コロナの先の社会へー世界で広がる助け合いの動き

新型ウイルス肺炎が世界で流行 英で医療従事者に感謝の動き(写真:ロイター/アフロ)

3月中旬、自分のパソコン上のフォルダーに「コロナの先の社会へ」というフォルダーをつくりました。

今回のコロナウイルスの感染急拡大は、「そうでなくてもそちらへ向かっていた方向」へ社会を大きく動かしています。テレワークがその筆頭でしょう。また、遠隔医療やオンライン教育なども、少しずつその方向へ動いていましたが、その必要性を突きつけられ、急ピッチでシフトや取り組みが始まっています。

本当は平時から着実に動けばよいのでしょうけれど、平時には「特に現状で問題がないのに、なぜあえて変える必要があるの?」という現状維持バイアスが足を引っ張ります。そう思うと、今回のような”非常時“にこそ、「そうでなくても向かっていた方向」への動きを起こしたり、加速したりすることができます。

また、今回のコロナウイルスの感染急拡大は、「そろそろ引き返し、戻るべき方向」「本当に大事にすべきことを大事にする方向」へも社会を大きく動かす力を持っていると思っています。

コロナウイルスの世界的な蔓延および経済や産業面でのショックの伝播は、「いかに私たちの世界が緊密に結びついているか」を改めて浮き彫りにしています。「グローバル化」のメリットを称賛するだけでなく、デメリットやリスク、脆弱性を改めて考え直し、「どこまで何をグローバル化し、何はどこまでローカルにしておくべきか」の優先順位づけを考える必要があることを突きつけているように思います。

私の「コロナの先の社会へ」というフォルダーには、今回のコロナウイルスの状況下で、あちこちで出てきている「そうでなくてもそちらへ向かっていた方向」と「そろそろ引き返し、戻るべき方向」「本当に大事にすべきことを大事にする方向」への動きを集めています。コロナのトンネルの先にどんな世界や社会を描いておくかが、「コロナ後」の私たちを方向づけると思うからです。

「こんな社会だったらいいな」「こんな世界にしたいな」と思う、内外の状況や取り組みを集め、発信していきたいと思います。

国内外で広がる温かなうごき

 

英国に留学中の方がこのような状況を教えてくれました。

「スーパーでは、感染拡大防止のために色々と対策をしています。多くのスーパーでは開店後1時間は高齢者・体が不自由な人専用の時間帯を設けています。入場も制限されていて、待っている間は間隔を2mくらいあけて並びます(だからめっちゃ列が長くなる)。

NHS(国民保健サービス)の医療従事者を励ますためのClap for Carersや、自主隔離中の高齢者のために代行で買い物にでかけたり、路上生活者のためにホテルの部屋を提供したりしています。こういう助け合いや励まし合いはやっぱりイギリスらしい温かさがあります」

そして、「朝の散歩途中に見つけた、NHSスタッフを励ます運動の一環です」と、路上に描かれた応援メッセージの写真も送ってくれました。

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生活協同組合コープこうべも4月8日から、高齢者や障害をお持ちの方、妊産婦の方などが優先して買い物ができる専用時間を設けています。こういう取り組みが広がっていくことを願っています。

https://www.kobe.coop.or.jp/news/detail.php?id=129199

日本でも助け合いや励まし合いが広がっていると思いますが、ネガティブな感情や責めたり、非難したりといった動きをすっぽり覆ってしまうぐらい、もっともっと広がればいいな!と思っています。

 

「お互いに助け合う」草の根活動のうねり

『新型コロナウイルス、「社会的距離」の中でも草の根活動のうねりを促進』という海外のニュースレターの日本語訳をご紹介します。

※この記事は2020年3月にShareableに掲載されたRobert Raymond氏の記事(Coronavirus catalyzes growing wave of grassroots action despite social distancing)の翻訳です。

