東京五輪は「完全な形で実現」できるか~五大陸の連帯問う新型コロナウイルス禍

(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、東京五輪・パラリンピックの開催が、おおむね1年延期されることが決まった。国際オリンピック委員会(IOC)はじめ日本政府、東京都や五輪に期待を寄せる人々からは、一様に「中止」ではなく、「延期」でよかったと安堵の声が聞かれた。

しかし、1年の延期は、「遅くとも来年夏までの開催」の実現を保証するものではない。新たな日程調整および競技会場、選手村、ボランティア、宿泊施設、移送手段、追加財源などの確保や選手のモチベーションの維持、代表選考のあり方など課題が山積しているからだ。

そして何よりも、安倍首相が主張する「完全な形で実現」するためには、新型コロナウイルスの感染拡大が国内外で速やかに収束に向かい、聖火リレーなど一連の事前イベントが行われるまでに、全世界のパンデミック完全終息宣言が出されなければならない。

3月26日、東京都の小池知事は緊急記者会見を開き、東京は「感染爆発の重大局面」にあると危機感を示し、都民に在宅勤務の勧奨や不要不急の外出の自粛を要請した。本来であれば前週の3連休前には発表すべきだったが、IOCや政府が五輪を予定通り7月実施との基本方針を変えない中で、開催都市として感染爆発の危機感を訴えることはできなかったのだろう。

欧州連合(EU)のように国を超えた移動が自由な地域では、水際での感染防止は困難であり、都市封鎖を行う国が続出している。海に囲まれた日本は厳密な水際の出入国管理と検疫強化で、ある程度の感染拡大を回避できるかもしれない。しかし、グローバル化した大航空時代の今日、国内がいったん収束状況になっても、再度感染リスクが高まる可能性は排除できない。

来年の夏ごろまでに五輪を「完全な形で実現」するための道は険しい。日本はもちろん欧米、これから感染拡大が懸念される東南アジアやアフリカ諸国における収束が進み、社会経済活動が正常に回復することが前提となる。日本は開催国として、国内感染の終息だけでなく、世界の感染拡大の収束に向けても最大限の注視が必要だ。

世界の多くの指導者は、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を戦争に例える。まさに今は多くの国の国境封鎖が続き、新型コロナウイルスとの戦争状態にあり、市民生活や経済活動が混迷しはじめている。今後、多数の企業が倒産し、大量の雇用が喪失したら、オリンピックの開催どころではなく、世界中の社会経済システムが崩壊しかねない。

五輪・パラリンピックは、世界が平和で安定した社会状況で初めて開催が可能だ。東京五輪はおおむね1年程度の延期が決まったことで、より高いハードルが科されたとみるべきだろう。今や五輪・パラリンピックの開催可否は地球規模の問題だ。今回の新型コロナウイルス禍は、その克服に向けて、五輪の象徴である五大陸の人々が連帯できるかどうかを問うているように思える。