過去に行われた重要な裁判の記録が廃棄されていた問題で、上川陽子法相は2月12日、法律で定めた保管期限以降も保存する「刑事参考記録」に指定する事件の指定範囲を拡大し、有識者や国立公文書館のアーキビスト(文書の保存・管理のスペシャリスト)など外部の専門家を関与する仕組みを作るなど、記録保存制度の改善を行うことを明らかにした。

「刑事参考記録」に指定すれば永久保存も可能

 刑事裁判の記録は、判決が確定後は検察庁で保管される。保管期限は、刑の重さによって異なる。死刑・無期懲役判決となった事件は50年間だが、5年未満の懲役の場合は5年間、罰金刑ならば3年間。期限をすぎれば廃棄されるが、刑事法制や犯罪に関する調査研究の重要な参考資料になると考えられる場合は、法務大臣が「刑事参考記録」に指定して、永久保存することも可能だ。

 しかし、戦後初めて違憲立法審査が行われ、刑法から「尊属殺人」をなくすきっかけとなった事件や、経営破綻した旧日本長期信用銀行の粉飾決算事件(最高裁で無罪)のようにバブル時代を象徴する事件など、歴史資料として貴重な裁判記録が廃棄されていることが明らかになり、国会でも問題になった。

外部の専門家が継続的に関与

 そのため、法務省は廃棄をいったん留保し、刑事参考記録の指定基準などを検討してきた。今回の改善ポイントは次の3点。

1)刑事参考記録に指定する事件の類型に、検察審査会で起訴議決がなされた事件を追加する。

2)刑事参考記録に指定する判断基準を決める。具体的には、主要な判例集に判決が掲載されたり、主要全国紙の1面に判決が掲載されたり、新聞縮刷版で今月のトピックとして扱われた事件などが挙げられている。

3)刑事参考記録に指定する課程に、法務省刑事局が法制審議会の委員や国立公文書館のアーキビストなど外部の視点を入れる

 上川法相は

「公文書が歴史の評価に耐えるものとなるためには、専門家が歴史的重要性の観点から評価を行い、大事なものは確実に残していくことが重要」

とし、

「法務検察が気づかない多角的な視点が反映されるよう、外部の専門家、国立公文書館のアーキビストに継続的な関与をしてもらう枠組み作りを指示した」

と述べた。

保存記録の活用についても「検討を進める」

 保管する記録の選定に外部の目が入ることは大きな前進といえる。ただ、裁判所が保管する民事裁判記録については、判例集の掲載された事件の他、主要日刊紙2紙以上に記事が掲載された事件が特別保存の対象になるのに比べると、刑事はまだ保存範囲が限定的だ。

 また、民事事件の判決原本はすべて国立公文書館で保存されるのに対し、刑事事件は移管が遅れている。軍法会議の記録は谷垣禎一法相時代に国立公文書館に移管され、閲覧も始まっているが、一般の刑事事件については、上川法相が明治期前半(治罪法時代)の刑事参考記録の移管を試行しているところだ。

 さらに、保存した記録の活用に関しても課題が多い。

 たとえば、上川法相は調査・研究のために、オウム真理教が引き起こしたすべての事件の裁判記録を刑事参考記録に指定して永久保存することを決めたが、私(江川)が死刑が執行された元信者の裁判での供述記録を閲覧しようとしても、検察庁で「(裁判が)終結した後三年を経過した」として不許可となった。

 記録を残すからには、それを活用するため、閲覧に関しても新たなルール作りが早急に求められる。

 これについて上川法相は、

活用についても、不断の見直しが必要検討を進めていきたい

と前向きな姿勢を見せた。