気候変動悪化を理由に公共インフラ計画を世界で初めてストップ判決~オーストリア連邦行政裁判所~

(ペイレスイメージズ/アフロ)

「オーストリア連邦行政裁判所 気候変動悪化を理由に、ウィーン空港の滑走路拡張計画承認の却下を命じる判決」というニュースを読みました。「気候変動を理由に、公共インフラ計画の”ストップ”判決は世界で初めて」だそうです。

このニュースを読んだのは、上智大学地球環境学研究科客員教授でいらっしゃる、藤井良広先生が2014年9月に立ち上げられた一般社団法人環境金融研究機構(RIEF)のサイトです。

藤井先生にご快諾いただきましたので、標題の記事をご紹介します。

オーストリアだけではなく、「米国の21人の未成年の子供たちが、米国政府を相手取って、地球温暖化の脅威から将来世代を守る十分な対策をとらないのは憲法違反、と訴えている訴訟が進行中」など、他の類似の訴訟も紹介しています。

~~~~~ここから引用~~~~~

オーストリア連邦行政裁判所 気候変動悪化を理由に、ウィーン空港の滑走路拡張計画承認の却下を命じる判決。気候変動で公共インフラ計画の「ストップ」判決は世界で初めて(RIEF)

2017-02-20

http://rief-jp.org/ct4/67886

オーストリア連邦行政裁判所は、首都のウィーン空港に新たに滑走路を追加建設する計画は、CO2排出量増加につながり気候変動対策に逆行するとして、建設停止を命ずる判決を下した。気候への影響を理由に主要な公共インフラ計画を止める判決は、世界でも例がないという。

ウィーン空港の拡張計画は10年来のもので、2012年にウィーンを抱えるニーダーエスターライヒ州の州議会で承認された。これに対して、同州の14のコミュニティと市民グループが、騒音の増加大気汚染の増大気候変動の加速などを理由として、建設承認の取り消し訴訟を起こしていた。

原告団は、空港拡張計画は大気汚染を増大させ、同国と欧州連合(EU)の両環境法に違反すると主張してきた。オーストリアの憲法は、気候変動の影響からの保全を含め、国民に健全な環境を享受する権利を認めており、憲法にも抵触するとしてきた。

3人の判事で構成するウィーン連邦行政裁判所は 、追加滑走路によるCO2排出量増加による有害な影響は、空港混雑解消等の公衆の利益を上回る、と判決理由で指摘した。また、パリ協定にも言及し、滑走路の増設は協定の目標達成を困難にする、とした。

オーストリアでは、憲法に基づく2011年気候保護法で産業セクターごとの排出削減目標を設定しており、運輸セクターには2020年までに、排出量全体に占める比率を2.25%削減することを求めている。しかし、判決では、滑走路を増設すると排出量は1.79%増大すると指摘している。

また、滑走路建設に伴う農地の転用についても、肥沃な農地の滑走路化に地域コミュニティの強い反発がある。ただ、オーストリアの裁判所は判例主義ではないので、他の裁判所が気候変動関連の訴訟で、同様の判断をするかは現時点では不明という。

敗訴したウィーン空港当局と同州政府は共同声明を出し、「今回の判決は、多くの雇用創出の機会をつぶす。もし空港を拡張できないと、経済の浮揚させることができないリスクが高まる」と不満を示し、控訴する意向を示している。

世界の法曹界の注目も集めている。米コロムビア大学の気候変動法サビン・センターのMichael Gerrard氏は「今回のケースは気候変動問題が、政策の法令レベルよりも、憲法、人権の観点で取り上げられる傾向が強まっていることを示す一例」と評価している。

気候変動への市民への影響を理由として公共インフラを止める判決は初めてだが、似た事例としては、2015年にオランダのUrgenda財団と市民団体らが同国政府を相手に、市民を守るため温室効果ガス削減の強化を求めた訴訟(Urgenda decision)で、Urgenda側が勝訴した。

http://www.urgenda.nl/en/climate-case/

同じ年、パキスタンで裁判所はラホール地方政府に対して、気候変動に適応する対策をもっと実施するよう判決で指示した(Leghari case)。

https://elaw.org/pk_Leghari

米国の21人の未成年の子供たちが、米国政府を相手取って、地球温暖化の脅威から将来世代を守る十分な対策をとらないのは憲法違反、と訴えている訴訟が現在、進行中だ(Children’s Trust)。

https://www.ourchildrenstrust.org/us/federal-lawsuit/

またノルウェーでは、環境活動家がノルウェー憲法に新たに盛り込まれた気候保護条項を根拠に、政府が許可した海洋での石油掘削事業の停止を裁判所に求める訴訟が進行中だ。

欧米の環境団体の間では、石油メジャーなどの影響力が各国政府の政策に根深く影響を及ぼしていることから、 政府への政策や規制の要請よりも、司法の場を活用するほうが有益との見方が増えつつある。

日本も、エネルギー政策を担う経済産業省が業界寄りの政策運営を展開し、環境省の対抗する力も脆弱なことから、憲法の生存権等を根拠とした国民訴訟を提起する必要があるとの指摘が出始めている。

~~~~~引用ここまで~~~~~

「気候変動の影響を防ぎたい・防ぐべき」という陣営と、従来型の「経済・雇用のためには温暖化が進んでもしかたない」という陣営とのバトルは、これまで、環境NGOと産業界の間で繰り広げられてきましたが、いまや法廷でも争われるようになってきているのですね。どのような判決が下されていくか、注視していきたいと思います。

なお、RIEFのサイトには、内外の環境金融、サステナビリティ、ESG関連情報を軸に、環境金融関係のトップへのインタビュー、勉強会、関連資料・論文等、有用な情報がたくさんあります。

日本での環境金融の発展に貢献した金融機関をRIEFが選ぶ「2016年サステナブルファイナンス大賞」の発表もあります。サステナブルファイナンス大賞には、損保ジャパン日本興亜の「東南アジアにおける農業従事者向け天候インデックス保険の展開」が選ばれています。詳細はこちらをご覧ください。

http://rief-jp.org/award