「老い」という人生のエイジング~ボージョレ・ヌーヴォの季節に、「熟成」のピークを過ぎたワインを味わう

(写真:アフロ)

今年も「ボージョレ・ヌーヴォ」の季節がやってきた。11月21日(木)の解禁日を楽しみにしている人も多いだろう。フランス・ボージョレ地区で今年獲れたブドウでつくった新酒が航空機で到着すると、先を争って祝杯をあげる光景がニュースでも報じられる。

ワインの歴史は古い。「最後の晩餐」など聖書にもたびたび登場する。イエスが水をワインに変えた奇跡もよく知られている。ワインはイエスの血を表し、生命とも深くかかわっている。『新しいワインは新しい革袋に、古いワインは古い革袋に』も聖書の有名な言葉だ。

かつて日本ではフランス産やスペイン産など海外のワインが主流だったが、近年では日本産のワインも世界で知られる存在になった。「国産ワイン」は海外で獲れたブドウも含めて国内で醸造されたものだが、「日本ワイン」は国内で栽培されたブドウ100%のワインの称号だ。

ワインは外食レストランで料理に合わせて飲むだけでなく、最近では自宅の食卓でも気軽に楽しむ機会が多い。ワインの種類も豊富になり、値段も手ごろなものが増えた。これから年末にかけて、ボージョレ・ヌーヴォを片手にあちこちでホームパーティが開かれるだろう。

ワイン用のブドウは食用のものに比べて小粒だ。ブドウの生育環境は雨が少なく、水はけのよい土壌で、日照時間が長く、昼夜の気温差が大きい場所が適しているという。さまざまな品種のブドウがあり、適材適所の育て方により最適のワインがつくられてゆく。

ワインづくりで重要な工程のひとつが、ワインの味わいを左右する「熟成」(Ageing)であろう。ワインづくりは人間の成長に似ているような気がする。日当たり、水はけ、気温など生育環境がワインの出来に大きな影響を与え、熟成の仕方で味わいが大きく変わるからだ。

昔から多くの権力者が不老長寿を求めてきた。高齢化が進む今日、だれもがいつまでも若々しくありたいと願い、アンチエイジングを目指して「老い」にあらがう。多くの可能性を秘めた「若さ」は素晴らしいが、長寿時代には「老い」を自然に受け容れることが必要だ。

ワインの熟成にもピークがあるという。だが、ピークを過ぎたワインの味わいも捨てがたい。「老い」とは歳を重ねる人生の「熟成」というエイジングだ。一人ひとりの高齢期に熟成のピークを過ぎたワインのような独自のエイジングの香りが漂えば素敵だろう。

新しい革袋に入ったボージョレ・ヌーヴォの季節に、古い革袋に入った熟成のピークを過ぎたワインを味わおう。イソップ物語「狐と葡萄」のように『どうせ取れなかった葡萄は酸っぱいに違いない』と負け惜しみを言うのではなく、本当に「老い」を芳醇な人生のエイジングと思える高齢社会を築きたいものだ。