この記事の原文はこちらからご覧ください。

https://www.shareable.net/coronavirus-catalyzes-growing-wave-of-grassroots-action-despite-social-distancing/

ロバート・レイモンド

2020年3月18日

隔離や検疫、そして社会的距離(ソーシャルディスタンシング)は、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミック(世界的大流行)に対処する戦略としては有効かもしれません。しかし残念ながら、40年にわたり新自由主義(ネオリベラリズム)に苦しめられてきた世界経済にあって、レジリエンスのある力強いコミュニティづくりを支えている社会的なつながりはあまりにもひどく損なわれてしまっています。そのため、社会的距離戦略は必要な措置でありながらも、予期せぬ結果を数多く生み出しています。

こうした難題に直面する中、全米をはじめとする世界中の市や町で、草の根活動が大きなうねりとなっています。こうした草の根レベルの対応は、表に出てこないことも多いものの、範囲も規模も急速に広がりつつあります。こういった動きの多くは、身近な人々の差し迫ったニーズを把握して行動を起こそうとした個人やグループによって、自然発生的に行われているものです。

こうした対応の多くは、「お互いに助け合う」という形を取っています。つまり、何らかの形でパンデミックの影響を受けている人々の力になろうと、自然発生的に始まった、横につながる草の根レベルの、コミュニティ主導型の支援活動です。

その例をここに挙げようとすれば、枚挙にいとまがありません。

例えば、何百ものグーグルドキュメントやリソースガイド、オンラインセミナー、Slackチャンネル(業務効率化ツール)、オンラインでのミートアップ、P2Pレンディング(インターネット上の個人間融資の仲介の仕組み)など、インターネット上や実際に会う形で相互扶助が発生しています。

コミュニティの対応として最も分かりやすいものの一つは、シンプルに「近所の人、特に高齢者や、そうでなくても免疫の弱い人たちが無事かどうかを確認すること」です。その一例として、フィラデルフィアで行われている活動があります。

そこでは、支援を必要とする人のための「隣人同士の助け合い:新型コロナウイルスの影響を受けている人へのフィラデルフィア相互扶助(Neighbors Helping Neighbors: Philly Mutual Aid for folks Affected by COVID-19)」というオンライン登録シートが広く出回っています。その他にご近所同士の助け合いの例として、簡単に誰でも真似できるものには、困っている友人や家族に無金利でお金を貸したり、スープの持ち寄りパーティーのようなものまであります。

ポッドキャスト「ザ・レスポンス(The Response)」で私たちが記録してきたように、災害や危機に見舞われているときは、往々にして最も脆弱なコミュニティが最も大きな打撃を受けます。それは新型コロナウイルスのパンデミックでも変わりません。

とりわけ社会的距離戦略と隔離措置の影響を受けやすいのは、障害を抱える人々やホームレス状態の人々です。

この2週間ほど、オークランドディスアビリティ・ジャスティス・カルチャー・クラブ(Disability Justice Culture Club)は、パンデミックに直面する中、こうしたコミュニティに降りかかる特有の難題の一部に取り組み始めています。

この団体が初めて相互扶助の取り組みを始めたのは、米国の電力・ガス大手、PG&Eが計画停電を実施した時です。発電機購入のため資金を集め、必要とする人に空気清浄機を提供したのです。現在の危機的状況下でも、同団体は活動を続けています。

「手指除菌剤とウェットティッシュ、手袋のセットを作り、家から出られない人やこうしたものを買えない人に配っています」とディスアビリティ・ジャスティス・カルチャー・クラブの運営者ジェイ・サラザール(Jay Salazar)はシェアラブル(Shareable)に語っています。「ホームレスの人たちのキャンプにも足を運び、こうしたコミュニティにもキットを配布しています」。

ディスアビリティ・ジャスティス・カルチャー・クラブは、健常者と特有のニーズを持つ人をつなぐために、オンラインのグーグルドキュメントも作成しています。「食料が必要だったり、お使いをしたり、薬をもらいに行ったりと、ニーズはどこにでもあります」とサラザールは説明しています。「基本的に、(ボランティアの人たちに)自分ができることを言ってもらい、私たちはそれを必要とする人との橋渡しをしています」。

