[気候変動] 抗議する若者たちの懸念は正当である:世界の科学者が支持声明を発表

(写真:ロイター/アフロ)

気候変動対策を求める若者が世界中で立ち上がっている。

3月15日には100ヵ国以上で合計150万人が参加したといわれる一斉抗議行動があった。日本でも東京京都でそれぞれ100人規模のマーチが行われた。すべてのきっかけとなったのは、昨年、一人で行動を始めたスウェーデンの少女、グレタ・トゥーンベリさんだ。

Yahoo!ニュース個人では、ノルウェー在住の鐙麻樹さんが、継続的に発信してくださっている(2/24,3/14,3/23,3/30)。

筆者も年明けの記事でグレタさんのことに触れて以来、ずっとこのことが気になっていた。

4/12に、米国の科学雑誌Scienceに、この若者の抗議行動を支持する国際的な科学者グループScientists for Future Internationalの声明が掲載された。筆者も声明に賛同し、署名させて頂いた。

以下に、起草者の許可を得て、声明全文の和訳を紹介させて頂く。

「抗議する若者たちの懸念は正当である」

(Scientists for Future International 声明)

世界中の若者が、気候やその他の人間の幸福の基盤を守ることを訴えて根気強い抗議行動を始めています。最近自国で同様の支持声明を始めた科学者、学者として、我々はあらゆる学問分野の世界中の同僚に、抗議する若者たちへの支持を呼びかけます。我々は次のように宣言します。「彼らの懸念は、現時点の最善の科学によって正当化され、支持される。気候と生態系を守るための現状の対策はひどく不適切である。」

ほぼすべての国が2015年のパリ協定に署名と批准を行い、国際法の下に地球温暖化を産業化前を基準に2℃より十分低く抑えることと、気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求することを約束しました。科学コミュニティーは、地球温暖化が1.5℃ではなく2℃まで進むと気候に関連した影響とリスクが相当に増加し、そのいくつかは後戻りできないものになるであろうことを明確に結論しています。さらに、ほとんどの影響は不均一にもたらされるため、2℃の温暖化は既に存在する世界規模の不公正をより悪化させるでしょう。

CO2および他の温室効果ガスの排出の急速な削減を直ちに始めることが決定的に重要です。人類が将来に経験する気候の危機の大きさは、累積された排出量によって決まります。今、急速な削減をすれば、被害は抑えられます。例えば、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が最近評価したところによれば、CO2の排出量を2030年までに(2010年水準を基準に)半減させ、2050年までに世界でCO2排出正味ゼロ(加えて他の温室効果ガスの大幅削減)が達成されれば、50%の可能性で温暖化が1.5℃未満に収まるでしょう。先進工業国がこれまで多くの排出をもたらし、そこから多くの便益を得てきたことを考えると、先進工業国は世界全体と比べてより速やかに、この移行を達成する倫理的な責任があります。

多くの社会的、技術的、そして自然に基づく解決策が既に存在しています。抗議する若者たちは、これらの解決策を使って持続可能な社会を達成することを正当に要求しています。大胆で集中的な行動が無ければ、彼らの未来は重大な危険にさらされます。彼らが権力の座に就くまで待つ時間は残されていません。

政治家たちは、必要な構成条件を適時に創出する大きな責任を負っています。気候に親和的で持続可能な行動を単純かつコスト効率的なものにし、気候に破壊的な行動を魅力無く高コストにするような政策が必要です。例えば、効果的なCO2の価格付けや規制、気候に破壊的な行動や製品への補助金の廃止、省エネ基準、社会イノベーション、再生可能エネルギーや分野横断の電化や公共交通インフラや需要の削減などへの大規模で直接的な投資などです。気候対策のコストと便益の分布が社会的に公正になることに慎重な注意が必要ですが、それは可能であり肝要なことです。

「未来のための金曜日」、「気候のための学校ストライキ」、「気候のための若者」、「若者の気候ストライキ」などとよばれる、若者の気候変動についての社会運動の壮大な規模の草の根の動員は、若者が状況を理解していることを示しています。我々は、彼らが求める急速で力強い行動を承認し、支持します。我々は紛れの無い言葉で次のように述べることを、我々の社会的、倫理的、学問的責任とみなします。「人類が速やかにかつ意を決して行動することによってのみ、地球温暖化を抑制し、現在進行している動物種と植物種の大量絶滅を止め、現在と将来の世代の食料供給と幸福の自然的な基盤を保全することができる。」これが、若者たちが達成を求めていることです。彼らは、我々の尊敬と全力の支持に値します。

