「ダイバーシティ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。ダイバーシティとは「多様性」という意味で、主に企業の組織論やマネジメントの文脈で使われています。さまざまな背景やスキルを持った多様な人材を雇用し、その個性を生かして組織の力を高めようとする企業が増えています。特に米国では人種や性別での差別にも関連する指標として、どの企業も軽視できない指標の1つとなってきています。

もともと人種的多様性に富んだ米国企業は、一般に日本企業よりはるかに進んでいますが、先進的なイメージの強いシリコンバレーの企業は、意外にもダイバーシティではほかの業界に後れを取っているようです。

米国Google社は2014年5月末、自社のダイバーシティに関するデータを初公開しました。それによると、Google社の全従業員のうち圧倒的多数の70%は男性が占め、女性は30%しかいません。職種別に細かく見ると、技術系の83%、管理職の79%を男性が占めるなど、さらに男女の差が開きます。唯一、男女間のバランスが取れているのは、主に庶務や事務といった非技術系の職種です。

人種別に見ると、白人61%、アジア系30%、混血4%、ラテン・アメリカ系3%、アフリカ系2%と、白人の占める割合が突出しています。管理職に限ってみれば、白人の割合は72%に上ります。

Google社は、ダイバーシティに関して自分たちの望んでいるような職場になっていないこと、そして従来の「公表しない」立場は間違っていたと認めています。その上で同社は、IT企業が女性や人種的マイノリティーを採用するのが難しい理由として、コンピュータサイエンスの学位取得者の属性がアンバランスであることをあげています。米国では取得者のうち、男女別で見ると女性は18%のみ、人種別ではアフリカ系8%、ラテン・アメリカ系がわずか6%に過ぎないといいます。

そのため、2010年以降、女性にコンピュータサイエンスの教育機会を促す団体に4,000万ドル(約40億円)以上を提供してきたことや、Historically Black Colleges and Universities(HBCU)と呼ばれるアフリカ系の人々のための高等教育機関と協力して、コンピュータサイエンスの講義内容の質向上や出席者数を増加に取り組んできたとアピールしています。

米国企業のダイバーシティに関しては、DiversityInc社が継続的な調査を行い、毎年「Top 50 Companies for Diversity」というランキングを発表しています。このランキングは、雇用、人材育成、CEO や上級役員のコミットメント、サプライヤーという4つの基準で評価しています。従業員の属性については、人種、ジェンダー、民族、年齢、障害者、LGBT(性的マイノリティ)など、幅広い観点での多様性が重視されています。

日本国内では、経済産業省が2012年度から、ダイバーシティ経営によって企業価値を高めた企業を表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」を実施。ベストプラクティスとして発信し、各社の自発的な取り組みを後押しすることで、ダイバーシティ推進のすそ野を広げようとしています。

経産省では「多様な人材」として、女性、外国人、障害者、高齢者をあげていますが、「100選」に選ばれている企業の取り組みの大半は、「女性」を対象にしたものです。ダイバーシティの推進といっても、いまのところ、男女間の雇用機会均等の粋をあまり出ていないといえそうです。ダイバーシティをいかに多様な角度から推進していけるかどうかに、各社の本気度が表れるでしょう。

米国でダイバーシティを推進している企業の方々に、その理由を聞いたことがあります。「きちんとダイバーシティを推進していないと、差別だと訴訟が起こる恐れがあるから」という方もいましたが、多くの方が「それが組織の力を強くするから」と答えていました。市場も多様であり、同じような背景・考え方の人々の間からはイノベーションは生まれない、というのです。日本の現状は、労働力として女性を雇用・登用する必要があるから、という理由が大きいように思われます。「組織の力を強くする」というダイバーシティの潜在力をもっと活かせるようになると良いですね。