「社会的距離」を取らなくてはならない事態では、こうした類のグーグルドキュメントやオンライン上で公開されているスプレッドシートは、特有のニーズを明らかにして対応するために効果的であり、よく使われています。

例えば、ミシガン州のホイットマー州知事が同州初の新型コロナウイルスの感染確認事例を発表した直後の週末、アナーバーのミシガン大学の寮が閉鎖になってしまいました。それに対して、コミュニティは迅速に対応しました。

「きっかけは私とパートナーが、泊まる場所のないミシガン大学の寮生なら誰でも受け入れようと考えているとフェイスブックに投稿して、友人たちに伝えたことです」と主催者のシャリフ・アーメド・クラブティ(Sharif-Ahmed Krabti)はシェアラブルに話してくれました。「この最初の投稿と別のいろいろなルートからのメッセージで、受け入れ先だけでなく、食料や移動手段といったほかの課題にも対応する、相互扶助のネットワークを作りたいという熱意のある人が大勢集まりました」。

このグループは、誰もが援助を申し出たり求めたりできる、公開のスプレッドシートを取りまとめています。助けを必要とする人は支援の提供に登録している人と連絡をとり、そこからどのように自分のニーズを満たすかについて調整することができます。

「これまでのところ、必要とする人にさまざまな物資や支援を提供してくれる登録者は300人を超えています」とクラブティは語っています。「段取りのほとんどはインターネット上で行われていて、これは実に好都合です。新型コロナウイルス感染防止のためには外出を控えなければならないのですから。直接会うのは、実際に支援を行うときだけです」。

アナーバーでは、子どもたちに向けて同様の形態の相互扶助が行われています。ケケレ・エマージェンシー・チャイルドケア・コレクティブ(Kekere Emergency Childcare Collective)は、新型コロナウイルスの影響による休校措置に対応するために結成されました。この団体は、未就学児や学齢児のいる家庭のために、互いに助け合って子どもの面倒を見る仕組みをつくろうと尽力しています。前述のアナーバーでの取り組みと同じように、子守や移動手段、子どもの居場所、生活必需品、食料品などを必要としている人のためにオンラインフォームを作成しています。

休校措置は、コミュニティに影響を与えるキャンセル(中止)の一例にすぎません。もう一つ、大きな打撃を受けたのがアーティストのコミュニティです。先週(2020年3月第2週)から、何千ものコンサート、フェスティバル、その他の集会が中止になっています。政府が公開イベントの制限に踏み切ったことにより、この流れは一層強くなりました。サンフランシスコなどの主要な芸術都市では特に深刻な問題になり、大勢のアーティストや演者が、何カ月分にも相当する出演契約がほぼ一夜にして泡と消えるのを目の当たりにしました。アーティストの中にはバーチャルイベントへと活動の場を移したり、他のアーティストやプロデューサーによる同様の活動を支援したりしている人もいます。

例えば、サンフランシスコを拠点とするイベントプロデューサーであり、(Playable Agency)のクリエイティブディレクターでもあるスコット・レブコフ(Scott Levkoff)は、自社で予定していたライブイベントがすべて中止になりましたが、現在は、ベストプラクティスに関するオンラインセミナー、ストーリーテリング・ゲーム・ナイト、バラエティショーなど、演者の収入確保を目的としたバーチャルイベントを共同で開催しています。

スプリングボード・フォー・アーツ(Springboard for the Arts)という団体も、このパンデミックに際し、「倫理的なキャンセルの原則(Principles for Ethical Cancellation)」の指針や、緊急救済基金・弁護士・緊急資金援助に関するリソースシートなど、アーティスト向けの様々なリソースを取りまとめています。

