動力である。活力ある日本を実現するために、これからもずっと活力ある生き方を続けていただきたい。

SPEC&Company パートナー 皇學館大学 非常勤講師

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。多数の企業の顧問やフェローを務め、企業や団体への経営支援、新規事業開発等に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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