「第二の中央」が習近平を窮地に――公安閥が残した終わりなき災禍

2月15日、習近平政権は「公安改革を全面的に深化させる重大問題に関する若干の意見」なるものを議決した。しかし公安閥のドンであった周永康が残した災禍が全国を覆いつくし、習近平を窮地に追いやっている。

◆公安改革から見えてくる「第二の中央」の災禍

チャイナ・セブン(習近平政権の中共中央政治局常務委員会委員7名)が議決した「公安改革を全面的に深化させる重大問題構成に関する若干の意見」(公安改革と略称)は、まもなく公布執行される。

さて、この公安改革とは何ぞや?

少々「おもしろくない」が、列挙してみると、公的立場としては以下のことが表明されている。

1. 健全なる国家安全工作機構を守る。/2.社会治安管理の新機軸を創る。/3.公安行政管理改革を深化させる。/4.法律を執行する権力運行機構を改善する。/5.公安機関の管理体制を改善する。/6.人民警察管理制度を健全化する。/7.警察業務補助人員管理を規範化する。

要は、公安業務を強化改善させることなのだが、一見「おもしろくない」文書の中に、実は多くの情報が隠されているので、少しだけ解説する。

まず、「6」にある「人民警察」とは何かを見てみよう。

1995年2月に制定された「中華人民共和国人民警察法」(主席令40号)の第二条には、

人民警察は、「公安機関、国家安全機関、監獄、労働強要管理機関(労働改造所)」の人民警察と、「人民法院(裁判所)、人民検察院」の司法警察を含む。

という文言がある。

これらは、たとえば国務院(中国人民政府)という中央行政省庁にある「国家公安部」あるいは「国家安全部」(スパイ活動などを監視)などに配置されている人民警察のことを指す。

この人民警察とは別の命令指揮系統に「武装警察」というのがある。

武装警察は国務院と中央軍事委員会の二つの管轄下に置かれている。中央軍事委員会は「中共(中国共産党)中央軍事委員会」と「国家(中華人民共和国)中央軍事員会」という、同じ組織(構成メンバーも同じ)で二つの看板がある軍事のトップにある委員会で、主として中国人民解放軍を管轄している。

なぜ、公安改革の「6」で、わざわざ「人民警察管理制度を健全化する」などということを謳わなければならないのかというと、実はそれが「不健全」な状況にあるからである。

なぜなら、「国家公安部と武装警察総部は、中共中央政法委員会の指導を受けなければならない」という規定が、党内部にあったからだ。

そして胡錦濤政権時代、この中共中央政法委員会の書記(トップ)にいたのが、あの周永康だったのである。石油閥のドンとしてだけでなく、公安閥のドンとしても、すでに逮捕されている。

しかし、公安部も安全部も武装警察も、そしてまた政法委員会も、すべて中共中央のトップ(胡錦濤政権時代はチャイナ・ナイン=中共中央政治局常務委員会委員9人)から始まり、省・直轄市・自治区やその下の市や県、郷鎮、村など、全国の津々浦々にわたって、あますところなく張り巡らされた巨大な命令指揮系統がある。

周永康はこの巨大なネットワークを通して、全国の公安・安全および武装警察などを掌握し、「第二の中央」と呼ばれる権力中枢と、「独立王国」とも呼ばれる「腐敗王国」を形成していた。

胡錦濤政権がそれを防げなかったのは、チャイナ・ナインの中に江沢民派が多かったせいである。

習近平国家主席は、その江沢民派の流れを引きながらも、「このままでは中国共産党の一党支配体制は崩壊する」という危機感を胡錦濤・前国家主席と共有し、身内であったはずの、その江沢民派に斬りこんでいる。

しかし胡錦濤政権10年間の間に、周永康など、江沢民の腹心たちをのさばらせ過ぎてきた。全国の隅々まで、各地の政法委員会(各地の公安・検察・司法を管轄)が人民警察や武装警察と癒着して腐敗を蔓延させ、暴動が多発して、もう、手の付けようがないほどだ。

その意味で、今回の公安改革の目玉の一つは「6」の「人民警察の健全化」にあり、武装警察を政法委員会の不正常な指導から切り離すことにある。周永康を逮捕して「第二の中央」の危険性は除去したが、13億の中で形成されているマフィアのようなネットワークを撲滅させることは困難を極める。

◆城管(ツェン・グワーン)――弱者をいたぶる凶暴組織

公安改革の第二の目玉は、「7」にある「警察業務補助人員管理の規範化」である。

これは基本的に「城管」のことを指していると考えていいだろう。

城管とは「城市管理行政執法局」で働く役人のこと。「城市」とは都市のことである。一般に「城管」は「都市管理に当たる役人」のことを指す。

「城管」という業務は、改革開放が進むにつれて、それまでの管理系統では決めにくい、都市における雑多な業務が増えてきたことから生まれたもので、実は中央が管轄する命令系統にはない。各地方政府が、それぞれの状況に応じて指揮系統や業務内容を決めていた。

業務内容としては、「公道あるいは公共施設の使用法」、「環境衛生」(ゴミ処分)、「営業証の有無」(特に露天商)、「駐車違反」、「白タク(黒車)」……などに関する取り締りがある。

たとえば、店舗を構えるお金は言うに及ばず、営業許可証を申請するお金もなない底辺層の者が、町なかで焼きトウモロコシの露店商を始めたとする。すると不法営業だということで地元政府の工商局が取り締ろうとする。煙を出すからというので、同じく環境庁が干渉してくる。道端に手押し車を置いているので、交通の邪魔だという理由で交通局が動く。あるいは公道を私用目的で使ったという論理も成り立つだろう。その他、もろもろの規制がかかり、一人の露天商に地元政府総動員で動かなければならないことになる。

そこで「城市(都市)を総合的に管理する」という「雑用役人」が生まれる結果となったわけだ。これら雑多なものが対象となり始めてから、「城市管理」は現在の「城管」という凶暴集団へと変貌していった。「城管」の横柄振りと激しい暴力に、怒りを覚えない人民は一人もいないと言ってもいいほど、全人民に嫌われるようになっていく。

最近では携帯で手軽に[画像]が撮れるので、その横暴さ残虐さは、毎日ネットにアップされている。年間20万件に上る抗議運動の多くは、この「城管」の凶暴さにあると言っても過言ではないだろう。

暴力を振るわれる対象のほとんどは底辺層だ。城管は弱者を虫けらのように虐めまくり、叩きのめし、死に至らしめるのである。あるいは金を巻き上げて見せしめとする。

城管は「冷酷な凶暴さ」がなければ務まらないので、いきおい、暴力団や出獄したばかりの凶暴犯などが雇用されることが多く、やりたい放題の暴力を振るってきた。

これは人民警察とは違い、「7」にあるように「警察業務補助人員」なのだが、これがまた、周永康が張り巡らしたマフィア集団のようなネットワークと癒着し、横暴と腐敗で全中国を覆っている。

この凶暴組織を「規範化」させるというのが公安改革の目的の一つだ。公務員などとして受験させ、合格した者を採用するということにするつもりだろうが、改善を期待できるとは思えない。

以上が今般の公安改革の正体だ。

もう「国を変えるしかない」ほどの災禍を周永康は残し、習近平を窮地に追いこんでいるのである。

もっとも、一党支配体制をやめない限り、何をしようと実は改善されないのだが……。

なお、城管関係は、2013年度のワースト中国人番付の「クズ集団」編で、遼寧省瀋陽市が第4位に、吉林省延吉市が第16位にランクインしている(2014年1月1日発表)。