「在職老齢年金制度」の見直しは必要か~望まれる高齢期の就労を促進するためには

(写真:アフロ)

5年に一度行われる年金制度の見直しが進んでいる。そのひとつが「在職老齢年金制度」だ。賃金と報酬比例部分の年金を合わせた収入が基準額を超えると年金支給額が減額される制度だ。現行の60~64歳で28万円、65歳以上で47万円の月額基準を緩和しようというのだ。

65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)の見直しでは、減額基準額を現役男子被保険者の平均月収と65歳以上の在職受給権者全体の平均年金額の合計51万円にする案が有力だ。その結果、支給停止対象者数は41万人から32万人に、支給停止対象額は4,100億円から3,400億円に減ると試算されている。

見直しの背景として高在老が高齢者の就業意欲を削いでいるのではないかという指摘がある。高齢者の就労抑制については立証されていない一方で、高在老の見直し案では約700億円の新たな年金財源が必要になる。比較的高所得の者を優遇することで高齢世代内の一層の経済格差が拡大し、将来世代の所得代替率の低下を招くことも懸念される。

もともと同制度は2000年の年金制度改正において、賃金と年金の合計金額が現役世代の賃金収入を超える60歳代後半の高齢者の年金支給停止を決めたものだ。経済的に豊かな高齢者が、現役世代の負担を軽減し、高齢世代内の大きな収入格差を縮小するために年金制度の支え手にまわることが求められたからだ。

現在、65歳以上の年金受給権者は2,701万人、そのうち在職老齢年金の受給者は248万人と全体の9.2%だ。在職停止者数は全受給権者の1.5%で、見直し後は9万人減って1.2%になる。減額基準額が現行の47万円であっても、現役世代や一般年金生活者からみると一部の高所得者の優遇策にしか見えず、さらに4万円の基準額の引き上げに対する理解は難しいのではないか。

制度見直しに伴う新たな財源対策として、公的年金の控除を大幅に縮小するなど社会保障と税の一体改革が考えられる。また、厚生年金制度の対象事業所規模の引き下げやパート従業者等への適用拡大も検討されている。いずれも年金制度の安定化を目指したものだが、望まれる高齢期の働き方という観点からも年金制度の在り方を検討する必要があるだろう。

本格的な人口減少時代を迎え、高齢期の就業人口の確保は重要な課題だが、高齢期の働き方は現役時代と大きく異なる。これまでの厚生年金制度の適用事業所で適用条件を満たす働き方が望ましいとは限らないのだ。

政府は『70歳まで働く機会の確保』を打ち出している。市場経済(Market Economy)における賃金労働に加えて、社会経済(Social Economy)における非賃金労働も含めた雇われない働き方など、少子高齢・人口減少時代にふさわしい多様で柔軟な働き方を促進するための年金制度や就業環境の整備が求められる。