「多くのアーティストは、生計を立て、家族を養い、自活していく上で契約に基づいた仕事を大きな拠り所としています。キャンセルや収入の損失から身を守るしっかりとした契約がないままそうした仕事を行っているアーティストが多いのは、周知の通りです。私たちは企業や組織に対し、アーティスト、フリーランサー、契約社員への影響を軽減するよう働きかけています」と、スプリングボード・フォー・アーツは団体のウェブサイトで述べています。

ほかにも、相互扶助の興味深い例がオープンソースのコミュニティから登場しています。

新型コロナウイルスによる被害が特に甚大なイタリアでは、医療機器の不足が危機的な状況になっています。それに対して、聖書に出てくる「善きサマリア人」のようなグループが3Dプリンターを使って人工呼吸器用の弁を新しく作成し、無償で提供しました。サンフランシスコを拠点とするデザイナーも同様の取り組みを模索しており、最近、他のデザイナーやエンジニアに呼び掛けてオープンソースによる人工呼吸器の設計に挑戦しています。

おそらく、新型コロナウイルスによるパンデミックへの対応で、最も見過ごされていて、かつ最も重要なもの一つに、シンプルに「人と人とのつながりを育む」という取り組みが挙げられます。孤立は信じがたいほど辛いことです――人間として、私たちはつながりを強く必要としているからです。

これを踏まえて、ディスタンスレジスタンス(Distance Resistance)という名のフェイスブックグループが作られました。このグループは「社会的距離が必要とされる状況にあっても人々のつながりを育むこと。特に、新型コロナウイルスの大流行に影響を受けやすい人々の身体上の安全を尊重したつながりの方法に特に重点を置くこと」を目的としています。

このグループにはすでに約3000人のメンバーが登録し、1日に何百件もの投稿があり、バーチャルで人々がつながる方法について集中的に意見を出し合っています。それと同時に、普段は自分がまとめ役になることなど考えていない人たちに、リーダーシップを取る機会を提供しています。このグループは社会的距離を取る指示が解除されても継続する予定で、通常の生活に戻れる日が来た時にはお祝いをしたいと考えています。

同種の、しかしはるかに大規模なフェイスブックグループの輪がカナダで登場しています。それらのグループは、「ケアマンガリング(caremongering):ケアを広める」という運動を提唱しています。危機の際にはびこりがちな「スケアマンガリング(scaremongering):デマを広める」というやり方に対抗するものです。この運動は、35以上のフェイスブックグループとそれに参加する計3万人超のメンバーで構成され、「自分のコミュニティの人々、特に新型コロナウイルスに関連する健康問題のリスクがより高い人々に手を差し伸べよう」と人々に呼び掛けています。

米国では、私たちは新型コロナウイルスによる世界的パンデミックとの戦いのまだほんの初期段階にいます。ベイエリアを含むカリフォルニア州の多くの都市と郡で既に「屋内退避勧告」が出されたことに伴い、社会的距離を取る措置は急速に広まっています。米国全体で、結果として発生すると予測される困難をある程度解消するための施策がいくつか提案されています。

例えば、サンフランシスコやサンノゼといった都市での立ち退きの猶予の提案などです。しかし、こうした取り組みは十分に行き届きそうになく、人々の大多数にはあまり効果がないかもしれません。

政府の対策が追いつかないこのような時期、相互扶助とコミュニティの対応は、最も影響を受けやすい人たちだけでなく、コミュニティ全体にとっての生命線になります。権力を持つ人々が適切な対策に乗り出そうとしないのは残念なことです。しかし同時に、世界中の普通の人々が、多大な情熱と創意工夫をもって、その不足分を埋めようと一歩踏み出す姿には勇気づけられます。

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海外だけではなく、日本の中での「コロナの先の社会へ」つながる動きや取り組みをお届けしたいと思っています。

「こんな取り組みがあるよ!」といった情報共有をお待ちしています!(edahiro@es-inc.jp までお送りください)