軍艦側の被害がなぜ大きい? 商船と衝突して損傷した軍艦たち

損傷したイージス駆逐艦フィッツジェラルド(写真:ロイター/アフロ)

17日未明に発生した米海軍のイージス駆逐艦フィッツジェラルドと、フィリピン船籍のコンテナ船が衝突した事故は、艦内の捜索の結果、行方不明となっていた7名全員の死亡が確認される残念な結果となりました。

さて、この事故についてネット上では、軍艦と商船が衝突して、軍艦の方に大きな被害があった事に驚きの声が見られました。軍艦、それもハイテクイメージの強いイージス艦に被害が出たこともあってか、意外に思われている方も多いのかもしれません。

しかし、過去の例をひも解くと、軍艦と商船の衝突事故では、年代や洋の東西を問わず、今回の事故と同じように軍艦の側が大きな被害を受ける例が多々あるのです。

千島艦事件

フランスに発注された日本の砲艦"千島"が、日本に回航中の1892年(明治25年)11月30日、瀬戸内海の愛媛沖で英商船ラヴェンナ号と衝突。千島は沈没して、乗員90名のうち74名が亡くなります。事故そのものよりも、賠償を巡り日本政府とイギリス政府の国際問題に発展し、日英で争われた訴訟(最終的に和解)が知られており、事故・国際問題を含めて「千島艦事件」と呼ばれています。

軽巡洋艦キュラソー沈没

第二次大戦中の1942年10月2日。アメリカからイギリスへ兵員を輸送する船団を護衛していたイギリス海軍の軽巡洋艦キュラソーは、ドイツ潜潜水艦に狙われないようジグザグに航行していた客船クイーン・メリーと衝突。キュラソーは沈没し、乗員439名中、338名以上が亡くなる大惨事になりました。

軽巡洋艦キュラソー
軽巡洋艦キュラソー

このキュラソー沈没は、今回のイージス艦フィッツジェラルドの事故と共通する点が見られます。フィッツジェラルドと同じように、キュラソーは脇腹にクイーン・メリーの船首の直撃を受けたため、船体が真っ二つに裂け、すぐに沈没しました。対して、かの豪華客船クイーン・エリザベスの準姉妹船だったクイーン・メリーは、その大きな船体ゆえにその後も航行を続け、戦争も生きのび、現在はロサンゼルスでホテルとして使われています。

現在のクイーン・メリー(撮影:Altair78(Wikipedia))
現在のクイーン・メリー(撮影:Altair78(Wikipedia))

護衛艦くらま・外国貨物船衝突事故

2009年10月27日、関門海峡で海上自衛隊の護衛艦"くらま"と、韓国の貨物船カリーナ・スターが衝突。双方に火災が発生し、護衛艦では消火作業中に乗員6名が負傷する事故が起きています。

艦首が損傷した護衛艦くらま(海上保安庁資料より)
艦首が損傷した護衛艦くらま(海上保安庁資料より)

軍艦に被害が出ているのは、軍艦の問題?

ここまで見ると、軍艦と商船の衝突で、軍艦側に大きな被害が出る例も多いことが分かって頂けたと思います。では、今回はなぜ軍艦側の被害が大きかった事に意外な声が上がったのでしょうか。これは近年起きた事故、護衛艦あたごと漁船の衝突、輸送艦おおすみとプレジャーボートの衝突では、商船側に大きな被害が出たことが大きいと思われます。

この2事故は、いずれも海上自衛隊の艦船より、ずっと小さな船が衝突し、沈んだ点で共通しています。逆に、先に挙げた例、そして今回のフィッツジェラルドの事故は、いずれも軍艦(護衛艦)側より、大きな相手と衝突しています。つまり、海上での船舶の衝突事故の場合、船体が相対的に小さい方の被害が大きい傾向がある、ということです。

一方で、今回の人的被害に関して言えば、軍艦が持つ問題があるかもしれません。コンテナ船やタンカーといった輸送船は、大幅に省力化が進んでいます。一方、軍艦は多種多様な任務、装備のために、多くの乗員が搭乗しています。例えば今回の事件では、フィッツジェラルドの乗員300名に対し、コンテナ船のACXクリスタルは乗員20名と、軍艦の方がはるかに多い乗員がいました。これは商船であっても、多くの乗客が乗船する客船でも軍艦同様の傾向が見られるでしょう。

その乗員が寝泊まりしている区画に、コンテナ船の船首(一般的にコンテナ船の船首部に乗員区画はありません)が衝突したとなると、軍艦側の被害が大きいのも必然だったように思います。

事故原因の調査に関しては日米地位協定の関係上、アメリカ主導で行われることになるでしょう。痛ましい事故でしたが、今後の事故の減少に繋がる知見が得られることを期待したいと思います。