中国の民生銀行頭取と令計画の妻との間に何が?――腐敗構造の一形態

中国の大手銀行の一つである民生銀行の頭取・毛暁峰が取り調べを受けている。背後にあるのは令計画およびその妻と、毛暁峰との関係だ。ばれたきっかけは特に令計画の妻との関係。中国腐敗の構造の一つを解剖する。

◆毛暁峰(もう・ぎょうほう)と令計画との関係

先ずは毛暁峰が、いつごろ、どのようにして令計画と知り合ったのかをご紹介する。

1972年生まれの毛暁峰は、14歳のときに湖南大学に入学した。中国では飛び級による英才教育が認められているが、学歴詐称という説もある。18歳で大学を卒業し、20歳で中華全国学生聯合会主席に就任。

中華全国学生聯合会とは1919年6月16日に設立された学生組織で中国共産党の指導下にある。「学聯」と略称される。同年5月4日に北京大学の学生を中心として起きた「五四運動」がきっかけで生まれた組織で、現在約8000万名ほどの会員がいる。5年に一回代表大会を開催して「主席」を選ぶという、中国共産党大会並みの運営が成されている。

湖南省は毛沢東生誕の地でもあることから、毛暁峰は「毛主席」というあだ名で呼ばれていたという。

さて、この「毛主席」、1994年におもしろいことを思いついた。

それは93年に湖南大学が全国で二つ目の在職MBAコースを設置したことから、このMBAコースの一部を移動式にして、教授連に北京に行ってもらい、職場を離れられない党幹部に在職MBAコースに入学してもらおうというアイディアだ。

これは非常に受けて、当時、共青団(中国共産主義青年団)中央弁公室副主任だった令計画は、この移動大学に入学した。

湖南大学の教授連を引率してプログラムを遂行していたのは「毛主席」こと、毛暁峰。

ここで令計画と知り合う。

95年に令計画が中共中央弁公庁に移動すると、毛暁峰は令計画がいた共青団中央弁公庁に異動した。

令計画は胡錦濤・元国家主席の下でトントン拍子に出世し、胡錦濤が中共中央委員会総書記になった2002年、毛暁峰を突然、民生銀行の副行長(副頭取)に天下りさせるのである。

本コラム(2015年1月1日)でご紹介したように、2007年、令計画は「西山会」という秘密結社を創設した。中共中央委員会委員レベルの党幹部で山西省が出身地であることを基本原則とした「官商聯盟」だ。

これをうまく動かすには、絶対に自分を信じてくれる経済界の者がいた方がいい。その目的のために、毛暁峰にさんざん恩を売っておいてから「うまく金儲けをしろよ」と命じたのだろう。

◆毛暁峰と令計画の妻・谷麗萍との関係

民生銀行に行くと、毛暁峰はさっそく令計画の「期待」に応えて、「夫人クラブ」なるものを設立した。さまざまな便宜を図ってくれる党幹部の「ご夫人たち」に入会してもらい、

なんらかの「仕事」をしてもらっていることにして、「空(から)の役職」を作り、高給を支払うという方法だ。

中国ではこれを「吃空餉」という。「タダ食い」という意味だ。「財政飯」ともいう。これは中国における普遍的現象で、腐敗構造の形態の一つである。

民生銀行の「夫人クラブ」の場合は、夫たちが権力を利用して、毛暁峰にさまざまな便宜を図ってあげるわけだから、毛暁峰はお礼として、奥様方に「財政飯」を食べさせてあげるわけである。それが「夫人クラブ」だ。メンバーは令計画の妻・谷麗萍以外にも十数名の会員がいたという。

もちろんこれは毛暁峰の罪の一つに過ぎず、これに類したいろいろな形の不正蓄財をやっていたにちがいない。

当局が令計画夫妻を取り調べているうちに、毛暁峰の不正も浮かび上がったというだけで、次は金融界にターゲットが移ったのかというわけではない。

令計画夫妻から派生するさまざまな不正は、これから多くの分野にわたっていくだろう。

それは西山会を中心とした流れではあるのだが、源流はあくまでも山西省を中心とした「電力閥」にある。その中で発生した現象と、とらえるべきだろう。

何度も書いているように、鉄道閥の次は石油閥、その次が電力閥で、つぎつぎと利権集団を潰していこうとしている。

そうでもしなければ、党幹部の腐敗があまりに蔓延し過ぎて、一党支配体制が崩壊してしまうからだ。