米中対立における中国の狡さの一考察

11月20日、フィリピンを訪問した習近平国家主席(写真:ロイター/アフロ)

 世界第二の経済大国になり巨額のチャイナ・マネーで他国の歓心を買い、先進欧米企業を買収して技術を丸のみしながら、自国の貧困層を救わず自国を発展途上国と位置付けてWTOの優遇策を受けている狡さが、まず一つある。

◆中国が自国を発展途上国と主張し続けるわけの一つ

 中国の狡さに関しては枚挙にいとまがないが、トランプ大統領が指摘している狡さの一つとして、中国の途上国位置づけがある。WTOに加盟していても、途上国であるならば、貿易自由化の義務などを緩和あるいは免除する「特別かつ異なる待遇(Special and Differential Treatment)」(S&D)という恩恵がある。世界第二の経済大国になっておきながら、中国は一人当たりのGDPが低いとして、自国をあくまでも発展途上国だと主張し、保護主義的な通商政策を維持している。

 中国は社会主義国家と自称する一方では、どの国よりも貧富の格差が激しい。

 その国の貧富の格差を示すジニ係数は、中国当局の発表で0.467(2017年)。

 ジニ係数とは所得不平等などの度合いを表す指標で、0から1までの数値で算出される。0.4以上なら社会的不安が起き、0.5以上なら暴動などが起き得るとされている。これまで中国の民間団体や大学教授などが調査した結果では0.6を超える場合もある。

 11月22日のコラム<米中対立は「新冷戦」ではない>にも書いたように、中国は社会主義国家と自称しながら、内実、社会のどこにも社会主義的現象はなく、世界でも稀なほどの貧富の格差が大きな国だ。社会主義国家ならどの国よりも「収入的に平等」でなければならないはずだが、どの国よりも不平等で、貧困層を救うことに国家予算を注いでいない。

 それでいながら巨額のチャイナ・マネーを他の発展途上国に注ぎ込み、チャイナ・マネーによってその国の歓心を買い、世界制覇を成し遂げようとしているのだから、性質(たち)が悪い。

 狡いのだ。

 トランプが怒るのも当然で、中国にはトランプ大統領のやり方を保護主義などと非難する資格はないのである。

 筆者が「新冷戦ではない」と主張したのも、その皮肉を込めたつもりだが、必ずしも十分に表現できなかったように思うので、改めてご説明する次第だ。

◆先進諸国の企業を丸呑みして技術を頂く手法

 トランプ大統領は、中国がアメリカ企業に投資して、その企業の技術を盗んだり、あるいは買収してしまって丸ごとアメリカ企業の技術を中国企業のものにしてしまっていることを非難しているが、その一つの例を見てみよう。

 たとえば1988年に清華大学の校営企業として出発し、今では中国政府との混合所有制になっている「清華紫光集団」の場合。

 2013年にナスダック市場に上場していた半導体メーカーである「スプレッドトラム」を買収しているが、このスプレッドトラムはアメリカに留学してシリコンバレーで半導体メーカーに就業したのちに帰国した元留学生たちによって作られた会社だ。

 2015年にはドイツの半導体メーカー「キマンダ」の子会社を買収。

 同じく2015年にはアメリカのヒューレット・パッカードの子会社「新華三公司」を買収して傘下に置く。

 このようなことをくり返しながら、「清華紫光集団」は「NAND型フラッシュメモリ」などを手中に収めた。

 たとえばこの「NAND型フラッシュメモリ」はデータの読み込み速度が速く記憶容量も抜群に大きいので、AI(人工知能)やビッグデータの処理(国民全員の監視体制構築など)に大きな力を発揮する。

 結果、「清華紫光集団」は、2017年のファブレス半導体メーカー世界トップ10にランクインしている(詳細は来月発売予定の『「中国製造2025」の衝撃  習近平はいま何を目論んでいるのか』)。

 米中対立には様々な要素があるが、やはり「中国製造2025」に集約され、その遂行に当たって、中国の「狡さ」が目立つのである。

 その中国に強硬策を貫こうとするアメリカと、「協力を強化する」と手を差し伸べる日本の動向の間には、「新冷戦ではない」としてもなお、納得のいかない印象を拭うことはできない。