起草者: Gregor Hagedorn, Peter Kalmus, Michael Mann, Sara Vicca, Joke Van den Berge, Jean-Pascal van Ypersele, Dominique Bourg, Jan Rotmans, Roope Kaaronen, Stefan Rahmstorf, Helga Kromp-Kolb, Gottfried Kirchengast, Reto Knutti, Sonia I. Seneviratne, Philippe Thalmann, Raven Cretney, Alison Green, Kevin Anderson, Martin Hedberg, Douglas Nilsson, Amita Kuttner, Katharine Hayhoe

(原文:Science 12 Apr 2019

「科学者による支持」の意味(筆者私見)

ここからは、筆者自身の考えを含めて、若干の解説を試みたい。

実は、筆者の周囲の科学者の中でも、この声明に署名することについては様々な意見があった。この声明の一字一句に、また若者たちの主張の一字一句に同意できないのであれば、署名をするのは科学者として無責任ではないか。「科学者によるお墨付き」を与えることで、若者の行動にエリート主義的なイメージを付加してしまうのは逆効果で、意図せぬ反発を招くのではないか。

筆者個人としては、そういったことを考慮しても、即座に署名に加わる方が悔いが無いと判断した。

確かに、若者たちのスローガンは時として極端だ。たとえば「破局を避けるためにはあと11年しかない」というような言い方は不正確であり、厳密に科学的な意味では支持できない。温暖化は「早ければ」2030年に1.5℃を超えるおそれがあるが、そこには不確かさがあるし、1.5℃を超えたときの影響は「悪くすれば」破局と呼びうるレベルになるおそれがあるが、影響の予測も不確かだし、何を破局と呼ぶかは自明でない(このあたりは、IPCCの1.5℃特別報告書の解説に書いた)。

しかし、筆者個人は、そのようなスローガンを、より広い意味では十分に支持できる。将来の予測に不確かさがあるとき、その不確かさの中で最悪のケースを心配するか、それとも可能性の高そうなところを見込むのかといったことは、科学だけでは答えが出ないリスク判断である。その判断を、実際にそのリスクに直面して生きる若者たちを差し置いて、今の大人が勝手に決めてよいわけがない。若者には最悪の事態を心配する権利があり、彼らがそれを声を張り上げて主張することはこの上なく正当なことに思える。

筆者は若者たちの主張「のみが」正しいというつもりはない。しかし、大人たちは少なくとも、若者たちを主要な利害関係者と認めて、彼らと交渉する必要があるだろう。

また、科学者がこの声明に署名することは、個人的な行為であり、ある意味で政治的な行為だと思う。科学者の支持は、若者の行動に絶対的で客観的な正しさを付与したみたいに捉えられるべきではない。声明と署名は、全体として専門家が若者の行動の科学的な根拠を保証する役目を果たしつつも、科学者一人一人の署名は、個人の判断に基づいており、それぞれに主観的な思いも込められているに違いない(例えば、筆者にも高校生、中学生、小学生の子供がいる。このことが筆者が署名したときの気持ちと無縁であろうはずはない)。

すべては始まったばかり

次の若者の世界一斉行動(Global Climate Strike)は、5月24日(金)に予定されているようなので、引き続き注目したい。

Scientists for Future Internationalの署名は、Science記事発表時点のものが記事の付録に数千人分収められているが、引き続きウェブサイトで受け付けている。

国立環境研究所では、4月20日(土)に、研究所に高校生・大学生を招いて気候変動について議論する「気候[変]会議」とニコニコ生放送による中継を行うので、ここでも若者の抗議行動について取り上げたいと思っている。

参加申し込みはこちら(高校生・大学生のみ)

(春の環境講座全体は13:00~。気候[変]会議は15:00~、一部のみでも参加可能)

ニコニコ生放送はこちら(どなたでもご視聴ください)

(放送は14:30~18:30予定)